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文武平等  作者: 風紙文
第二章
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不思議な出来事

集合場所にしていた正門で三夜子を見つけた時、その隣に立つ別の人物を見つけた。

部活の途中なのだろう、体操服姿の女子生徒だ。それだけなら別に普通だが、つい止まってそれを見てしまった。

その体操服の女子が、三夜子に何やら話しかけているようだったから。

何かあったのか? と疑いたくなる光景だ。よく考えたら生徒どうしのおしゃべりのどこにおかしなところがあるのかと思うが、それが三夜子だとなると変わった光景になる。

ただ、三夜子だって別に誰とも話さないというわけでもないのだから、この光景も普通の光景なんだよな。

その光景をつい見いっていると、三夜子と、話していた女子生徒が俺に気づいた。すると女子生徒は手を振って三夜子から離れ、俺がいる方向へ走ってきた。

「やっほい、武川」

俺を知ってるのか? 少し考えて、思い出した。

「表方、だっけ?」

「正解」

表方(おもてがた)睦黄(むつき)。同学年だ。

確か陸上部で……陸上部ということは押川と同じか。

「しっかし武川、七ヶ橋と友達だったなんて知らなかったぜ~」

「こっちもだよ、いつの間にみや……七ヶ橋と?」

さすがに名前呼びはマズイな、表方は学年の情報通にして、人脈が広い、加えておしゃべりだ。俺が三夜子を名前で呼んでいたなんて聞かれた日には、学年中に広まらない訳がない。

「つい最近にね、リリから電話が来たときちょいと」

「そうか、これからも七ヶ橋と仲良くしてやってくれな」

「へっへっへ、なんだか武川七ヶ橋の親みたいだね」

実際に唯一の家族から頼まれてることだからな、とは言えない。

「友達は多い方が良い、そうだろ?」

「同感だね、お互い、リリと共に仲良くいこう」

「あぁ」

そいじゃね、と言って表方は走って行ってしまった。今は陸上部の練習中で、外周の最中だったらしい。

だが少し行くと、急にUターンして戻ってきた。

「どうした?」

「いやね、2人も結構大変な事に巻き込まれてるなーと思ってね。私もそうだから、つか、ちょっと深いからさ、そういうのが分かるんだよ、そいじゃね~」

表方はそのまま今度こそ走って行ってしまった。

「……」

表方も、変わった出来事の住人なのか……

不思議な出来事。それは、案外自分の近くで起きている事。

それに自分は関わっている、更には違う出来事に同学年の女子が関わっている。

世界の不思議な出来事って、案外近くに転がってるのかもしれないな。

「……どうしたの?」

等と考えていたら、隣に来た三夜子に訊ねられた。

「いや、世界って案外狭いもんなのかなって」

「……よく分からない」

「だよな、すまん忘れてくれ」

会話はそれきりに、俺達は河川敷を目指して歩き出す。

11時52分、目的地に到着した。まだ月乃は来ていないようだ。

「後少しだな」

「……来た」

三夜子が見る視線の方向、河にかかる橋の方に人の姿が……2つ。

「来たわね」

片方はもちろん月乃、俺達と間を開けて正面に立った。

そしてもう一人は、

「……一応、立会人のつもりで来たんだが。武川も連れてきてたのか」

早山だった。

「やっぱり、七ヶ橋も来たのね」

「ん……来た」

「悪いけど、戦うのはアタシが創矢に勝ってからにしてよね」

「……創矢は負けない」

三夜子と月乃が睨み合う。

しかし何故だ。てっきり月乃は『なんで七ヶ橋がここにいんのよ!』とか言い出すと思って、『そりゃ目の前で話してれば聞こえるだろ』と返してやるつもりだったのに。

それともう一つ、何故月乃と早山は同じ方向、しかも一緒に来たのか。

あの会話の中にいたから来ることそのものはおかしくないが、この時間は知らなかった筈だ。月乃が教えたと考えるのが普通かもしれないが、さっきみたいな電話が早山にもあったとも考えられる。

「時間だ」

腕時計を見ながら早山が言う、12時になった。

「じゃ、始めるわよ」

月乃はパズルを取り出し、こちらを睨んだまま手だけでパズルを解く。

「あぁ……」

俺も小さくしていた剣を取り出し、パズルを動かす。

カチン

月乃がパズルを解くのと、俺が剣の大きさを戻したのは、ほぼ同時だった。



ギギィン!



そのまま前へ出て刃が交わった。

そのまま、俺と月乃の『剣の舞』が再び始まった。


この物語は、高校の2年C組と2年A組を中心として動いており、他に2年のB組と2年D組が中心となる物語を別に書いています。

表方はそちらの登場人物でして、こういった作品の枠を超えた邂逅がもっと行えたらなと、思います。

今さらですが、以前登場した冬野も、自分の別作品の登場人物だったりします。話していた人も、電話していた人も。

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