同時刻、パズル部の部室にて
……一方その頃、
「へぇ~、そんなことがあったんだ」
パズル部の部室には、武川を除いた全員が揃っていた。
「でも、まっちーとみゃーさんが仲良くなるのはボクとしても嬉しいかな、たけやんの他にもお話し出来る人が増える訳だし」
「ん……」
「そうか、そういう考え方もあったんだな」
「へ? それが目的じゃなかったんですか」
「あー、実はな…」
大和先生は押川に武川と月乃についてを説明した。
「なるほど~、でもつきのんはどうしてそんなに部活の勧誘してるのかな?」
「そう、そこなんだよ」
「そこ?」
「そこがよく分からねぇんだけど……なんか、引っ掛かるんだよな」
「んー、ボクもつきのんの眼帯については知らなかったし。そうだ」
押川は鞄の中から携帯を取り出し、操作してどこかへと送信した。
「……」
その状況を、七ヶ橋はじっと見ている。
「どうした、三夜子?」
「……」
「携帯……あ、そういや」
「あ、もしもし? ひょうちゃん?」
押川の電話が繋がる。
「うん、実はね、つきのんについて聞きたいんだけどさ……」
それから数分、押川は電話先の主との会話を続ける。その間、先生は何の気なしに電話の相手が誰かをあだ名から考えていた。
ひょうちゃん、てことは名前か名字にひょうが入っている生徒だよな……居たかな、そんな生徒。
ん? 待てよ、例えばひょうと読む別の漢字とかなら。
「うん、ありがとうひょうちゃん、それじゃあ……え? うん、今部室だけど。うん、パズル部の部室…みゃーさん? 隣にいるけど……うん、分かった、ちょっと待ってて」
携帯の発信口を手で抑えて押川は七ヶ橋に顔を向けた。
「ねぇみゃーさん、ひょうちゃんがみゃーさんと話してみたいって」
「……私と?」
「うん」
「……話すことなんて」
「大丈夫だよみゃーさん、ひょうちゃんは話題が豊富だから、大体のことは話せる筈だよ」
「……」
七ヶ橋は長考した結果、
「……分かった」
首を縦に振った。
「はい、もう繋がってるから」
携帯が七ヶ橋に渡される。
「……もしもし?」
『もしもし? あなたがみゃーさん? リリから話は聞いてるよー、私は表方睦黄。リリとは陸上部仲間でね、まぁよろしくね』
「……ん、よろしく」
「なるほど、表方のことだったのか」
「先生、ひょうちゃんのこと知ってるんですか?」
「知ってるんですか? ってコレでもこの学校で数少ない家庭科教師だぞ、生徒の名前ぐらい把握してるさ。で? 表方は月乃のことを何だって?」
「えっとですね…」
押川が大和先生に今しがた聞いたことを話している間、七ヶ橋と表方は電話越しに会話を続けていた。
『覚えてる? 一年生の時、私もみゃーさんやリリと同じA組だったんだけど』
「……覚えてない」
『ありゃ、まぁ無理もないか、リリ以外と話してるところ見たこと無いし、目立ちたがりでもないしね。でもみゃーさんって運動神経いいよね? 100メートル走の時リリと同じぐらいの速さだったし』
「……運動は嫌いじゃないだけ」
『それにしてもスゴいよ、陸上部と同じ速さって』
「……そう?」
『うん、それにね、自分では気づいてたかは知らないけど、みゃーさんって結構有名だったんだよ?』
「……私が?」
『ありゃ、やっぱり知らなかったか、みゃーさんっていつも、いつでも傘持ってたじゃん?』
「……今も持ってる」
机に立て掛けてある傘に目を向ける。
『そーそーそれそれ、噂になったんだよ、その傘は何なのかって』
「……」
『でも、こうして話してみて分かったよ、みゃーさんは悪い人じゃないってね』
「……」
『もし良かったらさ、私ともリリみたいに気さくに話せる仲になろうよ、ね?』
「……うん、分かった」
『おっけー、じゃあ早速だけどみゃーさんの携帯番号教えてくれない?』
「……それは」
『ん?』
そこで、大和先生が七ヶ橋から携帯を取った。
「もしもし? 表方か?」
『え? 大和先生? 何で?』
「実はな…」




