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文武平等  作者: 風紙文
第四章
81/281

夏休み始まる

パズル部の合宿。その日程を決める為にまず、全員が夏休みの予定を大和先生に言った。

「……自分は夏休みも剣道部の活動がありますが、大会と、合宿の日に被らなければ何時でも構いません。日付は分かり次第お伝えします」

「ボクも似た感じですね、陸上部の合宿は8月入った最初の方にあって、それ以外は大丈夫です」

部活を兼任している2人は大体同じくらいの予定。

「アタシは合宿が終わってから里帰りしますので、あまり後半でなければ別に、今の所は全部開いてますね」

「……私も基本は暇」

パズル部のみの2人も似たような予定。

「……でも」

と、三夜子が言葉を足した。

「……夏祭りには行く」

「夏祭り? それって何時だ?」

「……分からない」

そりゃそうだ。毎年日付はバラバラだから俺も分からない、大体8月の第三土曜日か日曜日辺りだけど。

「まいいか、武川は?」

「俺は……」

基本は三夜子達と変わらないが、家の手伝いがあるからな。でも部活だと言えば分かってくれるだろう。

「大体は何時でもOKですね」

「という事は……早山と押川の合宿の日を聞いて被らないようにすれば良いか」

黒板に『剣道部と陸上部の合宿日を聞く』と書かれた。

「後、三夜子の言った夏祭りだが、まぁ大方8月末くらいだろうから平気か」

『夏祭りは調べない』と書かれる。

「陸上部と剣道部の顧問って誰だったっけ」と呟く大和先生。

「自分が明日にでも聞いておきましょう」と提案する早山。

「一応家に連絡しておこうかしら」と考える月乃。

「みゃーさん、夏祭り一緒に行こうね〜」と誘う押川。

「ん……行こう」と賛成する三夜子。

パズルは一切せずに、前期最後のパズル部は終了した。





終業式の日、この日は基本的に部活は軒並み休みとなる。パズル部も例外ではなく休みだと最後のホームルームで大和先生に聞いた。

挨拶が終わり、ついに生徒達は夏休みへと突入した。いつも部活に行く生徒も残り、普段以上に騒がしい教室の中で、俺の携帯がメールを受信した。

携帯を開いてメールを確認、



from 三夜子

sub たこ焼き○-



とだけ書かれていた。

「……」

とりあえず、たこ焼きを食べに行こう的な意味合いなのは分かった。それだけだから題名だけで本文無しなのも分かる。

ただ、文字の後についた謎の記号は何だ? ひょっとして、たこ焼きか?

丸に刺したつもりの線……そうじゃなかったら何だと言うんだ。まぁ、たこ焼きの絵文字なんて無いだろうから仕方ないのか。

「……創矢」

騒がしい教室内の中で三夜子の声が耳に届く、近くに来れば当たり前だけど。

「コレか?」

届いたばかりのメールを見せる。

「ん……今日は来てる」

屋台トラックは不定期な筈だが、何故か三夜子はそれを知っている。どういう情報網を持ってるんだ。

「よし、行くか」

「ん……」

俺達は揃って教室を出た。昇降口へ向かう途中、

「あ……」

三夜子が携帯を開いて呟いた。

「どうした?」

「……2人欠席」

2人欠席? そういえば、さっきのメールパズル部の4人に一斉送信されてたな。

「……これ」

三夜子が見せた携帯のディスプレイを見ると、押川から断りのメールがあった。そこから一つ移動すると、早山からも同じようにメールが来ていた。2人共活動は無いが、部で集まりがあるようだ。

「てことは、行くのは俺と三夜子と…」

「アタシって事ね」

後ろから月乃の声が聞こえ、三夜子の隣に並んだ。

「でも本当にたこ焼きの屋台が出てるの? アタシ見た事無いわよ」

「大丈夫……出てる」

「その自信はいったいどこから……ま、いいわ。ところでさ三夜子…」

そういえば、いつの間にか月乃は抵抗無く三夜子と呼ぶようになってるな。

その月乃は携帯を開き、

「この記号はどういう意味なの?」

たこ焼き(だと思う)の答えを訊くのだった。





電車で一つ隣の駅へ、そういえばこの辺りで月乃に似た冬野という他校の生徒を見た事があったな。ばったり出会わないだろうか。等と考えつつ駅前の広場に着くと、三夜子の言う通り、たこ焼きの屋台が出ていた。

「本当に出てたわ」

驚く月乃を含めた3人で屋台に近づく、と、三夜子が急に足を止めた。つられて俺達も立ち止まる。

「どうした?」

「……あれ」

三夜子が指差す前にはたこ焼きの屋台、そこにはすでに前で買っている人がいるその後ろ姿が。

「あ」

「え、なに? もしかして知り合いなの?」

「ン? オマエ達か」

こちらを向いたその人は、ホウさんだった。手には買ったばかりのたこ焼きの袋を両手に持っている。

「目当てはコレだナ?」

「ん……そう」

「そうかそうか。そちらのオマエは初めましてだな」

そう言ってホウさんは月乃を見る。

「えっと、初めまして」

「なるほど、オマエも剣持ちのようだな」

「え、なぜそれを?」

「薄いが気配を感じるだけだ。そちらはちゃんと錠に戻せてるようだな」

「はあ……どうも」

納得出来ないように、月乃は首を傾げていた。

「とにかくだ。良かったら一緒に食おうじゃないか」

あのホウさんが誘うとは、かなり珍しい。

「良いんですか?」

「構わないさ、どうやら今回私の出番はここだけらしいからな」

「はい?」

「いや、気にしなくていい、ちょとした情報だ」

「はぁ……」

俺も月乃のように首を傾げた。



その後、俺達は揃ってたこ焼きを食べたのだった。

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