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盾にされた私、異世界ではただの猫です  作者: 蛇目菊 欲狐
第2章
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20-触れられる温もり

「……説明してもらおうか、レオン」


沈黙が続いた後。


国王陛下が、地を這うような低い声を漏らした。


だが、その視線は私から一瞬たりとも外れない。


「……リンは元々、異世界の人間だ」


「異世界……?」


「ああ。別の世界から来た者らしい。

リンのいた世界には魔法も魔物も存在しない。

代わりに、“科学”というものが発展した世界だったそうだ」


さらりと説明するレオンハルト様。


「ちなみに、向こうの世界では既に成人していたらしいぞ。

こちらでは若返っているそうだが」


その一言に、国王陛下は深く頭を抱えた。


「……そんな重大な話を、なぜそんな簡単に口にできる……。

国家機密級の内容だぞ……」


大きなため息。


眉間には深い皺が刻まれている。


……本当に申し訳ありません。


そう内心で肩を縮こませていると。


「……そういえばリン、ドレスが変わっていないか?」


レオンハルト様が、不思議そうに私を見る。


「選んでいたものは、もっとシンプルだっただろう?」


「……あ」


言われて、ようやく気付く。


王都へ向かうにあたり、

白いワンピースでは失礼になるからと、

紺色のシンプルなドレスを用意してもらっていた。


けれど、今私が纏っているのは、

星空を思わせる装飾が施された幻想的なドレス。


明らかに別物だ。


……多分。


先日お会いしたルミナリア様とテラ様の姿を見た影響だろう。


無意識のうちに、

あの御二方の印象を反映してしまったのかもしれない。


……私なんかが、あの方々のようになれるはずもないのに。


そう思うと、急に気恥ずかしくなってしまう。


「リン様……と、お呼びすればよろしいのかしら」


不意に、王妃様が静かに声を掛けてくる。


顔を上げると、

王妃様は申し訳なさそうに頭を下げていた。


「先ほどまで、大変なご無礼を……。

どうか、お許しくださいませ」


「えっ!?

そんな、頭をお上げください!」


慌てて声を上げる。


「私は全然気にしていませんから……!」


そう伝えると、

王妃様はゆっくり顔を上げ、

どこか困ったように微笑まれた。


「……まさか、猫だと思っていた方が、

元は人間だったとは思いもせず……。

きっと、恥ずかしい思いをさせてしまったのではないかと」


「……そう、ですね。

少しだけ恥ずかしい気持ちはあります」


正直にそう答える。


でも。


「……でも、あの姿だったからこそ、

私は人と触れ合うことができました」


「暖かいものだと知ることができたので……

私は、嬉しかったです」


そう告げると。


王妃様が、僅かに目を見開いた。


……あれ。


何か、おかしなことを言ってしまっただろうか。


そう不安になった時。


「……リン様。

もう一度、触れてもよろしいでしょうか?」


「え?

は、はい……もちろんです」


そう答えると、

王妃様は静かに立ち上がり、

私の元へ歩み寄って来られた。


そして。


今度は猫を撫でるようではなく。


まるで、壊れ物に触れるような手つきで、

そっと私の頭を撫でていく。


「……もし、お嫌でなければ」


慈愛に満ちた微笑みを浮かべながら、

王妃様が問いかける。


「人の姿でも、こうして触れてもよろしいですか?」


その優しい声と眼差しに、

私は思わず見惚れてしまう。


……こんな風に、

誰かに触れたいと願われたことなんて、

今までなかったから。


私は、無言のまま小さく頷いた。


「……なぁ、レオン」


そんな私たちを見ながら、

国王陛下がぽつりと呟く。


「リン様、うちの子にしては駄目か?」


「駄目に決まってるだろう。

何を言ってるんだ、お前は」


即座に返すレオンハルト様。


「……いや。

エレノアが、久しぶりに“王妃の仮面”を外しているのを見たら……ついな」


その声には、

どこか安堵したような響きが混じっていた。


その間も私は、

王妃様の優しい手に撫でられながら、

不思議な安心感に包まれていた。

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