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盾にされた私、異世界ではただの猫です  作者: 蛇目菊 欲狐
第1章
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46-戦いの前夜、揺れる心

――出来ることを探して、色々とやったつもりだった。


作戦前夜。


言いようのない不安に襲われ、眠れなかった。


そっと部屋を抜け出し、庭へと出る。


見上げた夜空は、静かで穏やかだった。


明日、大規模な戦闘が行われるというのに――

それが嘘のように、世界は静まり返っている。


訓練所で共に魔法を使った騎士たちも、

街で声をかけてくれていた冒険者たちも、

今は防壁で待機しているはずだ。


……皆、何を思っているのだろうか。


「……恩猫様、護衛も付けずに夜遊びですか?」


不意に声をかけられ、驚いて振り返る。


そこにいたのは、ローガン団長だった。


「あぁ、驚かせてしまいましたね。失礼しました」


そう言って浮かべる表情は、

明日戦いを控えているとは思えないほど穏やかだった。


……どうしてここに?


問いかけるように見つめると、

ローガンは小さく肩をすくめる。


「……多分、恩猫様も同じでは?」


「私も眠れず、こうして散歩していたのです」


そう言って、軽く笑った。


――眠れない。


それは緊張なのか、それとも恐怖なのか。


じっと見つめていると、

ローガンは少しだけ困ったように眉を下げ、それでも笑みを崩さずに続けた。


「これは、私の独り言なのですが……」


「戦場に向かうのは、やはり緊張しますし……怖いものです」


団長がそんなことを言っては駄目ですね、と

少し冗談めかして付け足す。


だがその声は、すぐに真剣なものへと変わった。


「……ですが、それは自分が死ぬかもしれないという恐怖ではありません」


「勝てなければ街の者が犠牲になる。

守りきれなければ部下を失う」


「その緊張と恐怖です」


そう言って、ローガンは私から視線を外し、夜空を見上げた。


「……私はこの街が好きです」


「魔物に脅かされる辺境の地でありながら、

穏やかで、優しく、それでいて逞しく生きる人々がいる」


「そんなこの街が、好きなのです」


静かな声で、しかし確かに語る。


「失いたくない。失うわけにはいかない」


「だから、明日戦場に向かうのです」


「私は、この街を守りたい。

そのために、騎士になったのですから」


――それでは、戻りますね。


そう言って、ローガンは踵を返す。


その背中を、私はただ静かに見つめていた。


……この人は、自分が死ぬかもしれないことを理解している。


それでも。


それ以上に、この街を守ることを選んでいる。


――覚悟。


そこまでの想いを、私は持ったことがあっただろうか。


出来ることは、やった。


そう思っていた。


けれど同時に――

戦うことは出来ないと、どこかで線を引いていた。


レオンハルト様に「避難してくれ」と言われ、

その言葉に甘えようとしていた。


……それで、本当にいいのだろうか。


答えは出ない。


ただ、静かな夜だけが過ぎていく。


やがて、空がわずかに白み始める。


――もうすぐ夜が明ける。


作戦開始は、目前まで迫っていた。


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