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『紅蓮の魔女』と『神速の配信者』  作者: 我王 華純
第一章 誕生『神速の配信者』
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第26話 『星崩の大魔宮』⑯ 氷結地獄

 その場に存在するのは、あまりにも対照的な二人だった。


 一方は、自らの身長を遥かに超える巨大な両手剣を構える、幼い少女の姿をした存在。


 そしてもう一方は、全身から青白い光を放ちながら、静かに拳を構える女性。


 『蒼氷の聖女』星羅・バーンシュタインと、『消魔・セプテントリオン・メグレズ』


 二人は互いに一歩も動かず、次なる一撃を叩き込むための瞬間を見極めていた。


 先に動いたのはセイラだった。


 現在彼女が発動している『氷結地獄(コキュートス)』


 これは、彼女の職業である『魔拳王』が持つ力を、自らの氷属性魔力と融合させた特殊強化技である。


 通常の『魔拳王』は、体内の魔力と闘気を融合させることで、肉体能力を極限まで高める。


 しかしセイラの場合、それだけでは終わらない。


 自身が得意とする氷属性の魔力を組み込むことで、身体能力の強化だけではなく、周囲一帯へ凍気を撒き散らし、戦場そのものを支配する。


 まさに『蒼氷の聖女』と呼ばれる彼女だからこそ扱える、唯一無二の戦闘技術だった。


 対して、メグレズは小さくため息を吐く。


 「あーあ……お姉さん相手なら、この姿のままでも簡単に勝てると思ったんだけどなぁ」


 そう呟いた瞬間だった。


 メグレズの小さな身体に変化が起こる。


 幼い少女の姿をしていた身体が、徐々に膨張していく。


 細い手足は太くなり、身体は見る見るうちに巨大化。


 やがてそこに立っていたのは、少女の面影を残しながらも、筋骨隆々とした鬼のような巨体だった。


 「久しぶりにこの姿になりましたよぉ……」


 巨大化したメグレズは、ゆっくりと両手剣を持ち上げる。


 「こうなったら……もう知りませんからねぇ!!!!」


 そして――


 「グランドインパクト!!!!」


 大剣を地面へ叩きつけた瞬間、大地が爆発した。


 先ほど放った一撃とは比較にならないほどの衝撃が周囲を駆け抜け、凍結していた床が耐え切れず砕け散っていく。


 セイラが作り出した氷の大地は一瞬にして破壊され、無数の瓦礫が舞い上がる。


 まるで大地そのものが意思を持ち、敵を飲み込もうとしているかのようだった。


 「なるほど……それがあなたの本当の姿というわけですのね」


 迫り来る衝撃波と瓦礫を前にしても、セイラは動じない。


 ただ静かに目を閉じると――


 「それでは、こちらも少しだけ本気を出しますわ……『第一階層(カイーナ)』」


 その瞬間、セイラの姿が消えた。


 いや、消えたように見えるほどの速度で移動したのだ。


 『氷結地獄(コキュートス)』の第一段階である『第一階層(カイーナ)』


 これは、魔力と闘気によって身体能力を爆発的に向上させる強化形態。


 その速度は音速に迫り、通常の視認能力では追うことすら困難な領域へ到達する。


 セイラは迫り来る『グランドインパクト』を真正面から突破し、青白い光を纏ったままメグレズへ突撃する。


 その姿は、まるで空を駆ける氷の彗星だった。


 「はあああああ!!!!」


 「え!? ちょ、速すぎません!?」


 メグレズは慌てて大剣を振り上げるが――


 「遅いですわ」


 セイラは軽やかに跳躍しながら、大剣の一撃を紙一重で回避すると、そのまま巨大な身体へ接近する。


 「行きますわよぉ!!!!」


 拳が閃いた。


 一撃ではなく、二撃、三撃……無数の拳撃が一瞬の間に叩き込まれる。


 青白い光を纏った拳が、メグレズの巨体を容赦なく打ち抜いていく。


 「ぐっ……!?」


 耐え切れず、メグレズの巨体が吹き飛んだ。


 何度も地面を跳ね、転がりながら遥か彼方まで吹き飛ばされると――


 「まだ終わりではありませんわ!!!!」


 セイラは追撃へ移る。


 この一瞬で決着をつけるつもりだった。


 「痛いじゃないですかぁ……!!!!」


 メグレズは苦痛に顔を歪ませながら立ち上がる。


 そして、自身の両腕へ魔力を集中させた。


 「……こうなったら、リミッター解除です」


 メグレズの両腕がさらに肥大化する。


 身体とのバランスなど完全に無視した、異常なまでの強化。


 「もう知りませんよぉぉぉ!!!!」


 巨大化した腕で大剣を振り回しながら、メグレズは突撃する。


 「決着を付けますわ」


 対してセイラは静かに構える。


 「――『第二階層(アンティノラ)』」


 『氷結地獄(コキュートス)』第二段階。


 それは、闘気と魔力を四肢へ集中させ、攻撃能力を極限まで高める攻撃特化形態。


 セイラの両腕と両足に、青白い光が集束する。


 「死ねぇぇぇ!!!!」


 「負けませんわぁぁぁ!!!!」


 二人の必殺技が激突した。


 メグレズの大剣。


 セイラの拳。


 互いの全力が交差する。


 だが――勝敗を分けたのは、ほんの僅かな差だった。


 セイラの拳は巨大化したメグレズの胸部を正面から貫き、その衝撃は振り下ろされた大剣の軌道すら逸らしていた。


 大剣はセイラを捉えることなく、空を切る。


 「……あいたた……」


 メグレズはゆっくりと膝をつく。


 「負けちゃいましたかぁ……」


 「わたくしに『第二階層(アンティノラ)』まで使わせたのですもの」


 セイラは静かに歩み寄る。


 「あなたの強さは、誇って良いものですわ」


 その言葉を聞いたメグレズは、満足そうに微笑んだ。


 『蒼氷の聖女』星羅・バーンシュタイン。


 『消魔・セプテントリオン・メグレズ』


 二人の戦いは、こうして幕を閉じた。


 

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