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盾にされた私、異世界ではただの猫です  作者: 蛇目菊 欲狐
第1章
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53-災厄の顕現

【レオンハルト視点】


魔物は消え、静寂が訪れた。


「……終わったのか」


安堵の空気が広がる。


だが――


ズンッ


空気が、沈んだ。


「……っ!?」


身体が、重い。


見えない何かに、押し潰されるような圧。


呼吸が、浅くなる。


「なんだ……これは……」


空を見上げる。


黒雲が――うねっている。


ゴォォォォ……


渦を巻き、収束し、圧を増していく。


雷鳴が走る。


風が吹き荒れる。


立っていることすら困難な暴風。


「皆!固まれ!飛ばされるぞ!」


必死に踏みとどまる。


やがて――


風が、止む。


静寂。


そして。


雲が、形を成す。


「……あれは……」


それは、翼。


それは、牙。


それは――災厄。


空を裂き、顕現する存在。


「……ヴェイルガスト……」


風を纏い、すべてを切り裂く竜。


この世界において、“災厄”と呼ばれる存在。


――本能が告げる。


勝てない。


「ははっ……まじかよ」


ブラムが乾いた笑みを漏らす。


「あんなのが出てくるとか、聞いてねぇぞ……」


軽口のようでいて、その目は逸らしていない。


現実を、直視している。


この人数で、竜種と戦うなど――無謀。


増援を呼ぶべきか。


だが、それでどうなる。


他所も私達の所と同様に強力個体が出現していたはずだ。


現に、遠くから戦闘音が響いている。


……間に合わない。


「……だが」


視線を逸らさず、空を見上げる。


「戦わねば、領地どころか……国が滅ぶか」


静かに、言葉を落とす。


――選択肢など、最初から無い。


「……皆、すまない」


振り返る。


「この国の未来の為に――死ぬ覚悟を、決めてくれるか」


情けない問いだと、自覚している。


それでも、口にせずにはいられなかった。


「……当たり前です」


ローガンが、即答する。


「その為に、ここまで来たのですから」


他の者たちも、迷いなく頷く。


誰一人、視線を逸らさない。


……ああ。


良き部下を持った。


そして――


ーーすまない。


ここで、お前達を死なせる。


胸の奥で、言葉にならぬ謝罪を飲み込む。


「……行くぞ」


静かに、しかし確かに告げる。


その一歩は、退くことのない覚悟の証。


災厄は、そんな我らを嘲るように空から見下ろしていた。

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