37-善意の行き着く先
首を傾げる。
――今回は、仕分けしただけだよね……?
その様子に、マティアスさんが苦笑しながら口を開く。
「恩猫様。普通は、土魔法で植物を生み出すだけでも大したものなのですよ?
その上、それを自在に操り、ここまで細かな仕分けを行うなど……」
「……聞いたことがありません」
店の青年も、言葉を重ねる。
「確かに、植物を生み出せる魔術師はいます。ですが――
ここまで精密に扱える者など……」
……そうなの?
新たな事実に、思わず目を瞬かせる。
これまで訓練所で自己流の魔法運用を見せた際、驚かれていたのは分かっていた。
けれど、それは複数の属性を使っていたからだと思っていたのに――。
呆然とする私の耳に、周囲のざわめきが流れ込んでくる。
「あれが“奇跡”の一端ってやつか……?」
「お前、土属性だろ?あれ出来るか?」
「無理無理。むしろ教えてほしいくらいだ」
――その中で。
ひときわ異質な声が、確かに耳に届いた。
「……へぇ、なかなか面白いものが見れましたね。
ですが――次はありませんよ」
軽やかで、どこか冷ややかな声音。
「――もう、ここは無くなりますし」
思わず息を呑む。
決して大きな声ではない。
それなのに、その言葉だけが妙に鮮明に響いた。
周囲を見渡す。
けれど、それらしき人物の姿は見当たらない。
探しに行こうと一歩踏み出しかけた瞬間――
再び人だかりが生まれ、行く手を阻まれた。
「なぁ!猫様よ!
俺んとこでも困ってることがあってよ……助けてもらえねぇか?」
遠慮がちではあるが、期待を滲ませた声。
「……どうされますか、恩猫様」
マティアスさんが苦笑を浮かべる。
一人を助けたことで、次々と声が上がる。
断る理由も、見つからない。
――見て見ぬふりをするくらいなら。
助けられるのなら、その方がいい。
小さく息を吐き、覚悟を決めた。
――そして。
気づけば、いくつもの店を回り、魔法や能力で手助けをしていた。
結果として――
大量の手土産を抱えることになる。
それらを収納の能力にしまいながら帰路につくと、串焼きの女性が呆れたように笑った。
「猫様って、お人好しなのねぇ」
……否定できなかった。




