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 タイラさんとの間に何か気まずい空気を感じながら見詰め合っていると、ドアが開く音が聞こえた。


「なーんだー……どーしたー……。長距離明けなんだからもうちょっと寝かせてくれよー……」


 声がした方を見ると、ランニングシャツとトランクス一丁の……要するに下着姿の男性が立っていた。


 ~


 檜槍ひやり 鳩吉はときち


 種族:人

 職業:トラック運転手

 レベル:43

 運動性:92

 道路交通法遵守力:76

 視力:2.0

 おっさん力:31

 支払力:95


 スキル

 《大型魔動車2種ゴールド免許》

 《危険絶対回避》

 《視野拡大》

 《運転基礎能力向上》

 《疲労及びストレス耐性向上》

 《希望者誘引》


 ~


 免許はスキルに含まれますか?

 ……うん、含まれそうだ。


 スキルから見て取れる通り、非常に優秀なトラック運転手であることは間違いないことが分かる。

 なんでも、今の運送会社に入って以降、10年以上にわたって無事故無違反らしい。

 結構頻繁に人を轢きそうになるらしいが、一度も人身事故を起こしたことはないと言う。

 うーん、優秀だ。


 ところで、『希望者誘引』とあるが、何を希望している人たちを引き寄せているのだろうか。

 さっぱり分からない。


 あと、『おっさん力』ってのが、こないだ聞いた覚えのある彼の年齢と一致している。

 うちの住人の一人に誘われていった合コン的な場では25歳とか言ってた気がするが、どっちが正しいのか……深く考えるのはよそう。

 来年の今頃に見ればはっきりするだろう。

 いや、普通に聞けばいいと思うけど。


「あ、檜槍さん、おはようございます」

「おはようございます。お仕事お疲れ様です」


 俺に合わせてタイラさんが彼に向かって挨拶をする。

 檜槍さんには見えないように、くだんのビニール袋を後ろ手に隠すタイラさん。

 隠す勢いで袋の中のスルメが左右に揺れ動き、激しく自己主張してくる。


(ククク、冒涜的なる者の末裔の亡骸が我を誘っておるぞ。我が牙を持って引き千切り、力量の差を噛み締めてもらおうか。そして我も繰り返し噛み締めさせてもらうぞ。その方が貴様の味わいも深まるというものだ。クカカ)

「フェンちゃん、ダメだよ。あれはタイラさんのお酒のアテなんだから」


 そう小声で諭すと、今にもスルメに襲い掛かりそうだったフェンちゃんはキューンと鳴いて、耳をパタリと畳み、お座りの姿勢に戻る。


「おー、管理人さんとー……おっ、ヒーラーちゃーん。ヒラちゃんは今、帰りか? 君もお疲れ様だねぇ」

「いいえ~、檜槍さんほどじゃないですよ~。1日1回はおうちで寝れますから。あと、ヒラじゃなくてタイラですよ」

「あー、そう言われればそうだったかな? ははは」

「うふふ」


 住人同士の他愛の無い会話だ。

 ただ、片や年若い女性に見せて良いものではない格好で、片やその格好を見ても動じない人たちの会話だ。

 それはどうなんだろう、と思っているのは俺だけらしい。

 まぁ、檜槍さんはともかく、タイラさんは病院勤めで慣れてしまってるのだろう。

 2人とも大変だなぁ。


「まー、なんでもないなら寝なおそうかな。今回も全部避けられたから良かったけど、行き帰りで合わせて3人くらい飛び出してきて……ずっとヒヤヒヤしてて疲れたんだ……」

「大変だったんですねー。ゆっくり休んでくださいね。おやすみなさい」

「おう、おやすみ。ヒラちゃんも体を大事にな。管理人さんも、朝早くからご苦労さん」

「いえ、これが俺の仕事ですから」

「お前さんも大変だなぁ……。うん、よし、じゃあな」

「はい、お休みなさい」


 そう言いながら、扉を閉じて寝に戻る檜槍さん。


「さて、と。じゃあ、あたしも休みますね」

「はい、タイラさんもゆっくり休んでくださいね」

「ありがとうございます。管理人さんも、今日も1日ファイトですよ!」


 胸の前でギュッと両手の拳を握り締めて俺を応援してくれるタイラさん。

 スルメが踊る。


(ククク……)

「フェンちゃん、めっ」

(キューン……)

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