43-まだできること
とりあえず――少しは力になれそうで、よかったな……。
翌日。街を歩きながら、ふっと息を吐く。
あの魔法石が、どこまで助けになるのかは分からない。
……それでも。
まだ、私にできることはないだろうか。
⸻
「おや、猫様じゃないかい!」
遠くから、串焼き屋の女性が声をかけてきた。
「隣は……アンネリーゼ様かい!随分大きくなったねぇ!」
今日はアンネリーゼとカトレアさんに付き添ってもらっている。
「時々、ブラムやテオドール様と一緒に来てくれてたよねぇ。懐かしいね。
今日はテオドール様はどうしたんだい?」
「テオ兄様は、お母様が回復されたので、学園へ復学なさいましたわ」
テオドールは、母の回復をきっかけに学園へ戻った。
元々優秀だったことに加え、課題も送られていたらしく、遅れはほとんどないらしい。
――よかった。
もう少し遅ければ、彼もこの街から出られなくなっていたかもしれない。
「そりゃあ良かった。安全な場所にいるなら安心だねぇ」
女性も同じことを思ったのか、柔らかく笑う。
「できればアンネリーゼ様にも避難してほしかったけどね……」
「……いえ、私は残ります」
アンネリーゼは、迷いなく言い切った。
「兄のように戦うことはできません。でも……街の支援くらいなら、未熟な私でも出来ることがあると思います」
アンネリーゼは魔術師を目指している。
夜な夜な勉強している姿を、私は知っている。
……こっそり窓から覗いていたら見つかって、一緒に勉強することになったのだけど。
そのおかげで、この世界の魔法の基礎も学べた。
彼女は攻撃魔法は得意ではない。
けれど、支援系の魔法には適性がある。
だからこそ――こうして、自分にできることを探しているのだろう。
……どこか、似ている。
けれど、決定的に違う。
彼女の瞳は、まっすぐ前を見ていた。
諦めてしまった私とは違う、光を宿して。
……眩しいな。
思わず、目を細めてしまう。
――でも。
私も、負けていられない。
この街に救われたのは、私だ。
だから今度は、私が。
そう思い直した、その時。
串焼き屋の女性が、ふと困ったように唸った。
「そうだねぇ……中心地や協会に集まるのはいいんだけど、設備を整えるのに時間がかかっててね」
「……申し訳ありません」
アンネリーゼが少し俯く。
「皆さんを守るため、光の魔法石で結界を張る必要があり……どうしても集まっていただく形になってしまって」
「分かってるよ。それで、女や子供、年寄りは協会へ。男たちは広場で待機、って話だろ?」
女性は肩をすくめる。
「でもねぇ……この時期は暖かいとはいえ、夜は冷えるんだよ。
テントや毛布はあっても、野営みたいなもんだからさ」
「ギルドの場所も借りてはいるけどね……もう少し何とかなると助かるんだけど」
「そうですね……」
アンネリーゼも悩ましげに頷く。
「無理をお願いしている以上、少しでも負担は減らしたいのですが……」
――でも。
私は、その話を聞きながら。
少しだけ、首を傾げていた。
……あれ?
それって――
魔法で、どうにかできるんじゃないかな……?




