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文武平等  作者: 風紙文
第二章
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裁縫と携帯と

3、4時限合同授業の家庭科の際、C組は必ずA組と合同になる。

これはAとC、BとDという分かりやすい組み合わせの為、そして時間割りの作り方が互いに似ている為からこうなっているんだろう……決して、家庭科の大和先生が決めたことでは無い筈だ……おそらく。

という訳で今日は家庭科の合同授業。A組とC組の生徒は東棟は一階、被服室へと来ていた。

内容は裁縫、前々回から宿題として出された何を創るかを書いた説明書の通りに何かを作るという、かなり自由度が高い授業だ。

ちなみにその説明書、本人が作れさえすればどんな物でもよく、一度その説明書を提出して評価をもらう

期限が今日の家庭科の授業まで。そう、つい先日三夜子が白紙だと言っていたアレだ。今日説明書が書けていなければ何も作ることが出来ないんだが。

「なるほど、ポケット付きのバックを作るんだな」

「……はい」

「ちと簡単そうだが、まぁ頑張って時間内に終わらせろよ」

「……はい」

どうやら三夜子はバックを作るらしい、決して町田のパクりではない筈だ。

まぁそれはともかく、ただ授業二時間分を使って作る、それさえ守れば大体が自由で、被服室の中はとても賑やかだった。

席も自由なので友達どうしが一つの机に集まりあってお喋りしながら課題を作っている。課題さえ出来れば何をしてもいい、これが合同授業の大和先生の授業の良いところで。別に騒がしいのを注意するでもなく、むしろその中に入って会話するぐらいだ。

だから被服室の中はとても騒がしい……99%ぐらいは。

この残りの1%、それは一つの机に集まった5人により構成されていた。

一人は俺で、一人は三夜子。ここまでがC組。残る3人はA組で……もはや誰か言わなくても分かるだろう。

「みゃーさんは裁縫って得意?」

唯一の言葉発生源である押川が三夜子に話しかけると、

「……そうでもない」

三夜子は端的に答える。

話はそれだけ、周りが騒がしいのでその2人の言葉のキャッチボールはとても静かだ。

そして他の2人は……なぜこの机に来たのだろう?

まず、被服室に来てからを思い出してみよう。

最初は組毎出席番号順に席について大和先生の話を聞き、提出していた説明書をC組から返していった。

俺の順番が来て説明書を受け取り、ふと目に入った一番奥の机の席に座る。準備を始めていると、提出は間に合わなかったがなんとかなった三夜子が何も言わず前の席に座った。

それからしばらくして、押川が三夜子の隣に座った。

予想通りの形になったなと思いながら針に糸を通そうとしていたら、

「創矢、ここ良いかしら」

後ろから月乃に声をかけられた。

「あぁ」

糸に集中していたせいでそう答えてしまったが、針穴に糸が通って一息ついた時に隣に座っていた月乃を見て驚き、玉止めをしていなかった糸が針穴から出てしまった。

再度糸を通そうと努力していると、今度は早山が来て、

「武川……と、集中して答えるどころじゃないか」

「別に構わないわよ」

「そうか」

そして針に糸を通しきり、ちゃんと玉止めをしたところで一息ついた瞬間、俺の左右の席が埋まっていることに気づいた。

こうして、この状況の出来上がりだ。

しかし、どうしろというんだこの状況。右では月乃が静かに裁縫してるし、左では早山が、元から静かだったから特に静かなのは変わらないのだが。つい先日にあんなことがあった三人組がこうして隣どうしで座って裁縫をしている……居ずらいにも程があるだろう。

すっごい空気がはりつめてる感じがするが……と、とりあえず、課題を終わらせるか。

「ねぇ」

「!?」

急に月乃が訊いてきた。

「な、なんだ?」

「あ、創矢じゃないわ、早山の方よ」

「……なんだ?」

俺の隣に座る早山に月乃が話しかける。その間にいる俺は、聞きたくなくても2人の会話が聞こえてきた。

「アンタ、2日前にアタシと創矢が戦ってたところに入ってきたわよね」

「ああ、生徒が向かっていたからな、教える為にな」

「それについては、ありがとね」

「気にするな、あまりバレたくないのは俺も同じだからな」

「月乃は早山が剣を持ってたのを知ってたのか?」

ふと、話に入ってしまった。

「えぇ、最初に戦った相手よ」

「最初……」

俺はまだ誰とも勝敗のついた『剣の舞』を行っていない。ところがこんな近くに勝敗をつけた人達がいたのか。

「結果、知りたい?」

声を低めて月乃が聞いてきた。

「いや、別に」

「もし知りたかったら…」

「部活に入れ、だろ? もう何度目だよ、それ」

「ちっ、ダメか」

「早山、結果は?」

戦った相手が揃ってるんだ、どちらか片方に聞けばいいだけだ。

「結果は……いや、言うのはやめておこう」

「え?」

「隠すことではないが、結果は月乃から聞いてくれ」

「それ、遠回しに部活に入れと言ってないか?」

「……取り方次第では、そうなるな」

「何で普通に教えてくれないんだ?」

「部活、入るか?」

「いや、やめておく」

早山までどうしたんだ? 俺と同じ部活勧誘されてる側だった筈だぞ。

「ま、実際そこまで隠す必要はないけど。そうね……アタシとの決着がついたら教えてあげるわ」

「決着……そうだな」

あの時はああなってしまったが、いずれまた戦わなくてはいけないんだ。

「という訳で、明後日、あの河川敷で決着をつけるわよ」

「あぁ、分かった」

「コレは他言無用よ、七ヶ橋にも黙っておきなさい」





放課後、俺はパズル部の部室に来た。

だが今日は部活ではなく、家の手伝いがある為に休むことを伝えに来たんだが。

「三夜子だけか?」

「ん……」

部室には三夜子だけだった。

「お、携帯」

その手には、先日買った真新しい携帯電話が握られていた。

「ん……使い方はだいたい分かった」

「昼間にでも教えてくれりゃ良かったのに」

「……授業中は電源切ってた」

そういうところ真面目なのか、いつでも傘持ち歩いてるのに。

「……さっそく教えて」

「あぁ、冬野の番号な」

「ん……創矢のも」

「はいはい」

俺は携帯を取り出し三夜子の電話番号とメールアドレスを登録、すぐにメールに開いて俺と冬野の電話番号とアドレスを書いて送信した。

「……登録完了」

「良かったな」

「ん……良かった」

さて、後は大和先生が来るのを待つとするか、職員室に居なかったらここに来た訳だし。

「……座らないの?」

三夜子は首を傾げた。いつまでも立っている俺に疑問を抱いたらしい。

「あぁ、実は今日家の手伝いがあるから部活休もうと思ってな、先生が見当たらないからここに居ればいずれ現れるだろうと…」

「……良い考えがある」

「良い考え?」

三夜子は携帯を操作して、

「……これ」

こちらに画面を向けた。そこに映っていたのはメールアドレス、登録名は、

「大和先生の携帯か」

「ん……これにメールすればいい」

少しして携帯にメールが届いた。少し考えたが、大和先生なら理解してくれるだろうと思ってそこに書かれているアドレスに名前をつけて登録後、メールを書く。

先生は知らないアドレスだからな、名前も書いて、メールを送信。

「ありがとな、三夜子」

「……どういたしまして」

すると、携帯が震えた。開いて見ると一件のメール。


OK、頑張れよ


簡単な文面だったが、これで大和先生に報告出来た。

「じゃ、俺行くから」

「……待って」

「何だ?」

「……明後日」

「明後日?」

あ、まさか、

「……私も行く」

やっぱりか。

「聞いてたのか?」

「……正面に居たから」

そりゃそうか、俺達の真正面で課題やってたんだから名前呼ばれりゃ気づかない訳ないだろう。ひょっとしたら押川にも聞かれてたんじゃないか。

「……大丈夫、リリには聞こえてない」

言ってないのに答えてくれた。

「そ、そうか」

というか月乃はそれに気づいていなかったってことだよな? まぁ仕方ない、月乃に何か言われたら今言ったように言い返せばいいだろう。

「……ダメ?」

「いや、大丈夫だ」

「……じゃあ」

「ん?」

そこで俺は気づいた。月乃は、最も大事なことを忘れていたのだった。

しかし、聞きに行くに行けない状況。

なのでそれは、その時の場に合わせることにした。


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