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『紅蓮の魔女』と『神速の配信者』  作者: 我王 華純
第一章 誕生『神速の配信者』
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第18話 『星崩の大魔宮』⑧ 『神速』さんと視聴者たち

 「グゥッ!?」


 メラクの牙の先端が俺の肩口にめり込み、激しい痛みが襲う。


 ……このままじゃ、死ぬ!


 この肩口に刺しこまれた牙が胴体方向に引き裂かれてしまえば、即時に死亡となるのは間違いない。


 「くっそぉぉぉお!!!」


 俺は『神速』を使いながら牙の進行方向とは逆に向かって勢いよく体を捻りながらジャンプする。

 

 ブチブチと嫌な音を響かせながら更に牙が深くめり込んでいき、夥しい量の鮮血が飛び散るのが見える。


 ……が、死んではいない。


 何とかその場を離れた俺は肩口から左腕がごっそりと抉り取られてしまい、傷口からは激しく出血していた。


 「いてぇなぁ!ちくしょう!」


 俺はすぐにアイテムボックスから小瓶を取り出し中身の緑色の液体を摂取する。


 すぐに、肩口の出血が止まり、左腕の再生が始まり、10秒程度ですっかりと元に戻ってしまった。


 〈今のってエリクサーじゃね?〉

 〈うん、あんなのまで用意してるんだね〉

 〈あれって、1本500万くらいするんだよね……〉

 〈『神速』さんってこのダンジョン攻略にいくらつぎ込んでるんだよ……〉


 ……うるせぇ!そんなもん数えてないわぁ!

 はっきりいって俺はこのグランドダンジョン攻略のために、今まで得た収入の全てをつぎ込んでいる。

 いや、むしろ赤字かもしれない。

 こんな化け物だらけのダンジョンに金勘定なんて考えながら挑んだら命がいくつあっても足りねぇんだよ!


 俺はエリクサーの効果で再生した左腕を振り回しながら感覚を確かめる。


 ……よし、問題無い!すげぇなエリクサー!


 もちろん初めて使ったのだが、その効果に感動していた瞬間だった。



 『……ほう、今の攻撃から生き延びるとはやるではないか』


 また背後からメラクの声が聞こえる。


 「またかよ!何でだぁ!」


 今度は振り向かない、そのまま前に向かって脇目も振らずに『神速』で駆け出す。


 ギリギリのタイミングだったが、今度は回避が出来た。

 一瞬先まで俺がいたところをメラクの牙が通過する。


 「なんちゅう速さだ!……いや、違うか?」


 いくらなんでも移動速度が速すぎる、気付いた時には背後を取られているのだ。


 ……が、何か引っ掛かる。

 大事なことを見逃しているような気がして違和感が止まらない。


 〈それにしてもあのメラクってやつ、とんでもない速さだよな〉

 〈『神速』さんの背後を取るなんて並大抵の芸当じゃねーぞ〉

 〈でも、不思議なんだよなぁ……〉

 〈不思議ってなにが?〉

 〈いや、あんなに速いのに肝心の攻撃は意外と外してるっつーか、『神速』さん逃げきれてるじゃん〉

 〈確かに……背後を取ってからの動きは完全に『神速』さんのが早いよな〉


 ……なるほど!

 俺が感じとっていた違和感もまさにそれだ。

 メラクは気付いたら背後を取ってくるが、もしも『神速』を上回るスピードで動けるならば、どれだけ抵抗しようが俺が逃げ切れるはずがないのだ。


 スピード自体は俺の方が速いのか?

 だとすれば何故背後を取られる?


 ……まさか!?


 コメント欄を見てヒントをもらった俺は、一つの仮説を思い付いた。

 そんなことが出来るのか?……いや、やるしかない!


 「皆さん!あいつが俺の背後を取った時に何か気になることがあったら何でも結構です!特に俺の背中の辺りで何か変なことがなかったか教えて下さい!」


 俺は配信を見ている視聴者たちに呼び掛けながら、確認しやすい位置へ配信用ドローンを移動させる。

 この行動が正しいかどうかはわからないが、絶体絶命のこの状況下ではそんな悠長なことも言ってられない。


 『グフフフ……何をごちゃごちゃとほざいておるのだ。そちらから来ないのであれば、またこちらから行かせてもらうぞ!』


 メラクがそう言い終わるかどうかの刹那の瞬間に、目の前から消える。


 ……来たぁ!


 次の瞬間、背後から気配がする。

 

 ……が、今回は警戒済み、即座に『神速』を発動しその場を離れる。


 少し距離を取り見返すとやはり俺がいた位置にメラクが移動している。


 やはり、仮説は当たっているか……


 「皆さん!どうでしたか!?」


 〈おう!本当に一瞬であの蜘蛛が移動してきたぞ!〉

 〈『神速』さんの背中に何かいなかった?〉

 〈いたいた!黒い小さいやつ!〉

 〈あれって蜘蛛だよね?〉

 〈私スクショしたからアップするね!〉


 そうしてコメント欄にアップされた画像を見て確信した。


 ……あいつの能力は、スピードが速いわけじゃない。


 思えば、最初からおかしかった。


 俺が全力であいつから逃げていた時も気付けば背後に迫られていた。

 物凄く距離を開けていたのにも関わらずだ。

 そんな疑問はとある視聴者がアップしてくれた、俺の背中に張り付く小型の蜘蛛の画像を見て氷解した。


 ということで、あいつの能力は……



 「おまえの能力は『小型の蜘蛛』と位置を入れ替えることだろう!?」


 

 俺は持っているダガーナイフをメラクに向けそう宣言する。



 『……グフフフ、よく気付いたな、いかにもこれこそ我が能力『蜘蛛転生』、これは我が眷属の命と引き換えにその位置へ瞬間的に移動できるというものよ』


 ……入れ替えじゃねーじゃん。


 要は自分の子供の命と引き換えにその場所へ瞬間移動できるってことか……


 想像よりもたちが悪かったぜ。


 ……だが、これでタネは理解した。

 これでこちらにもやりようが出てくる……かもしれない。


 「皆さん!ありがとうございます!これであいつの能力がわかりました!」


 〈はいよー〉

 〈後は『神速』さんに任せた!〉

 〈頑張れ『神速』さん!〉

 〈決戦の時はきた!男を見せる時だ!!!〉


 コメント欄にも激励の言葉が並ぶ。


 「よっしゃぁ!行くぞこのやろー!!!」


 決着の時は近い、今までで間違いなく最大の強敵『セプテントリオン・メラク』討伐に向けて、俺は力強い一歩を踏み出した。


 

次回決着!!!


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