第5話 特典報酬と重大発表と告白成功
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『深淵の回廊』を踏破したことにより、特典報酬を贈呈します――。
ダンジョン内に、無機質なアナウンスが高らかに響き渡る。
〈おお! 特典報酬きた!〉
〈Sランクダンジョンの報酬ってどれくらいなんだ?〉
〈Aランクでも人生変わるレベルって聞くしな〉
〈これは期待しかない!〉
コメント欄も一気に盛り上がる。
……とはいえ、正直なところ、俺は複雑な気持ちだった。
今回、ボスを倒したのは完全にアイリーンさんだ。
俺は逃げ回りながら配信していただけ。
そんな俺まで同じ報酬を受け取っていいのだろうか。
そんな罪悪感を抱いていると、アナウンスが続く。
『踏破者:アイリーン・スカーレット』
獲得経験値 300000
※レベル上限に達しているため蓄積されます。
獲得金額 50,000,000円
獲得アイテム
【深淵の炎珠】
【深淵の闇衣】
【ラストエリクサー】×3
『踏破者:草薙ハヤト』
獲得経験値 300000
※レベル1 → レベル32
獲得金額 50,000,000円
獲得アイテム
【深淵の羽根ブーツ】
【神式配信セット】
【ラストエリクサー】×3
「…………え?」
思考が止まった。
いやいやいや、ちょっと待て。
待ってくれ。
まず経験値、一気にレベル32って何だよ。
確か研修では『レベル30で一人前の冒険者』って教わったぞ?
つまり俺……
今日で初心者卒業?
いや展開が早すぎるだろ!
そして――五千万円。
「……五千万?」
思わず二度見してしまう。
桁がおかしい。
ボスを倒したわけでもない俺が、五千万円?
Sランクダンジョン……夢ありすぎだろ。
恐る恐る端末を開き、獲得アイテムを鑑定する。
【深淵の羽根ブーツ】
Sランク神器。
スキル【神速】の持続時間を無制限にする。
「…………」
無制限?
つまり……ずっと『神速』を使えるってことか?
え、強すぎない?
続いてもう一つ。
【神式配信セット】
いかなる攻撃・魔法によっても破壊されない究極の配信装備。
「…………いや、神様?」
思わず空を見上げた。
ここまで来ると、神様が俺に向かって、
『お前、配信者になれ』
と全力で背中を押しているようにしか思えない。
〈うわああああ!〉
〈Sランク神器二個!?〉
〈そんな冒険者ほとんどいねぇぞ!〉
〈レベル32って一瞬で俺追い越されたんだが!?〉
〈俺もだわ……〉
〈五千万もヤバいけど神器がエグい〉
〈神式配信セットって完全に『神速』さん専用じゃね?〉
〈これなら『紅蓮の魔女』の配信も余裕じゃん!〉
その通りだった。
これならアイリーンさんの炎でも配信機材が壊れることはない。
後は俺が『神速』で避け切ればいい。
これ以上ないほど相性がいい装備だった。
〈ていうか『紅蓮の魔女』レベルカンストしてるのか〉
〈世界トップってやっぱり化け物だな〉
〈しかもフリー冒険者だろ?〉
〈規格外すぎる〉
コメント欄は相変わらず大盛り上がりだ。
俺は端末をしまい、改めてアイリーンさんへ向き直る。
「あの……アイリーンさん」
「はい?」
「今日は本当にありがとうございました。」
「いえいえ。私もとっても楽しかったです」
柔らかい笑顔。
その笑顔を見た瞬間、今しかないと思った。
この人となら……もっと色んな景色を配信してみたい。
そう口を開こうとした――その時だった。
『これよりSランクダンジョン【深淵の回廊】の踏破を確認しました。』
『新たなるグランドダンジョン――』
『【星崩の大魔宮】を解放します。』
一瞬、世界が静まり返った。
〈……は?〉
〈え?〉
〈グランドダンジョン!?〉
〈初耳なんだけど!?〉
〈Sランクの上があるの!?〉
〈待て待て待て!!〉
〈歴史が変わったぞ!!〉
〈これ世界初公開情報じゃね!?〉
コメント欄が爆発した。
この日『星崩の大魔宮』という存在は、俺たちの配信によって初めて世界へ知れ渡ることになる。
『それでは踏破者を地上へ転送します。』
『お疲れ様でした。』
俺たちの身体が淡い光に包まれる。
視界が白く染まり――
次の瞬間、俺たちは『深淵の回廊』入口前へ転送されていた。
ダンジョン入口には、信じられないほど大勢の人々が集まっていた。
どうやら配信を見て駆け付けたらしい。
俺たちの姿を見つけた瞬間――
「うおおおおおおおお!!」
大歓声が夜空へ響き渡った。
「『紅蓮の魔女』最高ー!!」
「本当に可愛かったー!!」
「神回だったぞ!!」
「『神速』さんもお疲れー!!」
「最高の配信だった!!」
「またやってくれー!!」
アイリーンさんは少し照れくさそうに笑いながら、大勢の観衆へ手を振る。
「あらあら……ありがとうございます」
その笑顔だけで歓声がさらに大きくなる。
やっぱりこの人はすごい。
実力だけじゃなく、人を惹きつける何かがある。
……だからこそ、俺は覚悟を決めた。
「あの……アイリーンさん!」
「はい?」
周囲の観客も何かを察したようだった。
「おい! 静かにしろ!」
「何か言うぞ!」
「みんな黙れー!!」
あっという間に辺りが静まり返る。
……いや、やりづらいっすわ。
完全に公開告白みたいになってるじゃねぇか!
俺の心臓は破裂しそうなくらい暴れている。
それでも、このチャンスだけは逃したくなかった。
大きく息を吸い込み、アイリーンさんの瞳を真っ直ぐ見つめる。
そして、腹の底から声を張り上げた。
「アイリーンさん!」
「俺と――」
「正式にコンビを組んでください!!」
深く頭を下げる。
震える右手を差し出した。
ほんの数秒だったはずなのに、永遠にも感じられる時間が流れる。
やがて――
そっと温かい手が、俺の手を握った。
「……はい」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
その柔らかな笑顔を見た瞬間、胸の奥にあった緊張が一気に溶けていく。
「ありがとうございます!!」
その瞬間だった。
「うおおおおおおおお!!!!」
会場が爆発した。
「おめでとーー!!」
「最高のコンビだ!!」
「末永くお幸せにー!!」
「アイリーンさんを泣かせたら許さねぇぞ!!」
「結婚じゃねぇんだから落ち着けー!!」
……何だか盛大に勘違いされている気もするが、そんなことはもうどうでもよかった。
この日、世界最強のSランク冒険者『紅蓮の魔女』アイリーン・スカーレットと、世界最速の配信者『神速の配信者』草薙ハヤト。
二人は正式にコンビを結成した。
後に世界中のダンジョンを踏破し、数々の伝説を生み出すことになる最強コンビ――
その歴史は、この日、この瞬間から始まった。
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