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すべての生きとし生けるモノ達へ  作者: みゃ~むら
オニカド編

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幕間:決意の先 side ハティ

サハラド鱗皇国。

領土内一面が、煌めく砂漠地帯。

激しい熱風が吹き荒れる、どこまでも乾いた砂地の地中深く。


千年前より、歴史の表舞台から完全に消滅し、砂の下へと隠れた太古の大都市の跡地にて。

三本の巨大な尻尾を持つ古の幻獣ハティは、遺跡群の中でもとびきり頑丈そうな神殿の屋根の縁に腰掛け、少々崩れかけている太古の遺跡群を、物憂げにゆっくりと見下ろしていた。

差し込むわずかな地下の光のなかで、ハティは二対の瞳を静かに閉じ、脳裏に焼き付いて離れない、かつての光景を反芻する。


千年前のここは、今のような死の匂いしかしない世界ではなかった。

緑がどこまでも豊かに萌え広がり、清らかな水と資源が溢れる、まさに生命の楽園だったのだ。

人間種も、獣人種も、海人種や鱗獣種も。

それどころか、あの魔人も霊人も、すべてが手を取り合って同じ空の下で暮らしていた。


そもそも、かつてこの誇り高き大都市に皆で肩を並べて暮らしていた時代には、「種」や「族」などという、互いを線引きして排斥し合うような冷たい言葉すら存在しなかったのだ。

なぜなら、皆がこの同じ美しい都市で生まれ、同じ祝福を受け、共に育った「かけがえのない同胞たち」だったからだ。


「コスモよ……お主は今、どこで、どうしておるのだろうな……」


ハティは誰に届くともない声を、寂しげに漏らした。

独白は、遺跡の中に溶けゆく。懐かしき白髪の創造主。


刃を交えた、あのラグナとかいう赤毛の少女の姿が、不意に脳裏をよぎる。

あの古の細剣を携え、あろうことか創造主コスモと酷似した「白雷の力」を顕現させた彼女を見た時、胸を引き裂かれるような凄まじい驚きと、狂おしいほどの懐かしさがハティの心を支配したのだ。

その感覚はもはや既に忘れかけているほどだった。


「我はもう、あまりにも永い時を生きすぎてしまった。いや……我はただ死ぬことも許されず、この世界に生かされているのやもしれんな……」


ハティは自嘲気味に呟く。

都合のいい夢を見続けているだけなのかもしれない。

いつかまた、あの楽しかった、差別のない輝かしい世界がどこかに蘇るのではないかと。

かつての仲間たちと、コスモと、また腹の底から笑い合える穏やかな日常がやってくるのではないかと。

そんな子供じみた夢を。


ラグナは「私は復讐を誓っている」と、その瞳に黒い炎を宿して言い放った。

もし、彼女が過去の惨劇に囚われ、復讐という免罪符によってしか動けない哀れな「人形」だと言うのなら――このハティとて、とうの昔に滅び去った過去の理想の残骸に縋り付いているだけの、哀れな負け犬の「獣」に過ぎないのかもしれない。


ハティは耳をぺたんと力なく伏せ、溢れ出そうになる郷愁を振り払うように、立ち上がって三本の太い尻尾を風を切る音を立ててぶんぶんと振り回した。

「……動く時が、来たのやもしれんな」

だが、この濁った先の見えない運命の濁流に、果たして今の我が抗いきれるのだろうか。

この狂った世界の果てに、一体何が待ち受けているというのか。


その暗黒の先に、我が……いや、千年前のあの日、命を散らしていった同胞たちが激しく渇望した「救いのある未来」は、果たして存在するのだろうか。

もしかすれば、今から我らが辿る歩みは、世界を完全なる破滅へと導く「終末への道標」なのかもしれない。

「しかし……それは、全てを賭して進むと決意したモノにしか、分かり得ぬことだ」

少なくとも、ここでただ化石のように砂に埋もれ、時が流れるのに身を任せていては、何一つ始まりはしない。

失われたものは二度と戻らない。


我は…いや我達は一度、完全に負けたのだ。

そして、すべてを失った。

命を育んだこの大都市を、愛すべき同胞たちを、そして――誰よりも大切だった、コスモを。

どれほど涙を流そうとも、未来永劫、到底二度とは得難い至高の宝物たちを、すべて失った。

「ならば……今度は、ただ前へ進むしかないではないか」

ハティの二対の瞳に、千年間失われていた鋭い野生の闘志が、静かに、だが決して消えない確固たる業火となって灯る。


もう、これ以上失うものなど、何一つ残されてはいないのだから。

決意を新たにし、三本の尻尾を誇らしげに揺らしながら、古の獣は暗がりのなかで力強く立ち上がった。

その足跡は、確かに新しい運命の始まりを告げるように、太古の石床に深く刻まれていた。

どうも&初めまして!

みゃ~むら、と申します!

お読みいただきありがとうございます。

感想やレビューなどお待ちしております!


鶏もも 1

にんじん 1

茄子 2

玉ねぎ 1

ジャガイモ 1

かれーのルゥ 半箱

油 大さじ1


あ、5月から公開を始めました、この「生きとし生けるモノ達へ」がトータル1000ビューを突破しました!

ありがとうございます!これからも皆様に楽しんでいただける様に頑張りま~す。

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