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50-静寂に潜む脅威
【カイ副団長視点】
「…雰囲気がまるで違いますね」
中層に足を踏み入れた瞬間、空気が変わったのが分かった。
「奥から視線。敵意あり」
「多分、報告にあった強化個体だろうな…。だが姿を見せない。随分慎重だ」
「先に進めば、間違いなく襲ってくる。いつでも戦える準備をしておけ」
エルリックとローガン団長が周囲を警戒する。
二人は気配察知に長けている。
特に団長の判断は、これまで外れたことがない。
各自、武器を構え、慎重に進む。
静かすぎる森。
魔物の気配が消えた異様な空間。
「…殺意に変わった。来る」
その一言で、場の空気が張り詰める。
同時に、地を蹴る重い音が響き始めた。
「皆、構えろ!」
音は急速に近づいてくる。
「こりゃ…大物だな」
ブラムの呟きの直後――
それは姿を現した。
「スノウベア」
白き巨躯の魔物が、こちらを睨みつける。
森の王とも呼ばれる存在。
その唸りは、空気すら凍らせるようだった。




