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盾にされた私、異世界ではただの猫です  作者: 蛇目菊 欲狐
第1章
38/72

34-過保護と、秘密の境界線

後日。


セラフィーネ様は順調に回復し、今ではカトレアさんを伴って、屋敷の庭を散策される姿も見られるようになった。


カトレアさんもまた、専属治癒士としての役目を一度離れ、第1騎士団の任務へと復帰している。


そして――もう一つ。


私にも、変化があった。



「恩猫様。そろそろ休憩を」


訓練所。


騎士たちに魔法を教えていると、決まって声をかけられる。


以前なら、止められることなどなかったのに。


どうやら――


私がセラフィーネ様の治療後に倒れた件が、騎士団内で共有されてしまったらしい。


そのせいか、皆やたらと気を遣ってくる。


……ちょっと過保護じゃない?


そう思わなくもない。


けれど。


この中でも、群を抜いているのが――



「恩猫様、無理をなさっていませんか?」


ふわり、と身体が持ち上がる。


見上げると。


「やはり少しお疲れのように見えます」


セラフィーネ様だった。


……そう。


一番過保護なのは、この方だ。


私が訓練所に来ると、かなりの確率で顔を出される。


助けたから、という理由にしては――


ちょっと、度が過ぎてない……?


じっと見つめていると、くすりと笑われた。


「不思議そうなお顔ですね、恩猫様」


「ですが、また倒れられては……この場が大騒ぎになりますよ?」


ーーうっ。


それは、確かに。


ここにいる人たちは、私のことを――


ただの猫ではなく、仲間として扱ってくれている。


だからこそ、倒れれば騒ぎになる。


そう思うと、少しだけ納得してしまった。


むぅ、と頬を膨らませる私に。


セラフィーネ様が、そっと声を潜める。


「……それに」


「使い過ぎれば、“隠しているもの”が解けてしまいますよ」



ぴたり、と動きが止まる。


……え?


ゆっくり顔を上げる。


…それは――。


思考が追いつかない。


まさか。


見えて、いたの?


人の姿。


隠していたはずの、それが。


ちゃんと維持してたはずなのに……。


魔法を重ねすぎたことで、干渉が起きた?


思考が追いつかない。


動揺がそのまま顔に出ていたのだろう。


セラフィーネ様は、安心させるように、優しく撫でながら言った。


「大丈夫です」


「見えているのは、私だけです」


「それも――治療の時に、ほんのわずか。輪郭が、揺らいで見えた程度」


穏やかな微笑み。


……良かった。


胸を撫で下ろす。


もし他の人に見られていたら。


今の関係も、この居場所も――


崩れていたかもしれない。



「……怖がらなくても、皆受け入れると思いますが」


ぽつり、と小さな声。


ーーえ?今なんて…?


そう思って見つめるも、セラフィーネ様はただ曖昧に微笑むだけだった。



……でも。


やっぱり、気をつけないと。


魔法の“使い過ぎ”なんて感覚、正直よく分からない。


どうしよう……。


半日で区切る?


でも、そうすると残りの時間は――



「恩猫様」


不意に、別の声が割り込む。


「訓練所ばかりでは、飽きてしまわれるでしょう」


カトレアさんだった。


「たまには街へ出られてはいかがですか?」


……街。


そういえば。


最初に案内されて以来、ほとんど行っていない。


訓練所にばかり通っていたけれど――


ーー気分転換には、ちょうどいいかも。


魔法の使い過ぎも防げるし。


……よし。


今日は午後から、街に行ってみよう。


そう決めた瞬間。


少しだけ、心が弾んだ。


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