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盾にされた私、異世界ではただの猫です  作者: 蛇目菊 欲狐
第1章
42/72

36-騒ぎの後で、またひとつ

その後の街歩きは――

穏やかに進んだ、と言い切るには少し無理があった。


何気に、先程その場に残っていた人達が、一定の距離を保ちながら私たちの後をついてきているのだ。


串焼きの屋台でもそうだった。

もらった串を食べている間、周囲からの視線がずっと刺さっていた。


――なんだろう、この感じ。

前の世界でいう、動物園の動物になった気分だ。


「大人気だなぁ、恩猫様は!」


ガハハと笑うブラムさんに、思わずジト目を向ける。


まさか、あの一件がここまで広がっているとは思わなかった。

とはいえ、不幸中の幸いというべきか――悪い印象ではないらしい。


「あまり揶揄うな、ブラム。

恩猫様、お疲れでしたら休憩にしましょう」


マティアスさんの穏やかな気遣いに、少し救われる。


……とはいえ、この状況はもう受け入れるしかない。


たまたま物資を持っていただけで、実際に捌いたのはテオドールだ。

私は、ほとんど何もしていないのだけれど……。


「……なにか納得されていないご様子ですね?」


ふと、マティアスさんに声をかけられる。


――え。そんなに顔に出てた?


「あなたがどう思っていようと、周囲はそれだけ評価しているということです」


だからこそ、皆こうして近づきたがるのですよ。


まるで考えを読まれたように言葉を重ねられ、思わず言葉に詰まる。


……そう、なのかな。


出来ることをしただけ。

それだけなのに――


どうにも、腑に落ちない。


うーんと考え込みながら歩いていると――


「あちゃー、参ったな……」


通りがかった屋台から、困った声が聞こえてきた。


視線を向けると、若い男性が店先で木箱の中身と睨み合っている。


「お?お前、薬屋のばーさんとこの……」


ブラムさんが声をかける。


「ああ、ブラムさん!」


男性もすぐに気づき、親しげに応じた。


――ブラムさん、ほんと顔広いな……。


「ブラムは昔からよく街に来ていたそうですよ。

あちこち顔を出していたようで、知り合いが多いのです」


すごいですよね、とマティアスさんが説明してくれる。


――いや、あなたも相当ですよ?


先程から女性達の黄色い声が飛んでいるのに、全く気づいていないらしい。


……この人だかり、私だけが原因じゃないよね。


そんなことを思いながら、再び会話に意識を向ける。


「まじか、あの元気なばーさんが腰やったのか。珍しいな」


「そうなんですよ……。

今日は僕が代わりに店番なんですけど――」


男性は困ったように木箱を指差す。


「この通り、薬草も薬もごちゃ混ぜで……。

知識がないので、どれが何やらさっぱりで」


これじゃ営業できませんよ、と頭を抱える。


箱の中を覗くと、確かに様々な薬草や薬が無造作に詰め込まれていた。

札もあるが、もはや役に立っていない。


――これ、鑑定すれば分かるよね。


試しに鑑定してみると、やはり問題なく識別できる。


……ついでに、仕分けまでやってしまおうか。


ブラムさんの足元をちょんちょんとつつく。

気づいた彼に、木箱をぺしぺし叩いて視線で訴える。


「ん?どうした……って、まさか出来んのか?」


こくりと頷き、箱へと向き直る。


土魔法で蔦のようなものをいくつか生み出し、それらを器用に操って薬と薬草を仕分けていく。


――こういうの、前の世界でよくやってたな。


書類整理を思い出しながら、手際よく分類していく。


数分後。


最後に札を整えて前に並べ、仕分けを終えた。


――ちょっと時間かけすぎたかな。


でも、これで営業できるはず。


そう思って振り向くと――


三人が、揃って呆然としていた。


「……お前さん、またとんでもねぇことしたな」


ブラムさんの一言に、思わず首を傾げる。


……え?


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