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すべての生きとし生けるもの達へ  作者: みゃ~むら
オニカド編

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6/35

それぞれの交錯 sideアレン(Part1)

高原の澄み渡る空気を震わせ、荘厳な鐘楼の音が街中に鳴り響く。

その音色を反射する白亜の城壁と、幾重にも連なる白レンガの街並みは、まるで宝石箱をひっくり返したかのように、白銀の陽光を浴びて眩しく光り輝いていた。


人間領の心臓部、首都ヒューメブルグ。

ここは大陸一の人口を誇る巨大都市であり、その広大さと繁栄ぶりは、他の種族の国々を圧倒するほどの威容を誇っている。


壮大な城門を抜けた旅人を迎えるのは、溢れんばかりの光と、絶えることのない活気だ。

広々とした大通りは、商人や買い物客、そして冒険者たちの熱気で埋め尽くされている。

マーケットの入り口では、筋骨隆々の鍛冶師が、自慢の打ち出し銀細工を太陽にかざして客を呼び込み、その横を、軽やかな足取りの薬草師が珍しいハーブの香りを漂わせながら通り過ぎていく。

道端では、子供たちが陽気な吟遊詩人の竪琴に合わせて追いかけっこを繰り広げ、それを見守る大人たちの笑い声が、街の喧騒に幾重にも重なっていく。人の営みは、この等しく降り注ぐ陽光の下で、平和という名の安らぎを享受していた。


石畳の上では、機械国<デウステクス>から仕入れたばかりの最新鋭の四輪車が、磨き上げられた車体を輝かせて優雅に走り去る。対照的に、色とりどりの季節の花で飾られた馬車も並走し、蹄の乾いた音と車輪が立てるリズムが、都市の鼓動となって響き渡る。

レストランのテラス席からは、香ばしい焼きたてのパンとハーブティーの芳醇な香りが漂い、愛し合う者たちが手を取り合い、あるいは読書に耽る者が木漏れ日の中で贅沢な静寂を謳歌している。


また、街を行き交うのは人間だけではない。

ふさふさとした毛並みを持つ獣人族が特産の野菜を並べ、機械族のブリキが精緻な機械仕掛けの雑貨を露店に並べている。世界の情勢は決して芳しくはないが、このように他種族との交易が盛んに行われていることこそ、この国の懐の深さと寛容さを象徴していた。

だが、そんな荘厳さと喧騒を兼ね備える街中であっても、巡回する兵士たちの面持ちだけは、何処か鋭い緊張を孕んでいた。


大通りの突き当たり、ヒューメブルグの心臓部にそびえ立つのは、比類なき壮麗さを誇るヒューメブルグ城だ。

城へと続く広場は、まさに光の通路。

両脇に立つ50メートル級の英雄石像は、白銀の陽光をその身に浴び、訪れる者を分け隔てなく迎え入れてくれる。その足元では、巨大な噴水の水飛沫が虹を描き、子供たちの無邪気なはしゃぎ声がどこまでも高く反響していた。


階段を登り、規律正しく並ぶ巨大な円柱を抜けた先。

人の何十倍もの高さを誇る天井からは、ステンドグラスを通した七色の「光の雨」が降り注いでいる。

並べられた木製の長椅子では、多くの人々が静かに祈りを捧げ、修道士やシスターたちがその声に耳を傾けていた。神への信仰は人々に安寧を与え、今日もどこかで見守られているという確信が、彼らの心の支えとなっているのだ。


そんな人々の祈りとは裏腹に、城の上層部、8階で行われている定例議会では、街の喧騒とは対極にある、重々しく、張り詰めた時間が過ぎていた。

円形のテーブルを囲むのは、10余名の為政者たち。各地域を統治する代表者が集い、今後の政治を議論するこの議会は、一年に一回行われ、約7日間にも及ぶ長丁場だ。


「――以上の通り、今年の農作物の確保は予定通り順調に進んでおります。来月には、早くも次期作の準備を開始できる見込みです」

食料確保を一手に担う小太りの出席者が、淡々と、しかしどこか誇らしげに説明する。9年前から始まった魔人の侵攻に怯えていた頃は、ストレスで見る影もなく痩せ細っていた彼だが、最近の停滞した戦況は、彼にかつての豊かな体型を取り戻させていた。

「ふむ、報告に感謝する。なれば次は、軍事担当の私から進めさせてもらおう」


その声が響いた瞬間、議場に漂っていた微かな私語が止んだ。

白髭を長く伸ばした細身の老男、オズウェル・アイゼンガルド卿がゆっくりと自慢の髭を撫で、場を静寂で支配する。何十年も前からこの議会に参加し、幾多の動乱を潜り抜けてきたこの国の重鎮。その眼光は、老いてなお鋭い。


「諸君も知っての通り、現在、魔人の侵攻は停滞気味だ。国境付近での小競り合いこそ続いているが、大規模な戦はこの数年起きておらん。情報通り、奴らは他国への侵攻も並行して開始しており、こちらに割く戦力を分散させていると推測できよう」


オズウェルは一度言葉を切り、卓上の地図に指を置いた。


「だが、油断は禁物だ。最前線の要衝であるヴァリアントでは機械国『デウステクス』と協力体制を敷き、有事に備えて軍備と警備を大幅に強化していく方針だ。なにか異存はあるかね」


重々しい問いかけが議場を巡る。沈黙が続くかと思われたその時、凛とした透明感のある声が投げ返された。


「軍事拡張より、やはり今は和平交渉を最優先に進めるべきではありませんか?」


真っ直ぐにオズウェルを見据えていたのは、一人の若き女性であった。

陽光を溶かし込んだような金髪に、冬の湖のように青く澄んだ瞳。白を基調とした隙のない正装は、彼女の気品と、揺るぎない覚悟を何よりも雄弁に物語っている。


その左胸の箇所には、代々受け継がれる紺碧のブローチが付けられていた。

深い結晶の奥底、極細の金細工で縁取られて静かに咲き誇るのは、青い「アイリス」の家紋である。信頼と希望、そして異なる種族が混ざり合い、手を取り合うことで世界に美しい虹を架けるという、融和への不変の祈りがその一輪に込められていた。


ルクレチア・ウォーカー。

オズウェル卿が放つ圧倒的な威圧感に一歩も引くことなく、代々融和政策を重んじ、対話による解決を説き続けるウォーカー家の若き当主である。


「あの九年前から始まった凄惨な侵攻を止め、真の平和を実現するには、やはり対話しかありません。いつ襲われるかわからない恐怖に怯え、剣を握り締めて眠るような仮初めの平穏ではなく、かつての大陸がそうであったような、種族を超えた安寧を目指すべきです」


「貴殿の考えは重々承知しているよ、ウォーカー卿。……だが、かつて故郷を奪われ、愛する者を失った民がどれほど多いかも、また確かだ」

オズウェルは、諭すような、しかし逃れられぬ重い石を置くような声で言葉を続ける。

「軍備拡張は私も本意ではない。だが、奴らは九年前、何の前触れもなく突如として牙を剥き、未だに我らの領地を占領し続けているのだ。明日をも知れぬ命に怯える市民に対し、指導者たる我らが無策であれば、国家の示しがつかん。幸い、外相の尽力もあり、デウステクスからの技術支援はこれまで以上に約束されているのだよ」


「……ですが、彼らの目的はあくまで『領地の確保』のはずです」


ルクレチアは怯むことなく食らいつく。


「彼らは最北の海辺に魔素を凝縮させ、そこを新たな領地としています。彼らには彼らなりの、確かな大地としての領土が必要なのでしょう。事実、この数年、魔人たちは我々だけでなく他種族への侵攻も開始しています。これは新たな生存圏を求めての行動と推測できませんか?」


「ふむ、ならば問おう。約千年も前から海を超えた最北の地に棲み続けていた彼らが、なぜ今更、九年前になって突如として侵攻を開始したのかね?」


オズウェルの問いは、鋭い刃となってルクレチアの言葉を遮った。


「彼らが今更、我らの大地を欲しがる理由がどこにある。奴らが占領した土地の惨状を、君も知っていよう。君に忠実に仕えるアレン君も、その悲劇の遺族の一人だ」


ルクレチアは一瞬、言葉を詰まらせた。

魔人に占領された土地は、どす黒い魔素の霧に侵食され、あらゆる生命を拒絶する「死の地」へと変貌する。

青々と茂っていた木々は石のように硬く枯れ果て、動物たちは住処を追われ、そこにはただ濃密な絶望だけが沈殿していく。

霧の奥では、魔素の澱みから産まれ落ちた異形の化け物どもが跋扈し、生身の人間が近づくことすら容易ではない。そればかりか、ひとたびその毒気どくけを長く取り込んでしまえば、生物は例外なく魔素に精神を支配されて凶暴化し、治療は困難を極める。

危険な黒の魔素を払い、大地をかつての姿へ再生させるには――元凶たる魔人を討伐し、その地を根底から浄化していく以外に道はないのだ。


「……」


「対話のテーブルに着くには、まず相手が同じ意志を持たねばならんのだ」


オズウェルの冷徹なまでの現実論が、重く議場に響き渡った。

ルクレチアは言葉に詰まった。相手は彼女が生まれる前からこの国の政治を司ってきた実力者。その理詰めの前に、若き令嬢は己の経験不足を突きつけられる。


「ふん。今、そんな奴らと和平などしてみろ。侵攻されている他種族の反感まで買うのが関の山だ」

別の為政者が、小娘は黙っていろと言わんばかりの冷ややかな声を浴びせる。

ルクレチアが己の無力を噛み締め、唇を噛んだその時だった。


「少し、よろしいかな」


静寂を破ったのは、外交担当のアルバニア卿であった。

癖毛混じりの黒髪を整え、42歳とは思えぬ爽やかさを纏う彼は、デウステクスとの共同戦線を結んだ立役者の末裔でもある。

「実は、今の議論に関連して……鬼族<オニカド>から、正式な同盟の依頼状を頂いております」


議場が、一気にざわめきに包まれた。

「なんと、あのオニカドが?」

「不干渉を貫いてきた彼らが、動いたというのか」

鬼族の歴史は鎖国の歴史だ。絶海の島国で他者との関わりを断ち続けてきた彼らの動向に、為政者たちは驚きを隠せない。


「大陸南西部、彼らの島国にも魔人の侵攻が及んでおり、相当に手を焼いているようだ。正確には、デウステクスに届いていた打診が、我々にも回ってきたということでして」

アルバニアは淀みなく言葉を紡ぐ。

「私見ではありますが、魔人の思惑が見えない以上、現時点での和平は困難でしょう。それならば、個の武力が極めて高い鬼族と組む方が、将来的なメリットは大きい。彼らは資源に乏しく、我々は魔素を扱えないために軍事力に不安がある。互いのウィークポイントを補える交渉には十分な価値があるはずです」


まるでお手本のような、非の打ち所がない解答。

ルクレチアは悟った。アルバニア卿はこの日のために、完璧なシナリオを用意していたのだ。

「それに、我々が徹底抗戦を続けていれば、向こうが諦めてくれる可能性もゼロではない。これならばオズウェル卿の現実的な国防論と、ルクレチア卿の目指す平和の理想、その双方のご意見を両立させることができ、現時点でのデメリットはないと考えております」


自信に満ちた笑顔で締めくくると、アルバニア卿はルクレチアに向かって軽くウィンクをしてみせた。

ルクレチアにとって、彼の大胆かつ繊細な手腕は尊敬に値した。

しかし同時に自分の掲げる理想が、「現実的」な戦略の一部として都合よく飲み込まれていくようで、自分の無力さを痛感する。


「あともう一つ。……実は、既にデウステクスにはオニカドの代表が到着しています。本日の議会結果を速やかに伝えられるようになっており、場合によってはすぐにでも同盟を締結することも可能です」


その言葉に、再び議場は冷や水を浴びせられたように静まり返った。あまりにも回しが速すぎる。


「ま、同盟締結にあたって他国を見ておきたいというのが、彼女からの要望だったもので。ついでにと思いましてね。通信はいつでもできるよう、既に手配してありますよ」


まだ数名、難色を見せる為政者がいるのが室内の重苦しい雰囲気で伝わる。

その理由はルクレチアにも察する事ができた。

だが為政者たちがなおも渋るのを見越したように、アルバニア卿は最後に切り札を差し出す。


「皆様が懸念されている、四年前の国宝盗難事件についても伝言を預かっています。『我々の一族の者が関与しているという容疑については、預かり知るところではない。仮に関与者がいたならば、それは既に里からの離反者であり、我々にとっても即刻処罰対象である』……とのことです」


「なんと、そこまで手回しが良いとは。卿は千里眼でもお持ちか」

オズウェル卿が皮肉混じりに感嘆の声を上げる。

「お褒めいただき光栄です」

アルバニア卿の鮮やかな独壇場。

ルクレチアはただ、次々と決まっていく軍事優先の決定を、唇を噛みながら見守ることしかできなかった。


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「暇だなぁ……」


豪華だが無機質な待機室で、アレンは独りごちた。

壁一枚向こうでは、人間領の運命を決める舌戦が繰り広げられているはずだ。

今日の担当警備は、丸一日この部屋での待機命令が出ている。城内は厳戒態勢で、廊下には一歩歩くごとに兵士が立ち、蟻の這い出る隙もない。緊張感だけならば隣の会議室といい勝負ができるだろう。

それでもルクレチアの側近でこの街に来ていたアレンは、万が一に備え、最短距離であるこの隣室に釘付けにされていた。


今彼に許されているのは、書棚の背表紙をなぞるか、銀トレイの菓子をつまむことくらいだ。持参した兵法書はとっくに読み終え、金の装飾が施されたローテーブルに無造作に放り出されている。かと言って昼寝をする度胸もない。部屋の奥に鎮座し、淡々と書類仕事をこなす「上官」の前では。


「そんなに暇ならば、昔のようにしごいてやってもいいぞ。幸い、城内の警備は足りている。お前の特別訓練くらいなら、私が直々に許可してやろう」


資料や書類から目を離さず声をかけてきたのは、軍部司令ブリジット・ヴォルテール。アレンにとっては士官学校時代の「鬼教官」だ。燃えるような橙色の髪を後ろで一房に束ね、178cmの長身を特注の椅子に預けた彼女は、鋭い赤い瞳で不敵に笑う。


「……遠慮しておきます。俺はもう、手取り足取り教わるお子様じゃありませんから」

「ほう。お前がレディの誘いを断るとはな。随分と偉くなったものだ、アレン」


ブリジットは資料を置くと、深く腰掛け直し、ようやく顔をこちらに向けた。その橙色の髪が陽光を弾いて、威圧感をさらに際立たせる。「……何がレディだ」と、アレンは心の中で毒を吐き、じとっと彼女に不満げな視線を向ける。


「ふむ……。そんなに熱烈に私の特別授業を受けたいか。よろしい、今すぐ脱げ」

「何も言ってないし、最後の一言がおかしい!」


アレンががっくりと肩を落としたその時、小気味よいノックと共に扉が勢いよく開かれた。


「ふぅ~! 城内警備マジで疲れるー! ブリジットさん、アレン、お邪魔しまーす!」

「まったくだ。久々にヒューメブルグに来たってのに、観光の『か』の字もできやしない。なぁ、ピピ?」

「('ω')」


賑やかな声と共に滑り込んできたのは、士官学校時代の級友たちだった。

茶髪を逆立て、肩に双銃剣を担いだフェリクセンが不敵に笑う。その後ろからは、白と青の装飾が美しい長槍を背負い、左腕に魔道弓仕込みの盾を装備したセシルが、涼しげな黒髪を揺らして入ってきた。


そして二人の間に挟まれるようにして、150cmほどの小柄な人型機械――ピピが、カシャカシャと小気味よい駆動音を立てて歩いてくる。

デウステクスの最新技術が詰まったその体躯は、関節部が球体のボールジョイントで構成されており、ほぼ人間と見紛う精巧な造りだ。だが発声機能はなく、顔面に当たるモニターに「('ω')」などのドット絵を表示して感情を伝えてくる。一見華奢だが、その体内には試験運用中の重火器が凝縮されているのをアレンは知っている。


「そう言うな。夜の交代要員が来れば休暇を与えてやる。それまで辛抱しろ」


ブリジットがその鮮やかな橙色の髪を揺らし、少し懐かしむように目を細める。アレンは、ふっと口元を緩めた。このメンバーがここに集まったのは、ブリジットが裏でシフトをいじったに違いない。実際、当番表を確認した時からこの時間を楽しみにしていたのだ。


「みんな、久しぶりだな。相変わらず元気そうで何よりだ」

「アレンこそ! なんだかまた身長伸びた? 昔は私より低かったのにさー」


セシルがアレンの隣に立ち、自分の頭とアレンの頭を交互に手で押さえて意地悪く微笑む。


「……うるさいセシル。昔から俺の方が1ミリは高かったはずだ。お前ら、久しぶりに会った親戚かよ」

「ははっ、いいじゃねぇか! 相変わらずアレンは真面目くさってて安心したぜ。……で、泣き虫は治ったのか?」


フェリクセンがアレンの肩をバシバシと叩くと、150cmのピピもその横に並び、機械的な動作でアレンの腕をツンツンと突きながら、モニターに「(^-^ )」と得意げな記号を表示させた。


「昔話に花を咲かせるのは構わないが、声量には気をつけろ。隣では国の未来を決める議会の真っ最中だぞ」


ブリジットの鋭い指摘に、フェリクセンが調子よく返答する。

「心得てますとも、ブリジット司令殿!」

「まぁいい。私は少し警備の様子を確認してくる。少しばかりゆっくりしていろ」


ブリジットが椅子から立ち上がり、豊かな橙色の髪を翻して部屋を後にしようとしたその時。


「ありがとうございまーす。あ、いいとこの紅茶もある! これ、いただいちゃってもいいですか?」


セシルは既に部屋の隅のティーポットと複数の茶葉に目を輝かせている。

「君の紅茶好きは変わらんな。好きにしろ」

「やったぁ!」


ブリジットの許可を得るや否や、セシルは慣れた手つきで準備を始める。フェリクセンがソファにふんぞり返り、ピピがそれを不思議そうに眺める。かつての泥にまみれた訓練の日々を共有した者たちにしか流れない、濃密な親密さがそこにはあった。

だがその一時は長くは保たなかった。

ブリジットがドアノブに手をかけた、その一瞬早く。

外側から扉が開かれた。


「――ッ!」


室内を充満していた同窓の親密な空気は、瞬く間に霧散した。


現れたのは、沈痛な、しかしどこか研ぎ澄された決意を秘めた面持ちのルクレチア。

そして、その後ろには鋭い眼光を湛えたオズウェル卿と、食えない笑みを浮かべたアルバニア卿が立っていた。


アレンは反射的に背筋を伸ばし、姿勢を正して国の重鎮たちを迎え入れる。

フェリクセンとセシルも即座にふざけた態度を捨て、軍人としての硬質な顔つきで直立不動の敬礼を捧げた。ピピのモニターも、瞬時に「( ! )」という警告マークに切り替わる。


「……お話し中のところ失礼。ブリジット司令、少しばかり、お時間よろしいかな?」


にっこりと笑うアルバニア卿の穏やかな声が、室内の緊張をさらに引き絞った。

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