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盾にされた私、異世界ではただの猫です  作者: 蛇目菊 欲狐
第1章
34/72

30-穢れを孕む薬

「……穢れ?治療薬に、穢れ?

そんなものが……なぜ、入っているのですか……?」


テオドールが、信じきれないものを見るように呟く。


「……分かりません。ですが、あれは間違いなく穢れです。

魔物、あるいはその発生地帯にしか存在しないはずのもの……ですが……」


そこまで言いかけて。


カトレアさんの表情が、凍りついた。


「……まさか……」


かすれた声。


「今まで私は……敬愛するセラフィーネ様に……

穢れを……飲ませていた……?」


――私たちが。


――セラフィーネ様を、殺しかけていた……?


呆然と、小瓶を見つめる。


手は震え、力なく揺れていた。


気づけなかったとはいえ、

大切な人に“毒”を与え続けていた事実。


その衝撃は、あまりにも重い。


テオドールもまた、言葉を失っていた。



「……わ、私は執事長を呼んでまいります!」


薬を運んできた使用人が、弾かれたように部屋を出ていく。


報告に向かったのだろう。


……判断が早い。


思考の片隅でそう評価しながら、私は現状へ意識を戻す。


二人は、完全に思考が止まっている。


ならばまず、この危険な薬を――。


私はそれを収納へと仕舞う。


これで、ひとまず外的な脅威は排除できた。


だが――問題は。


……セラフィーネさん。


今の状態だとあの薬が、“近づくだけで”反応するだろう。


穢れは穢れを引き寄せ、取り込もうとする性質がある。


そしてそれはやがて、形を持つ。


――魔物として。


体内の穢れが刺激されれば、当然、負荷がかかる。


むしろ――


もう、始まっている……?



「うぅ……っ、ああ……」


掠れた呻き声。


「!セラフィーネ様!」

「母上!!」


その一声で、二人の意識が引き戻される。


ベッドへ駆け寄る二人に続き、私も飛び乗る。


視る。


――やはり。


体内の穢れが、蠢いている。


静かに潜んでいたそれが、刺激を受けて活性化している。


全身を巡り、暴れ回るように。


だがそれは、二人には見えていない。


ただ苦しむ姿に、必死に声をかけることしかできない。



「……テオドール、カトレア。私は……大丈夫よ」


薄く目を開け、セラフィーネさんが微笑む。


額には汗が滲んでいた。


痛みは、相当なはずだ。


それでもなお、気丈に振る舞う。


二人を安心させようとする、その姿。


……なんて


言葉にならない。


激痛の中でなお、誰かを思いやる。


その強さ。


その優しさ。


……なんて、高潔な方なのだろう


思わず、見入ってしまう。



……私の知る“親”とは、まるで違う。


こんなにも。


愛情とは、こんなにも――温かいものだったのか。


脳裏に、前の世界の記憶が過る。


優秀な兄姉。


称賛される存在。


――そして、私。


何も与えられなかった側。


……もし、私が有能だったなら


一瞬、そんな考えがよぎる。


だが。


……今は、違う


振り払う。


そんなことを考えている場合ではない。


助ける方法を、考えろ


視線を、再びセラフィーネ様へ。


思考を切り替える。


今、やるべきことは――ただ一つ。


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