解錠
今日も今日とて、俺は剣の解錠を試みている。
そして、
「……こんなものかな」
一つの形に至った。
縦4横3の場所に板は6枚。縦線が4枚と横線が2枚で、試行錯誤の結果縦に4枚並べ、残りを左右に置いてみた。板に描かれた模様を見ると縦に線が並んだ形になっている。
とにかく今までで一番形っぽいものを作っているのが、この並びだ。
だが、変化は起こらない。七ヶ橋の傘のように何かをしないといけないのだろうか、もしくはコレでは解けないのだろうか。
その時、後ろに気配を感じた。
「!?」
慌てて後ろを振り向くと、
「また、あなたですか」
そこにはあの時の一年生……飯田が立っていた。
「何のようだ? 七ヶ橋ならここにはいないぞ?」
「別に構いません、むしろ剣の回収の邪魔をされないのだから好都合です」
剣の回収?
「あなたこそ、どうしてこちらに?」
「どうだっていいだろ」
「ひょっとして……アレが目的ですか?」
飯田は『森の柱』を、剣を指差した。
「……」
「気づいたんですか? コレが剣だって」
「だったら、どうする?」
「解かれる前に回収させて頂きます」
「無理だな、そう簡単に解ける物でも抜ける物でもないぞ」
「ご心配なく」
飯田は剣を取り出した。
「僕の剣で吹き飛ばせば、運ぶ事ぐらいは出来ますから」
「な……」
無理矢理な方法だが、それが出来てしまうかもしれない。
だとしたら、マズイ。この剣を取られたら大和先生に会わせる顔が無い。
そして……七ヶ橋を守れなくなってしまう。
そんな事、絶対にさせるか!
俺は膝立ちの状態から『森の柱』に触れながら立ち上がる。
コイツに取られるぐらいなら、俺が無理矢理抜いてやる! 本物の剣ではないにしろ、柄の部分と刃の部分がある剣のような形だ、それなら俺にも使えるだろう。
柄の先端に手を置いて一気に立ち上がりにかかる。
だが次の瞬間、
ガコン
何か音がした。そして、手が急に落ちた感覚になった、まるで板を押したら穴が開いて手が下に落ちたような感覚だ。
それはつまり、何かが下に落ちたという事。今俺の手は『森の柱』の柄の先端にある。
つまりは、それが落ちた。柄が縮まったという事だ……
という思考がガコンという音が鳴り終わるまでの数秒間で頭の中を巡り。
音が終わった瞬間、
ドゴン!!
先ほどの何倍も大きな音が鳴り響いた。それと共に何故か土煙が巻き上がる。
「な!?」
どうやら発信源は俺の足下らしい。土煙が腰辺りまで包んでいた。
「い、一体何を?」
飯田が聞いてきたが、こっちが聞きたいぐらいに分からない。
少しすると砂煙は風に流されてしまい、足下が見えてくる。そこで目にしたものは、
「これは……」
『森の柱』の先端……今まで地面に埋まっていて見えなかった部分だ。
切っ先には数センチ程の溝があり、クワガタの鋏のような形になっている。
ここが見えるという事は……俺は柄を握り、持ち上げてみるがあまりの重さに持ちあがらなかったのでもう片方の手も柄を握る。
すると、今まで地面に埋まっていた『森の柱』が浮いた。
えっと……つまり、パズルが解けたのか?
その時だった。
「っ!?」
急に頭痛がした。
その間、頭に多くの情報が一度に流れ込んでくる。情報が多すぎる上に早すぎて理解が追い付かない。
なんとか頭に意識を集中して、解読を試みる。
こ……はレ…ル…
種…は大…
…状はバ……ード………
……を司り
…内の……ルを動…す…で能…を得…す
更に…全体が
…気…になって…り
柄を伸……て空…を含み
…を…し込…と…気の…を…ちま…
所々聞き取れたことをまとめてみる。
まず最初はレベルだ。レベルは確か、大和先生曰く4だった筈だ。
次はおそらく種類。種類は大剣らしい。
その次は形状で……多分、バスタードソードと言ったのだろう。ヨーロッパの方の剣で、手でも両手でも扱える便利な物だった筈だが……それにしてはコレ重すぎる。だから大剣に分類されたのかもしれないな。
後は、司るもの。つまりは能力だが、これはほとんど聞き取れなかった。
何かの中の何かを動かすと、何かを得る、か……うん、さっぱり分からないな。だが、更に、からは意味が理解できた。今先ほど見たばかりだから。
とりあえずこれくらいだな。とにかく今は、
「飯田、とか言ったな?」
今まで『森の柱』だった物、新たに剣となった物の先端を飯田に向ける。
「あの時言ったよな? 剣を使ったらいいって。手に入れたぞ、剣を」
「くっ……まさか本当に剣を手にするなんて」
「さぁ、やろうか?」
両手でないと持ち上げられないそれを構える。
柄の先端を自分の臍の前に、剣道における基本の構え、中段の構えだ。
「……まさかこうなるとは思ってませんでしたよ、剣を持ってきておいて正解でした」
飯田は剣を肩に担ぐ。
互いに睨み合い、誰もしてくれない開始の合図を待つ。
これが、俺の最初の戦い『剣の舞』だ。
剣を手に入れる為に。
手伝ってくれた人の為に。
そして……大切な仲間を守る為に。俺は戦う。




