表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
盾にされた私、異世界ではただの猫です  作者: 蛇目菊 欲狐
第1章
62/72

55-"無能"でも

【主人公視点】


森を駆ける。


風魔法で身体を加速させ、猫の姿の軽さを活かして木々の間を縫うように跳ぶ。


速く、速く、速く――!


焦る心を押し殺しながら、皆がいるはずの奥地へと向かう。


森には濃い穢れが漂い、空気が淀んでいた。


……あの防壁を破壊した一撃。


あれが、竜のものだとすれば――


奥地へ向かった彼らは。


「お願い……間に合って……!」


祈るように、さらに速度を上げる。


そして――辿り着いた。


その先にあったのは。


血の匂いだった。


荒れ果てた大地。


激戦の痕。


そして――倒れ、動かない騎士たち。


「……っ」


息が詰まる。


奥に、かろうじて立つ二人の姿。


レオンハルト様と、ローガン団長。


その後ろには――


「……カイ、さん……?

エルリックさん……マティアスさん……ブラムさん……カトレア、さん……」


誰も、動かない。


かろうじて息をしているだけの、虫の息。


「――皆っ!!」


考えるより先に、身体が動いていた。


「……恩猫様!? なぜここに!来てはいけない!!」


ローガン団長の叫び。


レオンハルト様の驚愕の視線。


――その一瞬の隙。


竜が、動いた。


風の刃が、二人へと放たれる。


「――っ!!」


間に合わない。


防げない。


二人の身体が吹き飛ばされる。


「ローガンさん!レオンハルト様!!」


地面に叩きつけられる寸前――植物を伸ばし、受け止める。


さらに、光の障壁を展開し、追撃を防ぐ。


すぐに駆け寄り、鑑定で状態を確認する。


レオンハルト様は重傷。


骨折、深い裂傷、出血過多。


……だが、それ以上に。


「……っ」


ローガン団長は――片腕を失っていた。


「なぜ……来てしまったのですか……恩猫様……」


かすれた声。


それでも、穏やかな表情。


「今、助けますから……!」


治癒を発動する。


だが――


治らない。


回復しない。


「……ついに、お話になられたのですね……」


こんな状況なのに、微笑む。


「薄々、気付いておりました……」


「今は、そんな場合じゃ……!」


魔力を込める。


願う。


強く、強く。


――それでも。


治らない。


「……すみません……恩猫様……」


「折角、頂いた魔法石……腕と一緒に、砕いてしまいました……」


差し出されるのは、砕けた魔法石の破片。


――それを、持っていたせいで。


ローガン団長は、腕を失った。


「……っ」


言葉が、出ない。


胸が、強く締め付けられる。


……でも。


今は――後悔している場合じゃない。


「そんなこと…どうでもいいっ!!」


叫びながら、治癒を重ねる。


お願いだから、治って。


強く願うも、治る気配がない。


――どうして……治らないの……!?


竜の攻撃が激しさを増す。


障壁の維持に魔力を取られ、治癒に集中できない。


焦りが募る。


――助けられない?


やっぱり私は。


「……無能、だから……?」


絶望が、胸を締め付ける。


その時だった。


「……私たちを置いて、お逃げください」


「……え?」


思考が止まる。


「あなた、だけでも……逃げて、ください……」


理解した瞬間、頭が真っ白になる。


「……いや、です」


「あなたは……十分、助けてくださった……もう……」


「いやですっ!!」


叫ぶ。


涙を堪えながら。


その瞬間――


障壁が砕けた。


竜と、視線が合う。


圧倒的な存在。


抗えない恐怖。


それでも――


ここまで来た理由が、胸の奥で燃えていた。


「……いやだ……」


震える声。


それでも、言葉は止まらない。


「この街は……こんな私を、受け入れてくれた……」


「優しく迎えてくれた……家族だって言ってくれた……!」


涙が溢れる。


それでも、前を見る。


「そんな人たちを――置いて行けるわけがない!!」


竜が、力を溜める。


終わりを告げる一撃。


巨大な風の刃が、放たれる。


――逃げる?


無理だ。


――守る?


できるのか?


「……それでも」


歯を食いしばる。


「“無能”でも――!」


拳を握る。


「私は、家族を…!!皆を守る!!」


その瞬間――


世界が、白に染まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ