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盾にされた私、異世界ではただの猫です  作者: 蛇目菊 欲狐
第1章
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57-世界を書き換える者

【主人公視点】


竜の攻撃は、目前まで迫っていた。


――風の刃。


まともに受ければ、引き裂かれる。

軌道を逸らせば、背後の騎士たちが危ない。

防いでも、風圧で吹き飛ばされる。


なら――


「消えて」


突き出した手の前に、黒が生まれる。


簡易的に創り出した“穴”――

それは瞬く間に広がり、風の刃を呑み込み、跡形もなく消し去った。


静寂。


何事もなかったかのように、攻撃は消えていた。


これが――


私の新しい力。


『創造』


あらゆるものを生み出し、変質させる能力。


――ただし。


破壊そのものを目的とした事象は創れない。

そして、強大な力の代償として、生命力を消費する。


けれど――


“想い”は、それを補う。


……まるで、私のために用意されたかのような力だった。


竜――ヴェイルガストが、こちらを見据える。


新たな“敵”として、認識したのだろう。


再び放たれる攻撃。


だが、それも同じように消し去る。


やがて、竜は動きを止めた。


ただの魔物ではない。


こちらを“見ている”。


考えている。


「……鑑定は、もう使えない……」


一瞬の思考。


そして、すぐに結論に至る。


「――なら、創ればいい」


目に力を宿す。


「『世界眼』」


視界が変わる。


万物を見通す力が、竜の本質を暴く。


「……ヴェイルガスト……風を操る災厄種……」


そこまではいい。


だが――


「……世界に拒絶された存在……人為的に生み出された……?」


違和感。


その意味を考える暇は――ない。


ヴェイルガストが、空へと舞い上がる。


街へ向かうつもりだ。


「させない!」


鎖を創り出し、その身を縛り上げる。


地へ叩き落とされ、もがく竜。


だが――


「……っ」


力が、削れていく。


この能力は、無制限ではない。


維持しているだけで、確実に消耗していく。


鎖も、長くは持たない。


それでも――


ここで逃がすわけにはいかない。


街も、森も、皆も――


守らなきゃいけない。


「……どうすれば……」


思考を巡らせる。


この状況を、一変させる方法。


そして――


ひとつの答えに辿り着く。


「……戻せばいい」


今を、無かったことにする。


壊れる前へ。


傷つく前へ。


すべてを――


「……『因果遡行』」


優しい光が、世界を包み込む。


ヴェイルガストが苦しみ、悶える。


その存在が、揺らぎ――


やがて、穢れへと還り、散っていく。


荒れ果てた森が、元の姿を取り戻す。


砕かれた大地が、繋がる。


倒れていた騎士たちの傷が消え、


壊れた鎧も、元通りに。


――ローガン団長の腕すら。


すべてが、巻き戻る。


静かに。


確かに。


世界が、“正されていく”。


やがて、光が収まった。


「……これで……」


安堵しかけた、その時。


足元に、コツリと何かが当たる。


拾い上げる。


「……魔法石……?」


レオンハルト様に渡したはずのもの。


それもまた、“戻って”いた。


――なら。


「……浄化」


魔法石に魔力を通す。


溢れ出す光。


世界を包む、優しい輝き。


残っていた穢れが、音もなく消えていく。


ヴェイルガストの残滓も、


魔物たちの痕跡も。


すべてが、静かに消滅した。


やがて、光が収まる。


そこにあったのは――


元通りの森。


そして。


「……生きてる……?」


立ち上がる騎士たち。


互いに無事を確かめ合い、驚愕している。


……よかった。


本当に、よかった。


胸の奥から、力が抜ける。


その時。


ざり、と背後で足音がした。


振り返る。


そこには――


レオンハルト様と、第1騎士団の面々。


「……助けていただき、ありがとうございます」


ローガン団長が、深く頭を下げる。


他の者たちも、それに倣う。


やがて、顔が上がる。


そして――


「……恩猫様、ですよね」


「あなたは……一体、何者なのですか」


向けられる視線。


そこにあるのは――


疑念でも、恐怖でもない。


ただ、純粋な問い。


……ああ。


やっぱり。


この人たちは――


優しい。


自然と、笑みがこぼれる。


そして、答える。


「――私は、『志乃鈴』」


一拍、置いて。


「ただの、猫です」


風が、そっと吹き抜けた。


―― 第1章 完 ――

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