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すべての生きとし生けるモノ達へ  作者: みゃ~むら
オニカド編

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敵  sideアレン(part23)

「おいおい、あの巨大な腕で何する気だ……!?」


俺たちの頭上を押し潰さんばかりの勢いで、漆黒にも思える海水を纏った巨腕がズズ……と蠢きながら持ち上げられていく。

うねる荒波のただ中、振りかぶられた巨大な腕からは、まるで瀑布のようにボタボタと大小さまざまな海水の塊が落とし込まれ、激しい音を立てて甲板を叩いた。その水滴は、弾けて消えるどころか——


「う、動いてるんだけど……!?」


セシルが悲鳴にも似た声をあげる。

ウネウネと波打ち、まるで異様な生存本能に突き動かされるように甲板の上で集結を始めた。

もとより船上に取りついていた雑兵の魔人たちも、その禍々しい水塊に吸い寄せられるように群がり、次々と融合・肥大化を遂げていく。

みるみるうちに、俺たちの背丈を遥かに超える「中型の海の魔人」たちが何体も立ち上がった。

そいつらも、海から現れた巨大なヌシや先ほどまでの小型連中と風貌はそのままだった。だが一箇所だけ決定的に違うのは、その頭部に不出来で歪なツノが角質のように生え揃っている点だ。相変わらず虚無のような落ち窪んだ瞳をこちらに向け、じっと粘着質で不気味な視線を絡みつかせて離さない。

「チッ、際限がないな……!」

すぐさまフェリクセンが引き金を引き、重厚な銃声とともに数発の魔導弾が前発の中型種へ叩き込まれる。

だが、大きく穿たれた胴体の穴も束の間、まるで水面に波紋が消えていくかのように、瞬く間に何事もなかったかのように塞がっていった。

「……さっきの小型よりかは、やりごたえありそうだな」

「ちっとも嬉しくない!」

頭上からは、なおも不吉な雨のような海水が容赦なく降り注ぎ続けている。このまま手をこまねいていれば、あっという間にこの甲板全体が海の化け物どもで埋め尽くされてしまうだろう。

頭上には今にも振り下ろされようとする巨大な悪魔の手。正面には不気味に蠢く中型魔人の群れ。

どこから手をつけるべきか決めあぐね、息をのんで刃を構え直した——その瞬間だった。


大海のヌシの巨躯に、大空を切り裂く一閃の光芒が走った。

斜めに走り抜けた閃光。まるで鮮血が舞い散るかのように、切り口から大量の海水が宙に高く噴き出た。

『!?』

攻撃された巨躯本人はおろか、俺たちでさえその突如起きた光景に一瞬息をのんだ。

視界の端に捉えたのは、青白い人工魔素の粒子を煌めかせながら、荒れ狂う大空を縦横無尽に舞うエデンさんの姿だった。

「少し浅いか……」

上空からの予期せぬ一撃を受け、大型魔獣の体勢が大きく揺らぎ、振りかぶられていた巨腕の軌道が大きく逸れる。

俺たちはその刹那の隙を見逃さなかった。


「今です!」


切り込むセツナさんに合わせるように、俺たちも一斉に甲板を蹴った。

圧倒的な踏み込みと速度で敵陣へ跳ぶセツナさんに付いていくのは至難の業だが、必死でその背中に食らいつく。

中型の魔人たちも黙ってくくはくれない。そのボディを激しく震わせると、高圧の水のつぶてや、集束された水流によるレーザーのような照射光線を容赦なく放ってきた。

「くっ……!」

迫り来る水のレーザーを紙一重で滑り込みながらかわす。交わしきれない追撃の水爪やウォーターブレードに対しては、後方からフェリクセンが寸分違わぬ射撃で撃ち抜き、衝撃波で物理的に威力を相殺してくれた。

「助かった、フェリクセン!」

「前だけに集中しろ!」

俺とセシルは連携を組み、セツナさんが斬り進む背後を固め、斬り漏らした敵や瀕死で足掻く個体を確実に仕留めていく。セシルの鋭い槍捌きと俺の剣撃で翻弄し、確実にとどめを刺していく。集中しているセツナさんの邪魔はさせない。


当のセツナさんは、脇目も振らずに敵へと突き進んでいた。波紋が美しく光る太刀を上下左右へ変幻自在に操っている。力強い一振りを繰り出すたび、漆黒の水膜が切り裂かれ、咆哮すら上げさせずに中型種を屠っていく。長く束ねられた美しい黒髪が、荒れ狂う潮風と飛沫の中で激しく舞っていた。

一方、体勢を立て直しつつある大型のヌシだったが、その虚無の視線はもはや甲板の俺たちにはなく、上空で旋回するエデンさんへと完全に固定されていた。先ほど削ぎ落とした傷口も、じわじわと海水を引き寄せるようにして再生を始めている。

「想定よりもかなり頑丈だな。再生能力も目を見張るものがある。一撃で致命傷にまで持っていった方がいいか……」

上空で静止したエデンは、無機質な瞳で眼下の巨躯を見下ろした。目の前の未知の怪物に対しても、冷静に分析を続け、最善手を導き出そうとしている。

エデンは背部ブースターをさらに焚き上げた。キィィィンと高金属音が響き渡り、手に握る身の丈ほどの巨大な機械剣へと膨大なエネルギーが流れていく。半透明の刃身が、目も眩むような青白色の発光を放ち始めた。ブゥン、と重厚な駆動音が重く揺れる空間を震わせる。

彼女にとっては久方ぶりの戦闘。

「鬼島への肩慣らしにはちょうどいい」

その高エネルギー反応を危険視したのか、大型の魔獣が脈絡もなく海面から膨大な石と海水の礫を巻き上げ、エデンめがけて一斉に射出した。

360度、全方位から逃げ場なく迫り来る弾幕。

だが、エデンはその端正な鉄面皮の表情を一切崩さなかった。

「悪いな。それは私には当たらんぞ」

高速で飛来する数多の攻撃に対し、内部システムで即座に冷徹な弾道シミュレーションを実行。

瞬時に最適軌道を算出すると、バーニアを強烈に噴射させ、重力を無視したような機動で縦横無尽に空を駆け抜けていく。

ドバババババッ!と、エデンが先ほどまでいた空間を巨大な礫が次々に通り抜けていく。

あの苛烈な弾幕をすべて上空で引きつけてくれているだけでも、心底ありがたかった。

エデンの目的は最初からこれなのだろう。自分が標的となることで、船体や俺たちへの被害を最小限に抑えている。

それにしても、エデンの空中での体捌きは見事というほかなかった。青白い閃光の尾を引いて空を切り裂き、襲い来る攻撃を紙一重ですべて回避していく。時には最良の軌道を描いて機械剣を一閃させ、正面から迫る礫ごと一刀両断してみせた。黒いコートをはためかせながら、時に生き物の様に有機的に、時に機械の様に直線的に立体軌道を描いて見せていた。


どれほど攻撃を重ねてもかすりもしない状況に、痺れを切らしたのだろう。

海の怪物は、その虚無だった瞳を激しい怒りの色へと染め上げた。咆哮なき圧迫感が海面を揺らし、巨大な腕を今度は横薙ぎにしようと大きく身体を逸らすように振りかぶる。

先ほどよりも躊躇のない、船ごと薙ぎ払わんとする渾身の一撃。

エデンにとって、その直線的で大振りな攻撃をかわすことなど造作もないことだった。

機動シミュレーションはすでに完了し、回避運動に入ろうとした——次の瞬間。

その横薙ぎに繰り出された巨大な腕は、エデンの元へ届くことはなかった。

ズバッ——!!

エデンが回避行動を起こすより早く、空中であかい一筋の太い剣戟が奔ったかと思うと、巨大な腕は肩口からスパッと切断されていた。

意思を失った莫大な海水の腕が、空中で自重に耐えかねて弾け飛び、大量の水塊となって海面へと豪快に叩きつけられていく。

予想外の事態に、大型の魔獣すらも硬直したようにその「切断面」を見つめていた——。

どうも&初めまして。

みゃ~むら、です。

お読み頂きありがとうございます。

感想、レビューお待ちしております。


めめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめ

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