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文武平等  作者: 風紙文
第三章
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記憶していた

「まとめて狩らせていただきますよ!」

ケーノが剣に炎を貯め、横に薙ぐと共に炎を放った。

「……当たらない」

三夜子は剣を前で交差し、一気に振るう。


ブォン!!


巻き起こった風に炎がかき消された。ケーノは同じ動作で再び炎を放つが、三夜子も同じ動作で風を起こして相殺する。

「くっ……やりますね」

ケーノの剣の能力は炎。それは布縫の、大和先生への対策としてで。三夜子の風や俺の空気砲はむしろ天敵のようだ。

炎が消えたところへ、俺は跳び込む。今この剣はレベル5の刀『布縫』の剣の力を得ている、それにより空気砲は使えなくなったが、空気を込めた時のようにとても軽い。

軽くなった剣を振り上げ、ケーノに向けて降り下ろす。しかし後ろへと後退され、刃に貯めた炎を放ってきた。

今、空気砲は使えないが……

「布縫の帯!」

剣の鍔から伸びている2本の帯が俺の前へと伸び、盾となって炎から防いだ。

「バカな! 何故燃えないのですか!」

ケーノが予想外の事に困惑する。燃えていないところを見るに、布ではない何かで出来ているようだ。

もう少しだ、後は大和先生が攻撃を当てやすいようにするだけだ。

「……隙有り」

俺の後ろから飛び出した三夜子がケーノに向けて風を放つ、攻撃用の鋭い風ではなく、相手を吹き飛ばすような強い風だ。

「うっ」

避ける間もなくケーノは飛ばされないようにその場で足を踏ん張る。

「……創矢、左右の道」

左右の道? ……なるほど、そういうことか。

「布縫の帯!」

盾にしていた帯を前へと伸ばしてケーノの左右に張った。容易に飛び越えられる高ではあるが、今のケーノにそれは出来ない。

これで、左右の道を塞いだ。

「逃げ場を、無くしたつもりですか? それでは私は倒せませんよ」

それは分かっている、剣で攻撃しないと勝てない事は。

だが前からは三夜子の風、左右は俺の布縫の帯で塞ぎ、唯一の後ろは……

「サンキューだ三夜子、武川」

「なっ!?」

ケーノを風避けにして回り込んでいた、大和先生が立っていた。

「これで終わりだ! 剣狩りの使者!」

大和先生は腰に指していた剣、布縫を引き抜くと同時に、唱えた。

刃に布の帯を集め、触れた瞬間に相手を物理的に帯が叩く技。少し前、原良相手に使った『百万(ヨロズ)ノ布刀(フトウ)』

アレは剣の舞を俺達に見せるために力を押さえたもので、その本気、約八倍の力を出すのが。

「八百万(ヤオヨロズ)ノ布刀(フトウ)!」

刃がケーノに触れた瞬間、剣に巻かれた帯が、


ズダダダダダダダ!!


ケーノに叩きつけられた。

「がぁっ!?」

声にならない声と共に、ケーノがこちらへと吹き飛んでくる。進行方向にいた俺が避けると、そのまま仰向けに地面を滑って動かなくなった。

「はぁ……はぁ……」

大和先生の息切れが、静かになった河川敷に響く。大和先生が剣を下げ、続いて三夜子、俺と下げる。

「勝った……な」

「そう……ですね」

「……私達の、勝ち」

「あぁ、俺達の勝ちだ……はぁ〜」

緊張の糸が切れたのか、大和先生がその場に座り込んでしまった。俺達は慌てて駆け寄る。

「悪いな2人共、手間かけさせて」

「……別に大丈夫」

「そうですよ、最終的には大和先生が終わらせたんですから」

「そっか……でも2人の助けがあったからだ。だから言わせてくれ、ありがとうな。三夜子、武川」

「ん……」

「はい」

俺達は揃って頷いた。





少し休んでみたが、大和先生は歩けず。俺が肩を貸して立ち上がった。

「あの男はどうするんですか?」

「本当なら連行したいんだが、俺がこんなだからな。とりあえず家に帰って本部に連絡を…」

「その必要はない、もう本部に連絡しておいた。すぐに回収に来るだろう」

声のした方向を見ると、ホウさんが携帯を終いながらこちらへと歩いてきていた。

「ホウさん……本当に見える範囲にいたんですね」

「勝てて良かたな、一応おめでとうと言ておこう」

「おぉ、ホウさんからお褒めの言葉とは…」

「勘違いするなバカ野郎、いくら相性が悪いとは言えレベル5が狩られかけたんだゾ? もと鍛練しろ」

「ありゃ、手厳しい……」

「……あなたは」

大和先生はやれやれと肩を落とす隣で、三夜子がホウさんを見てぼそりと呟いた。

「知り合いなのか?」

俺が知る限り、三夜子とホウさんが一緒に居るのは見たことない。その前に会ったことがあるのなら別だが。

「……たこ焼きの人」

「「……は?」」

隣の大和先生と声が重なった。

「あぁ、大和の妹だたか、どこか見覚えがあるとは思ていたんだ」

「あの……ホウさん? 三夜子とはどこで?」

「隣町にたこ焼きの屋台車がたまに出ていてな、そこで何回か出会たんだ。いつでも傘を持てていて妙に目がいた」

「へ、へぇ……」

そういえばテスト期間中に一度『……たこ焼き食べに行こう』と誘われて押川と3人で行ったな。そんな所で知らぬ内に会ってたのか2人共……

「では改めてだな、私のことはホウさんと呼べ」

「……七ヶ橋三夜子。三夜子でいい」

そして今ここでちゃんと自己紹介すろのか。

「とりあえず、安心して家に帰れ、そして寝ろ」

「そうさせてもらいます、では」

大和先生と共に一礼して。その場を去ろうとしたその時、

「逃が……しませんよ」

声に全員が振り返った。回復したケーノが立ち上がっていて、怒りの声を上げた。

「よくも……私の……美しい顔をめちゃくちゃにしてくれましたね!」

顔が一番かよ。そういえばあいつはナルシストだとか言っていたか。ケーノの顔は河川敷の、小石の溢れた地面を滑った為に傷だらけだった。

「まとめて焼き付くしてやります!」

ケーノは剣を頭上に掲げその切っ先に炎の塊を形成し、どんどんと巨大化させていく。

「フン、黙て倒れてればいいものを」

ホウさんは臆するどころか表情一つ変えずにパズル錠を解き、剣を取り出した。

「アイツにはすでに跡がある。お前達はそこで見てろ」

前へ、ケーノへとホウさんは走った。

「そうだ、ホウさんは一度ケーノと戦ってるんだったな」

大和先生も大丈夫だと言った感じに落ち着いている。ホウさんが強いのは一度見ているので分かるが、あの炎をどうにか出来るのか。

そこで、思い出した。ホウさんがケーノと戦っていた時に使っていた、あの言葉。

「大和先生、ホウさんの剣の能力って……」

「えっとな……ホウさんの剣は記録を司っていて、交えた剣を記録してそれを同時に放つ事が出来るらしい」

つまりホウさんがケーノとの剣の舞で交えた数の刃を……

「もう少し寝ていろ」

ホウさんの剣が、ケーノの無防備な身体に触れた。

瞬間、

「一線。三六重の太刀」


ズザザザザザザザザ!!


ケーノの身体に何十回も剣を撃ち込まれたような音が響いた。

「かはっ……」

たった一太刀、正確にはその一度で何十太刀も喰らったケーノの手から剣が落ち、炎が消えてケーノはその場に倒れ伏した。

「またく、手間を掛けさせやがて」

一度戦っていたから使える、そういう能力を使ったとはいえ、たった一撃で……

「2人共、覚えておけよ」

大和先生が呟いた。

「ホウさんと戦う時は、それなりの覚悟が必要だぞ」


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