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『紅蓮の魔女』と『神速の配信者』  作者: 我王 華純
第一章 誕生『神速の配信者』
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第15話 『星崩の大魔宮』⑤ 幻影の檻

 突如として、六つの気配がボスフロアに降り立った。


 先ほどまでドゥーベしかいなかったはずの空間に、異形の者たちが横一列に並ぶ。


 これで――七体。


 「……『七星』」


 アイリーンさんが小さく呟く。


 そうだった。

 

 ドゥーベは自らを『七星』の一人と名乗っていた。


 ならば、背後に現れた六体こそ残る『七星』なのだろう。


 「あなた方は……何者ですの?」


 静かに問い掛けたのはセイラさんだった。


 答えたのは、その中央に立つ大男。


 逆立つ真紅の髪。


 獣を思わせる鋭い眼光。


 立っているだけで空気が震えるような威圧感を放っている。


 「我らは『七星』。この『星崩の大魔宮』を守護する統率者だ」


 俺はすぐに鑑定を起動する。


 表示された文字は一行だけ。


 『セプテントリオン・アルカイド』


 名前しか表示されないが、それだけで十分だった。


 こいつが、この集団の頂点だ。


 「うふふ……アルカイド様。そこまで教えてしまってよろしいのですか?」


 妖艶な笑みを浮かべる美女。


 『セプテントリオン・ミザール』


 「構わぬ。どうせここで全員死ぬ」


 今度は腰の曲がった小柄な老人。


 『セプテントリオン・フェクダ』


 「まったく……ドゥーベも情けない。人間ごときに手間取るとは」


 その横では、五メートルはあろう巨大なドラゴンが鼻を鳴らす。


 『セプテントリオン・アリオト』


 「まあまあ。ドゥーベは僕たちの中じゃ一番弱いしね」


 無邪気に笑う少女。


 『セプテントリオン・メグレズ』


 「弱者は弱者らしく散るべきだ」


 最後は漆黒の忍装束に身を包んだ細身の男。


 『セプテントリオン・メラク』


 これで七体。


 ドゥーベを含め、この異形たち全員が『七星』――セプテントリオン。


 俺の背中を冷たい汗が流れた。


 「ドゥーベ」


 アルカイドが静かに名を呼ぶ。


 「……な、何だ」


 さっきまで威勢よく笑っていたドゥーベが、露骨に表情を強張らせる。


 「攻撃は受けたな?」


 「……ああ。あの女の炎への耐性は獲得した。脱皮した殻でも条件は満たせる」


 「ならば十分だ」


 アルカイドは一歩踏み出した。


 「役目は終わりだ。眠れ」


 「なっ!? 待て! 俺はまだ――」


 叫びながら槍を振るうと、紫色の毒気が荒れ狂い、ボスフロアを覆い尽くす。


 だが、アルカイドは止まらなかった。


 振り下ろされた槍を素手で掴む。


 そのままドゥーベの体を、まるで抱擁するように抱き寄せた。


 「な……や、やめ――」


 ギシッ、と骨が砕ける嫌な音が響く。


 「があああああああああっ!!」


 ドゥーベの身体が悲鳴を上げる。


 そして次の瞬間、その身体が溶けるようにアルカイドへ吸い込まれ始めた。


 「た、助け……」


 肉が、骨が、そして魔力までもが。


 抵抗する間もなく飲み込まれていく。


 「し……死にたく……」


 最後の言葉すら途中で途切れた。


 そこに残っていたのは、さらに濃密な魔力を纏ったアルカイドだけだった。


 「弱者は強者の糧となる。それが自然の摂理だ」


 まるで何事もなかったかのように言い放つその姿に、背筋が凍った。


 こいつらは、人間じゃない。


 「……最低ですわね」


 セイラさんの声には、怒りが滲んでいた。


 「今すぐ全員まとめて凍らせて差し上げますわ」


 杖を掲げると、冷気が一気に膨れ上がる。


 しかし――


 「待て」


 アルカイドは静かに首を振った。


 「貴様の相手は我ではない」


 「何ですって?」


 「ミザール」


 「はい、アルカイド様」


 ミザールと呼ばれた美女が一歩前へ出ると、妖しく微笑みながら両手を広げた。


 「――《幻影の檻(ファントムジェイル)》」


 空間が歪み、景色そのものがガラスのように波打つ。


 「なっ――!」


 身体が宙に浮き、視界が回転する。


 船酔いにも似た不快感が全身を襲った。


 そして、次の瞬間――


 目の前の景色が一変していた。


 「……え?」


 周囲には誰もいなかった。


 アイリーンさんも、セイラさんも、清十郎さんも、『七星』すら消えていた。


 「みんな……どこだ!」


 叫んでも返事はない。


 その時だった。


 「貴様らは連携が厄介そうだからな……」


 背後から静かな声が響く。


 「悪いが、分断させてもらった」


 振り返ると、そこに立っていたのは、漆黒の忍装束を纏う男。


 『セプテントリオン・メラク』


 七星の一人が、音もなく俺の前へ姿を現していた。

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― 新着の感想 ―
途轍もない力を秘めているアルカイドの存在は脅威ですね。 そして、ハヤトも一転して大ピンチに…。 続きが気になります!
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