52-連携、進化
【レオンハルト視点】
強化個体の魔物に対しても、第二、第三騎士団は連携を崩さず、新たに習得した魔法戦術を織り交ぜて対応していた。
無理のない戦い方。
消耗も最小限に抑えられている。
――順調だ。
誰一人として無駄な動きをしていない。
各々が役割を理解し、最適な位置で戦っている。
これならば、問題なく奥地へ辿り着けるだろう。
やがて、森が途切れ、視界が開けた。
「……これは……」
思わず、言葉を失う。
本来なら木々が生い茂っているはずの場所は、枯れ果てた大地へと変わり果てていた。
生命の気配はない。
あるのは――
無数の魔物と、頭上を覆う濁った黒雲。
「異様、ですね……」
ローガンも低く呟く。
だが、
「……呆けている場合ではないな。排除する」
足を止める理由にはならない。
そうして一歩踏み出した、その瞬間。
――ヒュンッ
鋭い風切り音。
咄嗟に盾を構える。
甲高い音を立てて弾かれ、地に突き刺さったそれは――羽。
見上げる。
空を埋める、鳥型魔物の群れ。
「ウインドバードか……」
やはり、一筋縄ではいかん。
「レオンハルト様、ご指示を」
「私と第一騎士団で中央突破。
ローガン、お前はこれを持て」
恩猫様より預かった、虹色に輝く魔法石を渡す。
「合図で起動しろ。広範囲殲滅に使う」
「はっ!」
「第二、第三騎士団は援護だ。各自連携を崩すな」
「はっ!!」
「――行くぞ!」
号令と同時に、地を蹴る。
それを合図に、魔物たちも一斉に動き出した。
⸻
「その辺は任せろ!」
ブラムが斧を振るい、迫る魔物を薙ぎ払う。
エルリックが影のように滑り込み、足を止める。
その隙間を縫うように、第一騎士団が中央へと切り込んでいく。
だが――
空から、無数の羽が降り注ぐ。
「させません!」
カイが手を掲げる。
無数の氷の針が生成され、空へと撃ち出された。
羽と氷が空中で激突し、砕け散る。
だが、ウインドバードは止まらない。
風を纏い、突撃してくる。
「その距離は――不用心ですよ」
マティアスが静かに呟く。
砕けた氷が、水へと変わり、空中で収束する。
水流が鳥型魔物を包み込み、その動きを鈍らせる。
「カトレア!」
「はい!」
光が放たれる。
水と融合したそれは、浄化の檻となり、魔物を拘束する。
「今です!」
第二、第三騎士団の矢が一斉に放たれる。
的確に、急所を貫いた。
次々と魔物が崩れ落ちていく。
――見事な連携だ。
以前とは比べ物にならない。
魔法の扱い、戦術、判断。
すべてが洗練されている。
(恩猫様の影響か……)
思考を巡らせながらも、足は止めない。
中央へと突き進む。
その時――
死角から、数体のウインドバードが急襲してきた。
「させん」
地面に手をかざす。
土が隆起し、鋭い杭となって突き上がる。
空中の魔物を貫き、地に叩き落とす。
そのまま、中央へ――
到達。
「ローガン!やれ!」
「――了解!」
魔法石が起動する。
「グラビティ」
空間が歪む。
瞬間、すべての魔物が地へと叩きつけられた。
本来なら、数体にしか作用しない力。
だが、魔法石がそれを“戦場全体”へと拡張している。
「よくやった。あとは――」
地面が震える。
無数の土杭が一斉に突き上がり、魔物を貫いた。
抵抗する間もなく、すべてが消滅する。
――終わった。
静寂が訪れる。
「……終わった、か」
誰かが呟く。
張り詰めていた緊張が、ふっと緩む。
確かな手応え。
このまま進めば――
勝てる。
そう思えた。




