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文武平等  作者: 風紙文
第二章
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連絡

語り終えた町田は、ゆっくりと口を閉ざした。

月乃が作ろうとしていた部活、それは新しいバスケ部だった。

女子バスケ部が有名なこの学校で何故そのようなことをするのか意味が分からなかったが、そしてあの眼帯の理由……そういうことだったのか。

でも、待てよ。

「先生、確か部活の締め切りは」

あぁ、と大和先生は頷く。

「もうとっくに終わってる……と、言いたいところだが。例外的にな、同好会を作るだけなら期限は無いんだ、そのまま次の部活作成日まで持たせて顧問をゲット出来れば部活として成立出来る。もちろん同好会では部費も部室も手に入らないが、活動は出来る、また逆に顧問となる先生も文化祭への参加も不要になるという利点もあるな」

そこまでして、月乃は部活を……町田にバスケットをやらせたかったのか。

そこで、町田が再びゆっくりと語り出した。

「雅さんが……私のために頑張って下さってるのに……なのに私は、何も出来なくて……何も……出来ることが無くて……うっ……ぐす…」

涙混じりのまま、言葉を続ける。

「だからあの時……七ヶ橋さんを勧誘しようとしたんですが……女子はダメだって……分かってたのに……私、ダメですね……運動もダメで、それに……雅さんに迷惑ばかりかけて……武川君!」

町田が俺を正面に見た、その目は泣いていた名残で赤かった。だがそれは、何かを決意をした目でもあった。

「お願いです! 雅さんに勝ってください! 私もう迷惑をかけたくないんです……だから私はもう諦めます……バスケをやりたいなんて……考えませんから……だから、雅さんとの勝負、絶対に勝ってください!」

「……あぁ、そのつもりだ」





……とは言ったものの。

あの時戦った感じでは俺と月乃の戦闘力は同じぐらいだった。となると後は戦いにかける思い次第か……月乃のそれは前のとは比べ物にならないぐらいのものになっている筈。もちろん俺もそうだが、それだけで勝てるほど『剣の舞』は甘くない。ならば俺に出来ることをやるしかない。

かといって、今から始めた付け焼き刃の特訓では意味が無い。だが……新しい剣の使い方ならどうだろう。

実は、少し考えがある。後はそれが使えるかどうか、決戦の前にに試しておかなくてはいけない。

……そして、あれはどうするのか……





朝。電源を切り忘れた携帯のバイブレータに起こされた。

「誰だ? こんな時間に」

今は朝の6時22分、今日学校は休み。そして月乃との『剣の舞』を行う日であった。

大方休みだという理由で浜樫辺りが遊ぼうと電話してきたのだろうと思い、悪いが断るために起き上がって携帯を手に取る。

ディスプレイを見ると、

「ん? なんだこの番号」

名前ではなく、11桁の数字が書かれていた。最初の数字から見て携帯電話からのもの……間違い電話か?

「……もしもし?」

とりあえず出てみると、

『早く出なさいよ!!』

耳がキーンとなった。

この声は……

「つ、月乃?」

『せっかくこっちから電話してやってんだから早く出なさいよね!』

色々と言いたいことがあるが……まずは、

「お前に番号を教えた覚えは無いんだが?」

『そこは気にしない』

一番気になるんだが……言ったところで答えてくれる訳無いしな。仕方ない、こちらが折れよう。

「で? 何の用だ?」

理由は明確だがな。

『それは、その……』

「今更『剣の舞』を止めようとか言わないよな?」

『も、もちろんよ!』

「じゃあ……日付と場所だけを決めて集合時間を決めてなかったから今こうして報告しようとしてるのか?」

『うっ……』

図星だな。あの時、三夜子に言われて初めて気づいたある問題……いつ河川敷に行けばいいのかが分からなかった。日付と場所だけで納得してしまった俺にも非はあるだろうが、言い出したのは月乃の方だからな。

『な……違っ……いやそうだけど……』

「どっちだよ」

『うっるさぁぁぁい!』

今度は携帯を耳から離して回避。

『あーそうよ! 忘れてたわよ!でもああ言った手前戦いの前に会うのは気が引けたから言うに言えなかったのよ!』

開き直ったな。

『だから何とかして伝えようと考えてこうして電話したわけよ!』

「はいはい」

『いい! 昼の12時ちょうどに河川敷に来なさい!』

12時……後約6時間か。

「分かった」

『ちゃんと来なさいよ! わざと遅れて集中力を切らそうなんて考えるんじゃないわよ!?』

「宮本武蔵か」

あれ? こんなツッコミ、前にどこかで……

『絶対よ!』

それで通話が切れた。携帯を閉じて、机の上に置く。

後6時間、それで俺は戦いに赴く、その為の準備はやるだけやった。後はコレが通用するか否かだ。

まだ時間はあるが、とりあえず身支度だけは整えておこう。

その時、再び携帯が震えた。

「またか」

今度こそ友達のだれかだろうと思い、ディスプレイを見ずに着信ボタンを押した。

『はっはっはっ! やぁ少年元気してたかな!』

「……え?」

最初は訳が分からなかっただが、その声に聞き覚えがあった為、瞬時に理解した。電話の主はあの男……いつだったか色々と世話になったあの帽子とマフラーの男だった。

とりあえず、月乃同様気になることを聞いてみる。

「どうやって番号を?」

『細かいことは気にするな少年』

やっぱり答えてくれないか。これは気にするだけ負けだろうな。

「それで、何の用ですか」

『うむ、少年と少女がついに勝敗を持つのだと小耳に挟んでな。何なら私が立会人にならなくはないぞ』その情報もどこで聞いたんだか、聞いたところで答えてくれる訳ないのは分かったので。

「いえ、これは俺達と相手の戦いですので、無理にとは言いません」

『別に無理にでは無いぞ、最近ヒマすぎてやることがなくて困っていたのだ』

ただの暇潰しかよ!

「じゃあ結構です、ではこれで」

『あ、ちょっとまちた…』

そこまでで着信を切った。ふぅ、とため息をつきながら考える。

多分あの男は来るだろう、こっちが言ってない情報を何処からか聞いて先回りしてるから、来いと言わなくても現れるか、どこかに隠れて見ているんだろうな。

まぁ実際、立会人が何の役にたったのか前回のそれでは全く分からなかった、来たところで対した邪魔にもならないだろうし。

その時、再びの着信。もしかしたらまたあの男かと思い、ディスプレイで確認する、知らない番号ならスルーしようと思ったが。

「三夜子か」

最近登録した三夜子からの着信に電話に出た。

「もしもし」

『……やっと繋がった』

「悪い、二回連続別の人から電話が来てな」

『ん……』

「あ、それでな、今日の集合時間だが…」

『……12時』

「え? あ、うん。そうだ」

何で知ってるんだ?

『……メールがあった』

まだ言ってないのに答えが返ってきた。

「メール? 月乃からか?」

聞いてから違うと思った、三夜子には内緒にしておけと言ったのは月乃本人だし、三夜子は月乃のアドレスを知らない。

『……多分違う』

「多分?」

『……知らないアドレスだから』

つい先日携帯を買った三夜子のアドレスを知っているのは、大和先生と押川と俺、後は冬野ぐらいだ。その中から誰かに伝わらない限り知ることは出来ない。

俺といい三夜子といい、個人情報がどこからか漏れてるんじゃないかと疑いたくなるが、それを今考えてたら時間がすぐ経ってしまうな。

「とにかく、12時だな。その少し前に正門集合でいいか?」

『……分かった』

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