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すべての生きとし生けるもの達へ  作者: みゃ~むら
オニカド編

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24/33

白雷 side ラグナ(Part11)

その四足獣は、見たこともない異様な姿をしていた。

筋肉で美しく引き締まった体軀に、白を基調とした豪奢な体毛。一見すればオオカミを思わせる風貌だが、顎には逞しい髭を蓄え、何より特徴的だったのは二対の瞳――四つの目が怪しくギラギラと光っている。獣らしい鋭い牙が見え隠れする口元からは、濃密な魔素が陽炎のように漏れ出ていた。

何より異質なのは、その後ろ姿だ。体毛による立派なタテガミが首から背にかけて波打ち、細長い尻尾が三本。その切先のどれもが、ナイフのように鋭利な刃の形状をしている。

そして、その圧倒的な質量。体長はおおよそ10メートルはあるだろうか。巨軀を低く構え、こちらを静かに、明確な殺意の籠もった目で睨みつけている。


「どっから出てきたの、あれ?」

すかさず全員が武器を抜く。

「わからない、けど、てきいだけは、すごいぞ!」

ポポロが低く唸るような声をあげ、全身の毛を逆立てて威嚇している。

「私も、あのような獣は見たことがありませんね」

ノエが武器を厳重に構え直したその時、正面に佇む獣が突如として天を仰いだ。


――フォオオオオオオオオオオン!


どこか物憂げでありながら、肌をビリビリと突き刺すような、圧倒的な殺意を孕んだ鳴き声が、周囲の空気を震わせて響き渡る。その特徴的な鳴き声にはどこか聞き覚えのある鳴き声だった。

「こいつだったのね……鳴き声の主は!?」

神殿に入る前の遺跡で聞いた鳴き声と同じだ。

「……ん?」

激しい威嚇を解くことなく、ポポロが何か気の抜けた、いつもの声を漏らした。

「ポポロ、どうしましたか?」

細い横目でちらりとノエが様子を窺う。この緊迫した状況に似つかわしくない仲間の声に、彼女も疑問を抱いたようだ。


「さっきは、なんていってるか、わかんなかった。けど、いまたしかに『かえせ』って」

「……え?」


その瞬間、私たちはほんの一瞬だけ、その獣から目を離してしまった。

目の前で殺気立っていた獣が、その決定的な隙を見逃すはずがない。

獣は一瞬で眼前にまで肉薄すると、丸太のような巨大な前足を、容赦なく私たちへと叩きつけてきた。


「させません!」


ノエが瞬時に最前列へと躍り出、両刃の大斧を掲げてガード。凄まじい質量が衝突し、ノエの立っている足場がクモの巣状に激しくひび割れ、私たちもその余波の衝撃で一瞬宙に舞う。それだけで、この獣の規格外の膂力と、その一撃を正面から受け止めるノエの凄まじいパワーが窺い知れた。


だが、バックステップで着地したポポロが、即座に身体を鋭く回転させながら反撃の突撃を仕掛ける。タイミングがやや遅れ気味ながら、私もその動きに合わせ、挟撃の軌道で左右から飛びかかった。

しかし、獣は難なくその場で大きく旋回。三本の尻尾を鋭い鞭のようにたなびかせ、私たち3人をまとめて振り払うようにして、強引に距離を離す。


それぞれ別方向へ弾かれるように着地した。あの細くも筋肉質な尻尾は、当たればタダでは済まなかっただろう。

一旦仕切り直しかと思われたが、回転の勢いを殺さぬままこちらへ振り向きざま、獣は口元に凝縮させた魔素のエネルギー弾を、私に向けて容赦なく撃ち込んできた。


「……嘘、でしょ……っ!」


眼前に迫る、視界を染めるほどの橙色をした高エネルギー。喰らったらまずいと、本能が全力で警鐘を鳴らす。

直後、着弾。

周囲の空間ごと抉り取るような大爆発が巻き起こる。間一慌で直撃こそ避けたものの、凄まじい爆風が私の身体を容赦なく吹き飛ばした。


「チィッ……!」


だが何とかして私はマントを咄嗟に翻し、熱風を直接肌に晒されることだけは阻止する。


「ラグナ!」

「ハァアアァアッ!」


魔弾を発射した一瞬の隙を突き、ノエが高く跳躍。その大斧を頭上へと構え、上段からの強烈な一撃を振り下ろす。

獣はそれを、背後の尻尾を突き出して迎撃した。ノエは竜人族ならではの怪力と膂力を込めていたが、獣はそれを勢いの付けた尻尾の切先だけで防ぎ止める。金属と刃が激突し、凄まじい火花が夜空の流れ星のように飛び交った。


「クッ…!」


踏ん張りが効かない空中での鍔迫り合い。衝撃に弾かれ、体勢を崩すノエ。しかし、彼女はそのまま大斧を変形させた。後ろに飛ばされ空中という踏ん張りが効かない逆さまの体勢の中、曲芸のごとくその体躯と尻尾を強引に捻り、斧から姿を変えた戦輪を力任せにぶん投げる。

それに呼応するように、地を這う速度で接近していたポポロが、完璧なタイミングで獣の脚元へと剣を振るい、襲いかかった。


だが、空を切り裂く戦輪も、ポポロの鋭い一撃も、獣は紙一重の身のこなしで完璧に躱してみせる。

それどころか、獣はノエの後を追うようにして跳躍。無防備なノエに向かって、その大きな口を限界まで開いた。そのまま食らい尽くすつもりだ。ひたいを冷たい汗が伝う。空中で体勢を崩している今のノエに、逃げ場も防ぐ術もない。


「流石にマズイですね」

「させん!」


ポポロが後を追うように鋭く跳躍。獣の鳩尾めがけて、思いっきりタックルをぶちかました。

間一瞬、ノエは地面へと着地。獣は低く唸ると、タックルされた勢いのまま宙返りをしつつ壁面へと脚をつけ、強引に姿勢を制御した。


だが、ポポロは止まらない。すぐさま追撃へ移る。

互いに垂直な壁を縦横無尽に駆け巡りながら、ポポロは果敢に攻め続けた。その小さな身体を活かし、すばしっこく巨軀へと纏わりつく。垂直の壁を、ガリガリと砂塵を散らしながら駆け上がっていく二つの影。

「うりゃぁああ!」

ポポロは口に刀を咥え、目にも留まらぬ速さで斬り掛かっていく。

単純な移動スピードでは獣が上だが、一瞬の瞬発力と小回りにおいては、ポポロに軍配が上がるようだ。その鋭い連撃が、少しずつ獣の巨軀に確かな切り傷を刻んでいく。


だが、獣はその痛みをものともせず、垂直の壁を踏みしめて急反転。またしても口元に魔素をチャージし、ゼロ距離のエネルギー弾をポポロめがけて発射した。


「うわぁ!」

「ポポロ!」


回避の足場がない。エネルギー弾が壁に着弾し、鼓膜を震わせる強烈な爆発音が建物全体を包み込む。

凄まじい煙が立ち込める。だが、その煙が晴れた先にあったのは――。


「間に、あった…」


すんでのところで、ラグナが片手でポポロの身体をしっかりと抱き抱えていた。

そのまま、様変わりした細剣を構えて獣へと切り掛かる。しかし獣は壁面でバックステップを踏み、跳躍しながらみたびエネルギー弾をチャージしようとする。

またあの弾が来るか、と身構えたが、獣はすかさずチャージを納め、ノエが手元に呼び戻し再度投擲した戦輪を空を蹴るようにして危なげなく回避した。


私もその隙にポポロを連れて地表へと飛び降り、ノエと合流。獣と再び距離を取った。壁一面には無数の深いヒビが走り、とてつもない音を立ててボロボロと崩れ落ちていく。あの奇天烈な模様の面影は無くなっており、そこにあるのは激しい戦闘痕だけだった。


「あ、あぶなかった〜、たすかったぞ」

傍らに抱えていたポポロが、ぴょんと地面に降り立つ。幸い、怪我はなさそうだ。

「ごめん、爆風で身動き取れなかった…二人とも助かったわ」

「いえ、私もポポロには助けられました。お二人とも無事で何よりです……それにしても」

戻ってきた戦輪を回収し、再び重厚な斧形態へと戻しながら、ノエは鋭い目つきを私たちから目の前の獣へと戻した。


――フォオオオオオオオオオン。


目の前の獣は、何事もなかったかのように元気そうに唸り声をあげている。ポポロが刻んだ切り傷は、あの巨軀に対してはやはり致命傷にはなり得ていない。


「やっぱり、『かえせ』っていってるな…」

言葉の意味がわからず、ポポロは首を傾げている。

「返せって……この結晶のこと? もうガッチリハマっちゃって取れないわよ」

試しに結晶の表面を指でなぞってみるが、微動だにしない。完全に剣の一部になっている。

「じゃあ事情を説明してみますか? 取れなくなりました、と」

軽く冗談をいうノエの言葉に、私は首を横に振った。

獣に視線を移すが、その目は赤く血走っており、今もなお、凄まじい殺意を込めて低く唸り声をあげているからだ。


「戦うのはいいですが、無策で勝てる相手ではなさそうです……あのパワーに、魔素をチャージしたエネルギー弾。本当に厄介な相手です」

「あいつ、めちゃはやい。かべも、くうちゅうも、はしる」

「2人とも――あいつの隙って作れる?」

無茶なお願いとは頭ではわかっているが、2人に恐る恐る尋ねる。

「なにか、いいあんが、あるのか?」

「えぇ、と言うよりは、試したい事があるんだけど……」

だが悠長に説明している時間はない。私は2人に、真剣な面持ちでそう告げた。

「わかりました。じゃあ任せましたよ」

「おいしーとこはたのんだ」


2人は私の意図を汲み取ってくれたのか、一切の疑いなく、笑って快く返事をしてくれた。

再度、武器をしっかりと構え、3人同時に地を蹴って駆ける。


直後、獣が口に溜めていた魔素を直線状に照射し、迎撃してくる。私たちは三方へと散ってその熱線をかわし、そのまま一斉に突進した。

だがその時、獣の身体が不気味に変貌する。体内で魔素を急激にチャージしているのか、その毛並みが眩いオレンジ色に発光し始めたのだ。


「何を……!?」


獣はその巨軀を激しく震わせながら、バック宙の軌道を描いて跳躍。それと同時に、あたり一面に輝くオレンジ色の魔素の粒子をばら撒いた。

空間に漂う粒子が、不規則に怪しく明滅している。それは獣の口元も同様で、みたびエネルギー弾を発射。だが、その弾は直接私たちを狙ったものではなかった。

エネルギー弾は私たちのかなり手前の床に着弾する。だが、その真の狙いに最初に気づいたのはノエだった。


「まずい!」


放り込まれたエネルギー弾の衝撃に呼応するかのように、周囲に漂っていた無数のオレンジ色の粒子が、小規模ながらも連鎖的に次々と爆発を引き起こしたのだ。戦場が一瞬にして炎と衝撃波の檻へと変わる。

獣は爆発の爆煙を避けるように壁から空中へと飛び上がり、トコトコと、さも当然のように空中を歩いて位置取る。床一面が濃い煙に包まれる中、獣はその様子を上空から静かに見下ろしていた。


「たぁぁあ!」


だが、その煙の中から、突如として影が飛び出した。服のあちこちが煤だらけになったポポロが、空中を征する獣に向けて、刀を構えて果敢に切りかかった。

小規模な連鎖爆発だったおかげで、致命傷だけは免れていたらしい。

予想だにしない下層からの強襲に、獣は対応が一瞬遅れ、その前脚に今度こそ深い切り傷を刻みつけられる。

獣は少々痛そうな表情を浮かべ、多少の戸惑いを見せつつも、すぐさまポポロの追撃を三本の尻尾で激しく捌き始めた。


「うっ!?」


小さき獣人の身体に、重い尻尾の一撃が容赦なく叩き込まれ、ポポロは遠くの床へと吹き飛ばされてしまう。傷つけられた前足を少し気遣うようにしながら、獣は砂塵がようやく落ち着き始めた床へと足を下ろした。

――その着地の瞬間を、もう一人の戦士が見逃さなかった。

煙を漆黒の外套のように纏いながら、こちらも爆発での衝撃で血が滲み出ているノエが獣の死角から猛然と切りつける。

完全な奇襲に反応が遅れた獣の横腹を、大斧が深く切り裂いた。明確に体勢を崩す巨獣。だが、獣も負けじと、至近距離から三本の尻尾の切先を向け、細い熱線光線を照射した。


「グッ……!」


細くも強力な光線がノエの肩や脚を容赦なく直撃する。肉が削られ、鮮血が宙に舞った。

そして間髪入れずに照射が終わった尻尾の横薙ぎがノエの腹に入り無情に吹き飛ばされる、ことはなかった。激痛と共に、ノエの口の中が鉄分の味でいっぱいになりながらも、その尻尾を掴んで離さない。

彼女の顔に浮かんだのは、苦悶ではなく――不敵な笑みだった。


「借り、一つですよ…!」


その尻尾を勢い付けて空に放り投げる。

獣は体勢を崩したまま、私に向かって放り投げられる。

(全く、どんな怪力よ……)

ノエの馬鹿力に呆れつつも、その声を合図に私はただ静かに煙の中で息を潜め、細剣の柄を強く握り締めた。さっきポポロを助けた時の、あの不思議な感覚を脳裏に鮮烈に思い起こす。


考えがある、と言うよりは、自分の力に対してどこか確信的なものが、胸の奥底に熱く湧き上がっていた。


先ほど、ポポロが魔素のエネルギー弾で焼かれそうになった、あの瞬間。

頭で考えるよりも先に身体が動き、気づいた時にはすでにポポロを抱き抱えていた。

本来なら、あり得ない速度と距離。壁面までの距離はそれなりに離れていたし、これまでの私の身体能力では、到底間に合うはずがなかった。

だけど、あの時はなにか、身体中に凄まじい熱量が駆け巡る感覚があった。そしてそれには、確かな発信源が存在していた。


(この細剣を握ってると、力が沸いてくる……)


夢の中で見た、あの白髪の少女。そして、この結晶。

何もかもが謎に包まれている。けれど――。

私は突き進む。この胸の復讐を果たすために。


体勢を崩しながらも口をこちらに向けて、光線を放とうとする獣に向かって一気に地を疾る。細剣の柄を、限界まで強く握り締めた。その瞬間、私の周囲の空間に、今まで見たこともない純白の雷がバチバチと激しく弾けた。


そして、仲間である2人が命懸けで作り上げてくれた、最高の、隙。

私は――。


地を迸る白雷と化し、すれ違いざま、その巨獣の身体へ渾身の一撃を深く刻み込んだ。

みなさま、いつもどうもです&初めまして~!

みゃ~むら、です。

この度はご拝読いただき、ありがとうございます。


今回こそはあとがきで書く事ないぞ~って思いながら今書いているんですが(笑)

皆さんって、誰かと外食行く時ってお店を決める側、つまり幹事する事ってありますか。

それとも全くした事がないですか。私はあまり無いですが、全く無いこともないです。

幹事だった時って結構難しく無いですか。昨今外食も中々安いところが減ってるんで予算面で考慮しても大変だし、みんなのアレルギーや、好き嫌いもある程度考慮したりなんかして。

少人数であれば、みんなのその時の気分で、何も決めずに入ったりするのですが、大人数だとこれまた大変。

予約もお店選びも中々センスが問われる大変な仕事というわけです。

ですが、中には遠方から会いにきてくれる人とかいるから大変でもそんな時間が楽しかったりするんですよね。

と、全く関係のない話で締めさせていただきます。

次回お会いしましょう!

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