↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代ダンジョンは氷のようなエルフの銀髪幼女と共に  作者: 乙黒


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/45

予感

ダンジョン発生地点に似つかわしくないエルフのお姫様――ジルダは、片平弥生と共に消えた鵲露の背中を思い出すように迷宮の穴を見つめていた。

 ジルダが彼について行かなかったのは、ソフィーから止められたからだった。


「――姫様。これは露様の成長の為に必要なことです。片平様とともに迷宮に挑戦し、己を鍛え直すのです。そうなれば彼はより強くなれるでしょう」


 真剣なソフィーの言葉に、ジルダはコクリと頷いて従うしかなかった。

 それからジルダはずっと氷のように微動だにせず彼の消えた門を見ていた。そんな彼女を見守るように、戦闘装束であるゴスロリ服を着たソフィーも彼女の傍に鎮座していた。

 ソフィーも氷のように微動だにせずに、その場に待機している。多少瞬きはするものの、二人のエルフは動こうともしなかった。


 その光景をこれからダンジョンに突入する冒険者達は異様な目で見ていた。

 エルフの特徴は聞いている。彼らには人を遥かに超える寿命があり、その生き方は動物よりも植物に近い。用がなければ一日の大半をあまり動かず過ごし、食事も人と比べるとずっと少ない、と言われている。


 とはいえ、その生態を知っていたとしても、人のような見た目をしているからこそ、どうしても人の枠に当てはめてしまうのだ。

 だが、彼らは人とは違う。

 時間感覚が長いので、数日同じ体勢で過ごす者もいるような種族なのだ。


 だから彼らは人を待つのを長いと感じないのだが、何故だか小さなジルダは立ち上がった。

 ソフィーが眉を顰める。


「姫様、どうかなさいましたか?」


「……アワワのところに行く」


 ジルダは、平坦な声で言った。


「……姫様なら当然ご存知だと思いますが、ダンジョンの中は危険です。“魔力を使えない者”が行くところではありません」


 ソフィーは小さい子を叱るように言った。

 だが、聞いていた探索者の中で鋭い何人かが、その言葉を疑問に思った。魔力を持っていないエルフなどいないからだ。彼らは生まれた時から魔力を操るのが上手く、同じ幼少期でも人よりか遥かに魔法使いとして“上”だと言うのだ。

 現に世界でも有名な魔法使いは殆どがエルフだ。彼らの魔法の実力は、人々が数十年かけて鍛えた程度では殆ど超えられなかった。


「……知ってる」


「なら、どうしてですか?」


「……行かないほうが……危険だから」


「どういうことですか?」


「……ソフィー。これは……命令……私を、アワワのところまで連れて行って」


 ジルダは、氷のように冷たい声で言った。

 有無を言わさない命令だった。


「はあ、承知しました。そう言われれば、私は断れませんね」


 大きなため息を出して呆れているソフィーであったが、顔色はあまり変わらなかった。だが、その場でジルダへとソフィーは両膝をついて頭を下げた。まるで姫に仕える従者のように。

 ソフィーは、ジルダの命令を断れなかった。


「……そう」


 ジルダもそれを当然とばかりに受け止めていた。


「――なにあれ?」


 その光景も、やはり他の探索者は訝しげに見ていた。

 むしろ幼女に頭を下げるソフィーに、首を傾げている者も多かった。この場にいる探索者の殆どが魔法学校の学生なので、教師であるソフィーの姿も知っている。いつもクールビューティーな彼女に、このような騎士のような姿があるのかと驚いていたほどだった。


 だが、そんな凛々しいソフィーを見てうっとりとした目を向けている女性の探索者もいた。ソフィーが幼い姫に仕える騎士のように見えているのだろう。


 そんなソフィーはすぐに政府関係者に話を通し、自身がダンジョンに潜れるように調整した。


 危険しかないダンジョンに自分から入るのには、基本的に許可がいる。もしも勝手に入ったら犯罪行為となり、現代では訴えられることもあるようだ。このような仕組みになった理由としては、過去にこの国で無謀なインフルエンサーがダンジョンに入り多大な損害をもたらしたからである。それも善良な探索者が彼らを守るためにダンジョンに潜り、より被害をもたらしたこともあった。

 それ以来、許可を持たない者がダンジョンに入るのは、警察や探索者達が防ぐこととなった。また迷宮に潜る順番や頻度などのも、ダンジョン管理官が務めている。


 そんな二人は“正規の許可”をもらって、ダンジョンに潜れる算段がついた。ジルダのダンジョン探索の許可は、ソフィーが見の安全を保護することと“エルフへの教育の一環”という治外法権でゴリ押ししたようだ。


 本来ならダンジョンに潜ることすら許されないジルダは、ダンジョンに入ることに不安すら浮かべずに入口の“門”の前に立つ。

 先ほどと全く変わりはなかった。


「姫様、本当に行くとして、この先はレベル3のダンジョンですが、御身は大丈夫でしょうか」


「……大丈夫」


「分かりました。この先は誠に危険ですから、私から絶対に離れないで下さい」


「……分かった」


 多くの探索者が不可解な目で見つめられる中、ジルダはソフィーの後を追ってダンジョンへと入る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。