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文武平等  作者: 風紙文
第三章
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テスト前には

「こんにちは〜」

部室の扉が開き、明るい挨拶と共に一人の生徒が入ってきた。

押川李々子、三夜子の友達にして、良き理解者だ。

「おぉー!?」

入ってくるなり、押川は三夜子の変化に気づいたらしく驚いたような声を上げた。

「みゃーさんどうしたの!? その髪!」

「……邪魔だから縛った」

「ほぇ〜、朝は結んでなかったからびっくりしたよ。なんだかボクと似てるね」

押川も女子としては短い髪を左右で結んでいる。三夜子の倍みたいな感じか。

「そういえば、そろそろテストが近いよね」

三夜子の隣の席に座って少し髪をいじっていると、ふと話題を出した。

「陸上部も来週から休みになるんだけど、パズル部はどうするのかな?」

「どうするもなにも、部活は軒並み休みだろ」

「ところがそうでも無いみたいなんだよ、ひょうちゃんによると、一部の部活はテスト中でも活動してるらしいよ」

ひょうちゃんて誰だ? とか思いながらも疑問は後の言葉が上回った。

「そりゃなんでだ?」

「ボクに聞かれても分からないよ」

だよな、押川だってその情報をひょうちゃんという謎の人物から聞いたんだから。それにしてもそんな珍しい情報……ん?

押川が聞いた情報、ということは。なるほど、最初の疑問も解けた。

「表方に聞いたのか」

「うん、ひょうちゃんに聞いたんだよ」

表方睦黄、だからひょうちゃんなのか。

アイツは学年の情報通で、なんでも学校非公認の委員会、通称、情報委員会の一員らしい。だが非公認とだけあって本当に実在するのかも怪しい。しかし、情報委員というのは本当に実在し、学校に関するあらゆる情報を秘密利に探っているという未来の情報屋育成機関だとかどうとか。

まぁこの情報がその情報委員会からの情報な時点で、実在はしていると言わざるをえないだろう。

「その辺は先生に聞くしかないな、俺が明日聞いておくよ」

担任だし、ホームルームで絶対会うだろう。





ホームルームの時間を告げるチャイムが鳴った。

しかしクラス内はがやがやと、各々の場所で生徒どうしの会話が続いている。

このクラスは毎日大和先生が来るまではこうだ。そして入ってきた大和先生が『おらー、席つけー』とあまり迫力の無い声で言ってやっと、全員席につくのが日常になっている。

まるでそれを待っているかのように生徒達が話していると、扉が開かれて先大和生が教室内へ、

「ふわ〜〜ぁ」

大あくびと共に入ってきた。

普段と少し違うのにクラス内が静かにざわめく、大和先生があくびをしながら入ってくるなんて初めてだったからだ。そもそも、教師があくびと共に教室に入ってくること自体が驚きだ。

「おらー、早く席つけー」

そしていつもの言葉でクラス中が我に返り、自分の席へと収まった。

「ふわ〜ぁ」

教卓についた途端に再びのあくび、誰がどう見たって眠たそうと思う。

「先生ー、眠そうですね」

クラスメイトの一人が大和先生に訊ねる。

「まぁなー、ちと昨日は寝過ごしたんだよ」

再びクラス内がざわついた。


珍しいよな、大和先生があくびなんて


昨日何があったんだろう? 何かあったっけ?


内容は大和先生についてばかりだ。

「おら静かにしろー、出席取っから」

大和先生の言葉でざわめきは静まる。それからは普段のホームルームと変わることなく出席が取られ、簡単な話がされた。

「おし、ホームルーム終わり、一限の準備しとけよ」

その言葉でホームルームは終了。クラス内は一限の準備をしながらも、さっきの塊などでおしゃべりが再開された。

その中俺は一人出ていこうとする大和先生を追いかけ、廊下に出たところで追い付き、テスト期間中の部活について聞いた。

「そういや来週からだな」

「休みですか?」

「別にそれでも良いけど、部員で集まって勉強するってなら部室を開けてもいいぞ」

なるほど、部活がある訳じゃなくて、部室に集まって勉強会を開いてたのか。

「その辺りは5人で決めてくれ、言ったら鍵は渡すから。んじゃ、授業頑張れよ」

ひらひらと手を振りながら大和先生は去っていった。

勉強会か、クラスが違えば教科担任が変わるが、運良くA組とC組は同じ先生。つまり内容もほとんど一緒の筈だ。案外役に立つかもしれないな。

「……どうする?」

「そうだな、やっても損はないだろう…」

いつの間にか、隣に三夜子が立っていた。

「いつの間にいた」

「……出たのを見つけた」

気配も無く隣に立たれると、やっぱり少し怖いな。

「……どうする?」

首を傾げて再び聞いてくる。

「三夜子はどうしたい?」

「……損は無い筈」

聞き返してみると、今さっき俺が言ったばかりの言葉で返され、

「……する?」

首を逆に傾けて訪ね返された。

「それは向こうの3人にも聞いてみないとな」

「ん……じゃあ連絡してみる」

言うやいなや、携帯電話を取り出して操作を始めた。

「だいぶ慣れたな」

買ってからまだ一月経ってない筈だが、それを使う三夜子の手はかなりの速さでボタンを押していた。すでに使いこなせているみたいだな。

「……送信」

最後の一押し、送信ボタンを押して携帯を閉まった。

「誰に送ったんだ?」

メールを一通書いていたみたいだが。

「……全員」

「全員?」

「ん……全員に送った」

その時、携帯が震えた。取り出して見るとメールを着信したらしい。

差出人は……言うまでもないだろう。

「俺には送らなくてもいいだろ」

「……一応全員に」

「いやここに居るし、今まさに聞いてたばかりだろ」

「……使い方間違えた」

前言撤回、まだ使いこなせていないようだ。そりゃあ俺だって完璧に使いこなせている訳じゃないが。

ちなみに、メールの内容は、



勉強開を開きたいとおもう場所は部室

時間は放課後

賛同するなら返事を


三夜子



「……」

何から言えばいいだろうか。

まず、勉強、会だろう。これは漢字の打ち間違えだな。

句読点とかを使わずに改行したのは、まぁ読みやすいから良いとしよう。

メールの最後に自分の名前を書くのは悪く無いが、メールが来た人物は名前登録するから開く前に誰だかは分かる筈だよな。

まぁそれぐらい……いや、後一つあった。

一斉送信の場合、他にこのメールを受け取った人のアドレスが縦に並んで書かれ、その人のアドレスが携帯に登録されていれば、その名前で表示される。

そしてこのメール、三夜子が送ったのは。

「これ、知ってるアドレス全員に送っただろ」

「……かもしれない」

一番上は押川、次が月乃、早山と続き、まさかの大和先生と、他校の生徒、ある出来事で知り合った冬野の名前まであった。

「後の2人は勉強会の意味無いだろ……」

「ん……間違えた」

知ってるアドレスが少ないからこれで済んだのかもしれないな。

などと考えているとチャイムが鳴った。一限の開始だ。

「戻るか」

「ん……あれ?」

教室に戻ろうとした寸前、三夜子が携帯を見て声を出した。

「どうした?」

「……これ」

ディスプレイをこちらに向けられ、そこには、


あ〜、そういえばそろそろテストの時期よね

だから勉強会をしようと……て、いやいや部室ってどこよ!?

というかそっちまで行けないから!



「……」

「……」

冬野の奴、わざわざ返信してくれるなんて。

なんというか……

律儀だというか……

暇だったというか……

ノリが良いというか……

ノリツッコミというか……

「……一人欠席」

そうじゃないだろ三夜子。

「キミたち、早く教室に入りなさい」

「あぁ……はい」

一限の先生に言われ、教室へと入った。

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