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盾にされた私、異世界ではただの猫です  作者: 蛇目菊 欲狐
第1章
48/72

41-見えない敵

エルリックさんに抱えられ、屋敷へ戻る。


そのまま執務室へと直行した。


ノックの後、扉を開けると――

そこにはレオンハルト様に加え、ローガン団長とカイ副団長の姿があった。


「エルリックか。あの雲を見たのだな」


ローガン団長が問いかける。


「強い穢れの気配を確認。スタンピード発生は確実」


「……だが、魔物は街へ向かわず、雲の方向へ移動中。異常」


エルリックさんの報告に、カイさんが険しい表情を浮かべる。


「……不可解です。スタンピード自体が稀だというのに……

通常は見境なく暴走し、すべてを破壊しながら土地を穢していく」


「それが今回は……まるで――」


――まるで、意志を持って動いているかのようだ。


その言葉に、室内の空気が静まり返る。


「……スタンピードの兆候は以前から確認していた」


レオンハルト様が静かに口を開く。


「ゆえに対策は講じている。見回りの強化、防壁付近への兵の増員も済ませた」


視線が一斉にレオンハルト様へと向く。


「だが、今回は異例な点が多すぎる」


一拍置き、続ける。


「可能性の話ではあるが――

何者かが裏で糸を引いている可能性もある」


その言葉に、わずかな動揺が走った。


「……あり得るのですか。

意思もなく、ただ穢れから生まれた魔物を操る存在など」


ローガン団長が疑問を返す。


「あくまで仮説だ。だが――」


レオンハルト様は目を細める。


「森の浅瀬まで現れていながら、街を襲わなかった点。

そして――」


「セラフィーネに、穢れを含んだ薬が渡されていた件だ」


その言葉に、空気が一気に張り詰める。


「その医師のもとへエルリックを向かわせたが……

すでに数ヶ月前に死亡していた」


「……では、これまで診察していた者は……」


カイさんの言葉に、レオンハルト様は静かに頷く。


「ああ。偽物であった可能性が高い」


「それらを踏まえれば、“何者かの存在”を疑うのが妥当だろう」


重苦しい沈黙が落ちる。


「だが、今はその正体を追うよりも先に――現状の対処が優先だ」


「異常行動に意図があるのならば、早期に叩く必要がある」


「騎士団は出動。冒険者ギルドにも要請をかける。

情報ギルド、商人ギルドにも協力を仰ぐ」


その決断に、誰も異を唱えなかった。


室内は、重い空気に包まれる。


……そんなに深刻だったなんて。


街で、何かできることを探そうとしていた。


けれど――


この状況を打開できるようなことなんて。

私に、できるのだろうか。


「恩猫様は、避難してくれ」


不意にそう声をかけられ、はっと顔を上げる。


レオンハルト様が、先ほどよりも柔らかな表情でこちらを見ていた。


「……あなたは、すでに十分すぎるほど尽くしてくれた」


「これ以上、無理をする必要はない」


「だから――安全な場所にいてほしい」


その言葉に、胸が揺れる。


……分かっている。

これは、優しさだ。


善意からの言葉だと、理解している。


それでも――


――私は、また何もできないのか。


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