表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
盾にされた私、異世界ではただの猫です  作者: 蛇目菊 欲狐
第2章
PR
89/90

21-この世界を知るために

「……さて、話に戻ろうか」


しばらく王妃様に撫でられ続けていると、国王陛下が静かに口を開いた。


その言葉に、王妃様が名残惜しそうに手を止める。


「さて、恩猫様――いや、リン様、とお呼びしてよいのだったかな」


「はい」


「あなたが人の姿を取れることは理解した。

確認したいことは山ほどあるが……ひとまず、オルデンヴァルト家の養子となること自体に問題はない」


その言葉に、胸の奥から安堵が込み上げる。


恩猫様という存在は、本来なら国に保護され、管理されてもおかしくない立場だ。

そんな中で自由を許されているだけでも十分特別なのに、さらに人として辺境伯家の養子になりたいなど――身勝手だと却下される可能性も考えていた。


「ただ、確認したいことがある」


国王陛下の視線が、真っ直ぐこちらへ向けられる。


「リン様は、その人の姿で何を成そうとしているのか」


……それはつまり。


この世界に対し、私がどんな影響を与える存在になるのか――そういう意味なのだろう。


きっと求められているのは、“恩猫様”としての崇高な使命。


けれど、私は――。


「……私は、女神様から『役目を果たせ』と言われました」


静かに言葉を紡ぐ。


「ですが、その役目が何なのか、まだ理解できていません」


『何を成すのか』と問われても、今の私には答えられない。


自分自身のことも、この世界のことも、まだ何ひとつ知らないのだから。


だからこそ――。


「……まずは、この世界を知りたいのです。

人として、この世界で生きる人々を知りたい」


「まだ、何を成すかまでは分かりません。

ですが、知ることから始めていきたいと考えています」


そう答えると、国王陛下は少し目を見開き――やがて、ふっと柔らかく微笑んだ。


「……そうか」


「どうやら私は、あなたを少し神聖視しすぎていたようだ」


穏やかな声音が響く。


「ヴェイルガストの件もあった。

だから私は、あなたがこの世界に対して強い使命感を抱き、行動しているのだと思っていた」


「だが、リン様もまた、悩み、迷いながら歩む一人の人間なのだな」


その言葉に、胸がじんわりと熱を帯びる。


国王陛下は一度息をつき、改めてこちらを見据えた。


「ならば、私はそれを支援しよう」


「あなたが何を成し、何を見つけるのか――今後を見届けてみたい」


……認めてもらえた。


立派な理想でも、大義でもない。

ただ“知りたい”という曖昧で未熟な想い。


それでも国王陛下は、それを否定せず受け止めてくださった。


なんて寛大な方なのだろう。


改めて、この方が王である理由を理解した気がした。


「まぁ、支援するにあたっては、我々の養子になってくれると非常に助かるのだがなぁ」


「おい。それはお前がリン様を娘にしたいだけだろうが」


「……バレたか」


「隠す気もなかっただろう」


レオンハルト様の呆れた声に、国王陛下が楽しそうに笑う。


先ほどまでの威厳ある王の姿とは違う。

どこか少年のような、親しみやすいやり取りだった。


周囲に控える使用人たちも、その光景を微笑ましそうに見守っている。


……きっと、この方は。


偉大な王であるだけでなく、人に愛される王なのだろう。


前の世界では、“王”という存在に実感などなかった。


けれど――。


この人が王ならば、この国はきっと良い国なのだと思えた。


この国のこと。

この世界のこと。


もっと知りたい。


私は改めて、そう強く思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ