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盾にされた私、異世界ではただの猫です  作者: 蛇目菊 欲狐
第2章
68/75

1-恩猫様は物語になる

王都は、人で溢れていた。


辺境伯領とは比べものにならないほど多くの人々が行き交い、

石造りの建物や露店が並ぶ街並みは、どこを見ても新鮮で。


私は思わず、きょろきょろと辺りを見回してしまう。


「……すごい」


歩いているだけで圧倒される。


そんな中。


広場の一角に、大きな人だかりができているのが見えた。


「何だろう……?」


気になって近づくと、どうやら人形劇のようだった。


舞台の上では、派手な身振りを交えながら男が声を張り上げている。


「さあさあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!

これは、破滅の危機に瀕した領地を救った――奇跡の猫の物語!!」


……嫌な予感がした。


「舞台は辺境伯領!

魔物あふれる『縫い目の森』に、災厄級の炎の魔物が現れた!」


「騎士たちは苦戦!森は燃え上がり絶体絶命!

だが、そこに現れたのは――一匹の黒猫!」


舞台の上の黒猫人形が、ぴょこんと飛び出す。


観客から歓声が上がった。


「黒き毛並みに黄金の瞳!

雨を呼び、炎を鎮め、傷付いた騎士すら癒したその猫は――」


「人々から“恩猫様”と呼ばれるようになったのです!」


……うわぁ。


思わず遠い目になる。


しかも、話が微妙に盛られていた。


「だが!平穏は長く続かない!

暗雲渦巻く森の奥に現れたのは――災厄の魔竜、ヴェイルガスト!!」


「騎士たちは奮戦するも追い詰められる!

そこに現れたのは――やはり恩猫様!」


「眩き奇跡の光で、荒れ果てた森も!壊れた防壁も!

すべて元通りにしてしまったのです!!」


舞台上で黒猫人形がぴかぴか光り始める。


……なんだろう。


間違ってはいない。


間違ってはいないんだけど。


「そして、魔竜すら消し去り、領地に再び平和が訪れたのでした――!」


めでたしめでたし!


締めの言葉と同時に、大きな拍手が広場に響く。


「皆!この話、作り話だと思ってないかい!?」


男が興奮気味に叫ぶ。


「違うんだなぁ!これは実際にあった話なのさ!」


「しかもその恩猫様!

なんと今、王との謁見のため、この王都に来てるらしいぜ!!」


観客たちがどよめく。


「会えるかな!?」

「見てみたい!」

「本当にいるのか!?」


そんな声が飛び交う中。


私はそっと、フードを深く被り直した。


(……もう、そんなに広まってるんだ……)


気恥ずかしい。


というか、居た堪れない。


「……リン様、まだ見ますか?」


不意に声を掛けられ、振り返る。


そこにいたのは、深緑の短髪に薄緑の瞳を持つ青年。


エルリックさんだった。


「あっ……すみません。つい気になって……」


「そろそろ戻りましょうか」


そう言うと、エルリックさんはどこか困ったように笑った。


私は軽く会釈し、彼と並んで歩き出す。


――私、志乃鈴は今。


王との謁見のため、王都へ来ていた。

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