↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
文武平等  作者: 風紙文
第三章
PR
62/281

パズル部の部長

「よーっす、お、今日は全員揃ってるのか」

大和先生が部室の中へ入ってきて言った通り、今日のパズル部は部員全員が揃っていた。

俺、三夜子、押川、月乃と、

「……今日は部活がありませんので」

剣道部との掛け持ちをする男子、早山仁史。早山も押川達と同じA組、せっかく全員揃ったということで、テスト対策の勉強会を開いていた。

「しかもテスト勉強か、関心関心」

くっ付けた机の上に置かれているノートや教科書を見て大和先生は教卓へと向かい、

「で、水を差すようで悪いが、全員集まってるなら決めたいことがあるんだ」

俺達の視線を集めた。

「決めたいことですか?」

「コレなんだ」

一枚の紙が差し出され、教卓に一番近い席にいた俺がそれを取り、机の真ん中へ。

そこに書かれていたのは、

「文化祭の内容報告書?」

文化祭で何をするかを書いて、生徒会に提出しろ、ということだ。

「文化祭で文化部は必ず何かしないといけなくてな、本当はもう少し早く出したかったんだが、上手く全員が揃わ無かったからな」

「文化祭か〜、楽しみだねみゃーさん」

「ん……楽しみ」

去年の帰宅部とは違って、今年は何かをする。本当に楽しみなんだろう。

「パズル部は何をするんですか?」

「何をするのか決めるのは俺じゃなくて、部員全員で決めるもんだろ?」

そこでな、と大和先生は紙を指差して、

「まずは部員全員の名前をそこに記入してくれ」

なるほど、部員全員で決めました。と報告する為か。

「誰から書く?」

「名前順でいいんじゃないの?」

「じゃあボクから書くね」

紙を自分の元に持っていき、押川が紙にシャーペンを当てる。

「あれ?」

一文字も書く前に、止まった。

「ねー。大和先生?」

「どうした?」

押川に応えた大和先生は、何故かニヤリと笑っていた。

「パズル部の部長と副部長って、誰ですか?」

「……」

そういえば、部長とか決めてなかったな。

「そういうのは、部員全員で話し合って決めるものだろ?」

ニヤニヤ笑いながら応えたのは、そういう意味だったのか。

「……大和先生、部長を決めるのは部員ではなく、先生が部員達の活動を見て決めるものですが?」

早山が正論を出す。しかし、

「そりゃ無理だろ。だってパズル部は今年出来たばかりで内容もそんなに対したことやってないし」

大和先生が言うことの方が、この部活においては正論だった。

「全員同じ学年だし、話し合いで決める方が皆納得するだろ?」

「……そう、ですね」

早山が折れて、勉強会から一転、パズル部の部長決めへと変わった。

机の上の勉強道具が片付けられ、その間に大和先生が黒板に部員全員の名前を書く。机も教卓へと向けられ、パズル部の部長決めが開始された。

「自薦他薦構わないぞ」

「大和先生」

一番に手を挙げたのは早山。

「立候補か?」

「いえ、自分はその候補から抜いてもらわなくてはいけません」

「どういう意味だ?」

早山は手を降ろし、語り出す。

「自分は剣道部との掛け持ちです。なので部室に毎日来れるということはありません。そのような者に部長を任せてはいけないと思います」

もっともな意見だ。部長ともあろう人が他の部活へと行っていては威厳が無い。

「ふむ、そりゃそうだな、じゃあ早山は抜きだ」

黒板の中から、早山の名前が消された。

「あ、じゃあボクもダメですね」

次に手を挙げたのは押川。陸上部と掛け持ちしている為、早山と同じ理由で部長にはなれない。

「押川も駄目、と……やっぱり部長にはほぼ毎日来れる人じゃないとな」

押川の名前を消した後、大和先生は残された名前の3人、月乃、三夜子、俺の順番で見てから、再び俺を見た。

何故だろう、その視線が動かない。まるで、目で何かを伝えようとしているような感じだ。

ふと視線を感じて左を向くと、早山と押川がこちらを見ている。

なんだ? まさか俺に部長をやれとでも?

「……」

早山が顎で前を示す。そちらには大和先生がいて、目が右側を見ていた。

右側には、三夜子と月乃。

……もしかして、そういうことなのか?

再び左を向くと、早山は軽く頷き。押川はにっこりと笑った。

あぁ、やっぱりそういうことか。

「大和先生」

俺はすっと手を挙げた。

「自薦か?」

「いえ、俺も家の手伝いがあってたまにですが部活を休むことがあるので、部長には向いてないかと」

「そっか、やっぱり毎日部活に出れる奴じゃないといけないよなー」

若干棒読み気味に呟きながら、俺の名前を消した。

こうして残ったのは、月乃と三夜子の2人のみ。

というか、もう一人も空気を読んで……

「どうやら部長になる権利はアタシ達にしか無いみたいね」

「ん……」

くれはしなかったようだ。

大和先生は、三夜子を部長にさせたいんだ。そうなれば文化祭の話し合いなどで人と関わる確率が高まるから。

三夜子は人見知りでは無い。ただ声をかける、かけられることが無いだけで、会話は普通に成り立つ。

だからその機会を増やす為にも、部長になってもらおうと思い、俺と押川と早山は理由をつけて辞退したのに。

「一度なってみたかったのよね、部長って」

月乃は空気を読まずに、あるいは意図が読めずに、自分の望みを優先した。

「……私も」

ここで三夜子が「……私は別にいい」とか言ってしまわなくて良かった。

「2人共やりたくないって言わなくて助かるぜ、だがどうやって決める?」

「それは……」

「……」

三夜子と月乃が互いを見る。恐らくだが、互いの視線の間に火花がぶつかっている気がする。

「ま、そう簡単に決められないのは分かってたさ。そこで、こんな物を用意しておいた」

大和先生は教卓の上にある物を置いた。

それは妙な形をしていた。薄い板に、色とりどりの何本もの紐が結びつけてある。

「ちょっとしたパズルだ。この紐を全部ほどいて中の板を先に取り出した方がパズル部の部長になる。ってのはどうだ?」

「……構わない」

「確かに、パズル部の部長決めらしいわね」

「決まりだな、それじゃ、スタートだ」

パズルが2つ、2人に投げ渡され、同時にパズルの解きが開始された。

「ん? どうなってんのよコレ」

「……」

2人はパズルに没頭し。

「三人もやってみるか?」

大和先生はもう一つ取りだし、俺達のところへ投げられた。それを受け取ると真ん中になる所に置いて、3人でパズルを観察する。

一見すると様々な色の紐が巻かれているだけだが、それぞれ結び方が違っている。おそらく同じ色のものが一本の紐で、それらが絡みあって模様のようになっている。この結び方によって、解ける紐と解けない紐があるように見える。順番に一本一本解いて良いのだろうが、そうとう時間が掛かりそうだな。

と思った矢先、

「……出来た」

「えぇ!?」

三夜子の声と、月乃の驚きが聞こえた。

振り向いてみると、右手に一本ずつになった紐の塊、左手に板を持った三夜子が居た。

「そ、そんな早くに……」

月乃の手には、まだ解けた紐が一本だけ。

「おぉ、やるな三夜子」

大和先生は再び、ニヤリ顔で2人を見ていた。

あぁそうか、三夜子に渡した方は簡単にほどけるように造っておいたんだ。そして難しいのを月乃に渡せば、三夜子が必ず先に解けて、必ず三夜子が部長になれるように仕組むことが出来る。そこまで考えていたのか、大和先生。

「それじゃ、部長は三夜子に決定でいいな?」

「うぐ……仕方ないですね」

これで、月乃も諦めがついたみたいだ。

「後は副部長だが、それは部長が決めるでいいか。部長が副部長にしたい相手を選んで俺にメールする。それを副部長に伝えると」

え、それは……

「……」

三夜子がこちらを見ている気がする。そちらを向くと、目を反らされた。

「じゃ、部長が決めた相手にメール送るからな」

四人ではいと返事をする……すでに、結果は見えていた気がするが。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。