表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
すべての生きとし生けるもの達へ  作者: みゃ~むら
オニカド編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/34

未来への布石 sideアレン(Part2)

「どうされたのですか、会議の方は?」


いの一番に淀みのない鋭い声を発したのは、ブリジットであった。

俺たちは弾かれたように慌てて姿勢を正し、部屋の入り口に並んでお偉方三名を迎え入れる。

アルバニア卿は、まるですべてが予定通りであると言わんばかりの落ち着き払った様子で足を進めた。

続いて、沈痛な面持ちを隠せないルクレチアと、険しい眼光を湛えたオズウェル卿が部屋に足を踏み入れる。


アルバニア卿は堂々とした足取りで中央へ進むと、先ほどまで俺――アレンが暇を持て余して座っていたソファへ、優雅な動作で腰を下ろした。ブリジットも後を追うように対面へ座り、橙色の髪を指先で軽く弾いて居住まいを正す。


「ああ、突然邪魔をしてすまない。一旦議会は休憩ということになってね」


アルバニア卿は微笑むが、その瞳の奥は一寸の隙もなく周囲を観察している。

(休憩中にわざわざ、兵士の待機室であるここへ来る理由はなんだ……?)

俺が内心で抱いた疑問を代弁するように、ブリジットが短く切り出した。


「それで、ご用件というのは? わざわざ我々を慰労しにきた、というわけでもないでしょう」


ブリジットの厳しい視線に、アルバニア卿はくすりと喉を鳴らした。アイスブレイクなど微塵もなく、早々と本題に移ろうとする彼女の容赦のない態度に、軍部司令としての面影を見る。


そんな二人の鋭いやり取りの成り行きを見守るように見つめていた。その時、ふと、ルクレチアと目が合った。

彼女は私に気づくと、にこっと、まるで花が綻ぶような愛らしい笑みを向けてくれた。けれど、その美しい瞳の奥には、隠しきれない何処か不服そうな色が混じっている。

先ほどまでの激しい議会において、彼女の抱く気高い理想が「現実」という名の濁流に揉まれ、削られていたのだろう。言葉はなくとも、その一瞬の表情だけで、彼女が今どれほど悔しい思いを抱えているかが痛いほど伝わってきた。


視界の端では、セシルがウキウキで準備していた最高級の紅茶を、急遽、来賓用のカップへと注ぎ分けていた。ピピもまた、その隣でお菓子のトレイを整えて手伝っている。


「いや、実は火急の案件で、ブリジット殿にお願いしたいことがあってね。警備の兵士たちの中から、機械国<デウステクス>に向かえる人材はいるかな?」


『――ッ!?』


部屋にいた俺たち一同に衝撃が走った。


「デウステクスにですか? それは、一体どういった……」


ブリジットも思わず眉を顰める。


「可能ではありますが、その目的はなんでしょうか? 議会の最中に、人員を割く理由をお聞かせ願いたいですね」

「順を追って説明しよう。先ほどの議会で、我々はデウステクスに続いて、鬼族<オニカド>とも同盟を締結することを決定した」

「ほう、それは……」


足を組み直したブリジットは、それで合点がいったようだ。彼女の脳内では、すでに派遣可能な人員のリストが目まぐるしく更新されているように見えた。

代わって、オズウェル卿が重厚な声を引き継ぐ。


「我々は、デウステクスを訪れているオニカドの代表者に連絡を取った。同盟を組むにあたっての条件は、これから詰めねばならん。……その間に、彼女をここヒューメブルグまで連れてきてほしいのだ」

「つまり、早急に同盟の調印式をこちらで執り行いたい、ということですね」


ブリジットの言葉に、アルバニア卿が満足げに頷く。彼らの狙いを、ブリジットは完全に把握したようだ。


「流石はその若さで司令を任されているだけはある。その通りだ。議会の最終日までにオニカドの代表をここまで送り届け、そのまま調印式に持ち込みたい。ついでを言えば、同行しているデウステクスの代表も招くことになるかな」

「急ぎたいのは我々ではなくオニカド側だ。どうやらあちらの状況は芳しくないようでな」


オズウェル卿の補足に、ブリジットが頷く。


「全容は理解しました。……しかし、オニカドの代表もずっと機械国<デウステクス>に滞在しているわけではありませんね?」

「ああ、私の治めるセレスティアまでは来てくれる予定だ。もし可能なら、セシルを同行させるのがベターだろう。彼女は我が領に仕える兵士の中でも、随一の腕前だよ」


「へぇっ!? そ、それほどでもありませんよぉ……っ!」


不意に名指しで褒められ、紅茶を運ぼうとしていたセシルが顔を真っ赤にして照れる。

そんな状態でも、彼女の手際は流石だった。来賓を前にしても緊張を見せることもなく、完璧な所作でローテーブルに紅茶を置き、反対側からはピピがお菓子を並べていく。セシルは士官学校を卒業後、完全に自らの実力だけで、先進的なアルバニア家に仕える地位を勝ち取ったのだ。


それにセレスティアとは、隣国である機械国<デウステクス>とのほぼ中間に位置し、人間領内で最も機械国と交易をおこなっている水と文明の都市だ。なんでも機械文明を積極的に取り入れ、機械国との間に汽車が繋がる予定もあるのだとか。


「ヒューメブルグからセレスティアまでは馬車でだいたい1日。セレスティアの私の家にはすでに話を通してある。宿に関しても、我が家の空き室を使えば問題なかろう。今回の議会の一件を考えれば、宿を探す時間すらもったいないからね。……まぁ、何事もなければ、たった二日の小旅行だと思って気楽に構えてくれていい」


淡々と、しかし確実に様々な問題点をクリアしていくアルバニア卿の仕事の速さには、内心で感心せざるを得なかった。


しかし、本人は「小旅行」などと言うが、その行程はほぼ休みのない移動の連続だ。

その上、帰りには機械国と鬼国という、二つの国の代表者を同時に連れて戻らなければならない。気の休まる時間など一瞬たりともないだろう。この任務に直接駆り出される奴は、完全に貧乏くじを引かされたようなものだ。

――ま、俺には関係のない話だが。俺はあくまで、ルクレチアの護衛としてここに付いてきているだけなのだから。


「いや、実は――ちょうどここに、腕に関しては申し分ないメンツが揃っていましてね。彼らにお願いしようかと思うのだが、いかがかな?」

「「「「!? 」」」」


ブリジットが不敵に笑い、俺たち四人を親指で指し示した。

――は? 今、こいつなんて言った?


「ほう……此処にいる者たちが、か……?」


オズウェル卿が、値踏みするように俺たちをじろりと見回した。その射すような鋭い眼光は、まるでこちらの肉体の芯まで完全に透かし見ようとするかのようだ。

全身の毛羽立つような緊張感の中、俺は跳ね上がりそうになる焦りを必死に押し殺した。ここで動揺を見せるわけにはいかない。表情を鉄の仮面で覆い隠すように何とかこらえ、ただの無害な護衛としての真剣な面持ちを、辛うじて持ちこたえた。


「ええ、偶然警備の休憩中だったのですが、士官学校では私のしごきに耐えた優秀な元教え子たちです。卒業後も各所で活躍していると耳にしています」


不敵に笑うブリジットに、アルバニア卿は顎に手を当てて考え込む。

(……なんか、ただ偶然居合わせただけで、とんでもない面倒ごとに巻き込まれてないか、これ)

助けを求めてルクレチアに視線を向けるが、彼女は困ったように軽く笑い、ただ頷き返してくるだけだった。


「ルクレチア殿はいかがかな。アレン君とピピをお借りしても?」


今のアイコンタクトに気付いたのか、アルバニア卿がルクレチアにも話を振る。


「はい、私としては異論ありません。二人は確かに護衛として連れてきてはいますが、彼にとっても新たな刺激が必要ではないかと思います。ピピもデウステクスから出向してくれている身ですから、他の街を見てみる良い機会でしょう。二人の腕前は、私が保証いたします」


突然の問いかけに対しても、毅然とした態度を崩さずに話し合いに賛同してみせるルクレチア。

(……まぁ、彼女の立場なら、俺が同じでもそう言うだろうな)

領主としての彼女の判断に、俺は内心で小さくため息をつきながらも納得するしかなかった。

「(^-°)」


ピピがモニターに嬉しそうな表情を浮かべる。久しぶりの生まれ故郷に行けるのが嬉しいのだろう。


「それに、現在は我が首都防衛隊長の一人であるフェリクセンに、この小隊の長を務めさせましょう。幸い、会議中につき各領地から兵が集っています。警備の穴に関しては、すべて私の方で調整を済ませます」


その名を呼ばれた瞬間、フェリクセンは音もなく再度、完璧な敬礼を行った。その隙のない直立不動の佇まいからは、普段の彼が見せるふざけた空気など一ミリたりとも感じられない。完全に、一国の防衛を担う軍人としての顔だった。


「そうか。なれば司令殿の判断に任せよう。だが今日はもう夕暮れだ。出立は明日の朝がよかろう。……今日はゆっくりと英気を養いたまえ」


オズウェル卿はすっと立ち上がり、部屋を後にした。それに続くようにアルバニア卿とルクレチアも、それぞれの思惑を抱えたまま退室していく。

扉が閉まった瞬間、部屋の空気が一気に重くなった。


「と、言うことだ、お前たち。腕は鈍っていないな? 領主たちからの直々の勅命だぞ」


怪しげに嗤うブリジットを前に、俺たち四人は、ただただ震え上がるばかりだった。


--------------------------------


「なんて一日だ……」


無事に一日目の議会が終わり、首都ヒューメブルグの小高い丘に立つルクレチア家の別荘で、アレンは身体を休めていた。

そこまで大きくはない二階建ての屋敷だが、部屋数が絞られている分、一つ一つの空間は贅沢なほどに広い。庭園には色とりどりの花々が咲き誇り、夜の静寂の中で淡い庭園灯に照らされたその姿は、昼間よりも一層、幻想的で可憐な美しさを放っていた。


一兵卒には分不相応なほど豪華な部屋。天蓋付きの大きなベッドに、街を一望できる広々としたバルコニー。

あの後、ブリジットによる「特別訓練」と称した鬼のようなしごきを経て、即席小隊による決起集会を街の酒場で行った。ブリジットが気を利かせてルクレチアたちの会合の警備を代わってくれたおかげで、懐かしい級友たちと濃密な時間を過ごすことができた。身体の節々は悲鳴を上げているが、心に満ちた充足感はそれを忘れさせるほどで、独り部屋に戻った今も、自然と口角が緩む。


時計の針は、すでに夜の十一時を回ろうとしていた。

明朝七時の出立に向け、武器の点検も装備の準備も万端だ。アレンはバルコニーの手すりに肘をつき、眼下に広がる首都の夜景を見つめながら物思いにふけっていた。


その時、背後の扉からコンコンと控えめなノックが響いた。

「どうぞー」


夜更けの来客を不思議に思いつつ入室を許可する。夜食を運んできたメイドだろうか。そう思って振り返ったアレンは、そこに立つ人物を見て息を呑んだ。


「ル、ルクレチア……様?」

「ふふ、まだ起きていたのね」


驚くアレンを、彼女は柔らかな微笑みで迎えた。

「え、まだ会合が続いていたはずじゃ……」

本来ならば自分が護衛として帯同するはずだった予定を脳内でなぞる。しかし彼女は、そんな多忙なスケジュールなど最初からなかったかのように、軽やかな足取りで部屋へ入ってきた。


「少しわがままを言って、早めに切り上げさせてもらったの。明日の朝は早いのでしょう? 私は朝が弱いから、今のうちに少しだけ話したいなって思って」


口元に手を当てて悪戯っぽく笑う彼女は、重責を担う領主の顔を脱ぎ捨て、年相応の一人の女性に見えた。彼女は二十二歳。アレンとはわずか四つしか違わない。

それなのに、平和の象徴たる領地「ピーステラ」を治め、種族の融和という茨の道を歩んでいる。その双肩にかかるプレッシャーは、一介の兵士であるアレンには想像もつかないほど重いものに違いなかった。


「そうだったのですね……。あなたが大変なのに、気を使わせて申し訳ない」

「ううん、私が話したかっただけだから、気にしないで。……あといまは二人きり。誰も聞いていないわ」

「……わかったよ、ルクレチア」


主従の礼儀を脱ぎ捨て、幼い頃からのように名前を呼ぶ。アレンにとって彼女は、士官学校で泥にまみれていた頃からの旧知の仲だ。二人の距離が、夜の静寂によって物理的にも心理的にも縮まっていく。

アレンは近くのワゴンに置かれたガラスのデキャンタから、彼女が好むリンゴのジュースをグラスに注ぎ、そっと手渡した。


「ありがとう。あなたのそういう細やかなところ……好きよ?」

「……からかわないでくれ」


さらりと告げられた言葉に、アレンは顔が熱くなるのを感じて視線を逸らした。彼女はくすくすとまたもやいたずらに笑う。

ルクレチアは手にしたグラスの縁を指でなぞりながら、一口、琥珀色の液体を喉に滑らせる。月光が彼女の横顔を白く照らし、その瞳には一瞬だけ、深い孤独がよぎったように見えた。


「あー……えっと、何か話したいことって?」


沈黙に耐えかねて絞り出したアレンの言葉に、ルクレチアは静かに言葉を紡ぐ。


「話ってほどじゃないかもしれないけれど……。いろいろと、吐き出したい気分だったの」

「なんだよ、それ」

「今日の私は、まるで無力だったわ。特にオズウェル様とアルバニア様の議会の進め方には、ただ見ていることしかできなかった……」


ぽつり、とルクレチアが弱音を漏らした。

昼間のあの気丈な態度は、やはり彼女なりの精一杯の背伸びだったのだ。周りの老獪な重鎮たちに舐められないよう、あの若さで必死に虚勢を張っていたのだろう。

普段のきらびやかなオーラは鳴りを潜め、いま目の前にいる彼女は、ただ自分の小ささに傷ついている等身大の女性のようだった。


「そればっかりは仕方ないだろう? その二人は特に議会で力を持つ双璧だ。これはただ権力があるっていう話じゃない。絶対的な実績が伴っているからこそ、相応の権力がついているんだから」

「それはわかっているわ。私もまだまだだってことを痛感したしね。……和平は遠いわ」


「遠くはないだろう?」


アレンは首を振った。


「今回、どんな流れでオニカドと同盟を組むことになったのかはサラッと聞いたけど、これって決して悪いことじゃないとは思うんだ」

「……あなたの言いたいことはわかるわ。けれど、そう上手くいくかしら? 機械国『デウステクス』との同盟は、元からは文化交流がメインで、軍事支援は後付けよ。でも、今回はまるっきり状況が違うわ。完全に戦うための同盟だもの」

「戦闘行為が終了したのちに、恒久的な和平を条項に組み込めないのか?」

「どうでしょうね……今回の相手は、元々鎖国をしていたオニカドだから簡単にはいかないでしょう。……でも、最後まで足掻いては見せるけど」


「どちらにせよ、考えなければならないことは山積みね……」

「おいおい、まだ一日目が終わったばかりだ。まだまだ先は長いんだから、あまり最初から考えすぎない方がいいんじゃないか?」

「ふふ……それもそうね」


アレンの気遣うような言葉に、ルクレチアは張り詰めていた肩の力を少しだけ抜き、小さく苦笑した。

だが、その後に続いた、ふうっ、と深い溜息を吐く彼女の横顔には、やはりどこか哀愁が漂っている。


「……明日、出発なのね」


夜風に髪をなびかせながら呟いた。その声音には、アレンが感じ取った通り、隠しきれない寂しさが滲んでいた。あの場では賛同する意思を見せたが、やはりアレンやピピが側から離れることは、内心では不服だったらしい。


「別に戦地に行くわけじゃない。来賓を迎えに行くだけだ」

「そうだけど、やっぱり不安…。これって、過保護かしら?」

「まぁ……俺ももう、それなりに修羅場をくぐってきた兵士のつもりだし」

「ふふ、私にとっては、あの頃の泣き虫なあなたのままなのだけどね」

「何年前の話だよ……」


アレンは天を仰いだ。あの時と変わらない夜空の煌めき。

絶望に打ちひしがれていた九年前。大泣きしていた幼い自分を、彼女は優しく抱きしめてくれた。

人前であんな風に泣いたのは、後にも先にもあの時だけだった。

だが、たった一回きりのその姿が、彼女にとっては今でも愛おしい記憶として心に残り続けているのだろう。


「確かに、あなたは強くなったわ。ずっと頑張っていたものね」


ルクレチアの視線が、アレンの逞しくなった肩や、剣を握り続けて硬くなった手に注がれる。


「それは……君を守るためでもあるから」

「……本当にそう言いきれる? 今だって、私は怖いのよ。あなたには少なからず、魔人に恨みがあるでしょう? だから……」


彼女が何を言おうとしているのか、アレンには分かった。過去の因縁が、今回の「融和」のための任務で牙を剥くのではないか。彼女はそれを恐れているのだ。


「ルクレチア」


アレンは彼女の正面に立ち、その華奢な両肩をしっかりと掴んだ。グラスを置いた彼女が、驚いたように目を見開く。


「俺はもう、君のために戦うって九年前に誓ったんだ。君が平和を、この大地の安寧を望むなら、俺はそのために全力を尽くす。これは兵士としての責務なんかじゃない。君の掲げる理想に、俺が心の底から賛同しているからなんだ」


真っ直ぐに彼女の瞳を射抜くアレンの言葉に、ルクレチアは唇を震わせ、やがて今日一番の、嘘偽りのない柔らかな微笑みを浮かべた。


九年前、このヒューメブルグの士官学校へ留学していた時。

故郷を失いすべてを失った自分を、温かく迎え入れてくれたのは彼女とウォーカー家だった。そればかりか、自分を養子として家族にまで迎え入れてくれた。その恩に対する感謝はもちろんある。だが、今の原動力はそれだけではない。


「確かに、各地で侵攻を続ける魔人や、それを狩る正体不明の勢力、連鎖するように起きる国家間戦争……。世界の情報は決して良くはないかもしれない。だけど、俺たちが歩む世界の延長線上に、君が望む平和があると信じてる。今回のオニカドとの同盟だって、今は軍事面での役割が大多数を占めるかもしれない。でも、もしこの大陸各地の戦争を終わらせることができれば、この同盟は和平への大きな第一歩になるはずだ」

「アレン……。そうね、私も負けていられないな」

「俺は俺にできる戦いをする。だから、君も負けないでほしい」


アレンが頼もしく笑ってみせると、ルクレチアは少し眩しそうに目を細めた。


「相変わらず前向きなのね」

「それは、ルクレチアから学んだことだよ」

「え?」

「どんなに濁流に揉まれても理想を捨てない君がいたから、俺は前を向けるんだ。……だから、安心して行ってくるよ」


そう告げると、ルクレチアは今度こそ完全に安心したように「ええ、信じて待っているわ」と微笑んだ。夜風が二人の間を吹き抜け、夜は静かに更けていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ