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盾にされた私、異世界ではただの猫です  作者: 蛇目菊 欲狐
第1章
33/72

29-それは治療薬ではない

――鑑定。


治療薬


痛みを和らげ、体力の回復を促進する薬。

ポーションと併用することで、より高い効果を発揮する。


――だが。


【偽装:毒薬(穢れ)】

【使用者に“穢れ”を付与する】

【穢れは体内から蝕み、体力を奪い、全身に激痛をもたらす】

【光魔法と干渉した場合、攻撃性へと転化し、内側から肉体を破壊する】


――それを視認した瞬間。


私は、迷うことなくその薬を奪い取っていた。


こんなものを、飲ませてはいけない。

触れさせることすら、許容できない。


風魔法で引き寄せた小瓶。

そこから漂う、僅かな――だが確実な“異質”。


近づけば近づくほど、はっきりと分かる。


この穢れは、抑え込まれている。

自然に混ざったものではない。


――意図的に、仕込まれている。


……誰が


思考が冷えていく。


つまりこれは、

セラフィーネ様に対する――明確な害意。



「っ!?恩猫様!一体何を……!お返しください!!」


カトレアさんが手を伸ばす。


――パシッ。


反射的に、その手を弾いた。


爪は立てていない。

傷はつけていない、はずだ。


だが。


二人の目が、私を見る。


驚愕。

困惑。

そして――疑念。


……当然だ。


これは本来、治療薬。

それを奪う私は、どう見ても“異常”だ。


それでも。


――渡せない


二人の動きを牽制するように、間合いを保つ。



ふと、テオドールを見る。


その目に宿っていたのは――失望。


胸の奥で、何かが軋む。


……ああ、この目は。


前の世界でも、何度も向けられたものだ。


あの頃は、もう何も感じなくなっていた。


だが今は違う。


この人たちの温かさを知ってしまったから。


だからこそ――痛い。


それでも。


ーーだからこそ、渡さない。


私は、二人に向き直る。


張り詰めた空気。


ほんの数分のはずの時間が、やけに長く感じられた。



再びカトレアさんが動こうとした、その瞬間。


空気を断ち切るように、声が落ちる。


「……恩猫様を、信じる」


テオドールだった。


「待て、カトレア。手を出すな」


「ですが――!」


「いい。様子を見る」


視線が交わる。


先ほどの失望は消え、

そこには、静かな光が宿っていた。


「……恩猫様。その薬を遠ざける理由が、あるのですね?」


――信じて、くれた。


一度揺らいだはずの信頼を、

彼は自らの意志で、掴み直した。


……なんて、温かい。



私はゆっくりと警戒を解く。


風で浮かせた小瓶に、闇魔法で鎮静を施し――

さらに光魔法を、微細な雷のように流し込む。


同時に、ごく弱い浄化。


その瞬間。


それまで潜んでいた“何か”が、姿を現した。


――黒い煙。


ゆらりと揺れながら、空気を侵すように滲み出る。


「なぜ……どうして……」


カトレアさんの声が震える。


そして、絞り出すように叫んだ。


「なぜセラフィーネ様の治療薬から――

魔物の持つ“穢れ”が、発生しているのです……!?」


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