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インフィヌート ~ダンジョンで倒れた冒険者を救う者の物語~  作者: コヨコヨ


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キャバクラ

「今、ギルドマスターはいますか?」

「酔って騒ぎを起こした冒険者の謝罪周り中ですね」

「そうですか……。わかりました。ありがとうございます」


 レオンは一礼し、受付を後にする。


「今、僕は冒険者として仕事ができるだろうか。救助隊とは別物だからなぁ」


 レオンは冒険者の勘を取り戻すため、Lv.1が集まった冒険者パーティーの中でシーフを探している集団に話しかけた。


「あの、仕事を手伝わせてもらえませんか?」

「得体のしれないシーフを雇うのは、ちょっと……」


 レオンは、無慈悲に断られた。フリーのシーフは人気がない。

 罠の解除を専門にしているシーフの仕事は、腕がなければ死に直結する。

 そのため、誰かに推薦される実力がなければ、信用してもらえなかった。


 新人冒険者パーティーを手伝い冒険者の感覚を取り戻すことも、とん挫する。


 ――シグマさんに頼めば推選してくれるかもしれないけど、今、この場にいないんだよなぁ。


 レオンは腕を組みながら目を瞑る。少しじっとしてから腰に手を当て、目を開いた。


「……一人でレベル上げに行くか」


 Lv.1のレオンは上層までなら一人で移動できる。

 冒険者登録の関係で依頼は受けられないが、魔物を倒して換金してもらうのは可能だった。


「危険になれば逃げればいいんだ」


 レオンは肩ひじ張らずに『落とし豚』から『インフィヌート』の中に入る。

 下から上に戻るときに体力を使うため、一層から一二層まで駆け降りる。


 上層の魔物相手ならばアントナイフだけでも十分倒せる。『力』の値を上げるため、仲間を呼ばれる前にロックアントを五匹討伐。

 レオンが通路を突き抜けた瞬間、ドロップアイテムが一気に落ちる。


 その後も上層でアントナイフを振るい、出会った魔物をかたっぱしから倒す。


 ――永遠に生え続ける雑草を刈り取っているような気分だ。


 大金を手に入れても使い道がなく、誰かに感謝されるわけでもなく、《アビリティ》の値だけが上がる。

 適当に魔物を倒すだけでは永遠にLv.1のままだが、何もしなければ死ぬまでLv.1から抜け出せない。


「皆が地上に戻ってくるまで、出来る限り『力』の値を伸ばしておこう」


 レオンは暇な時こそ、レベル上げだと言わんばかりに魔物を狩って狩って狩りまくる。

 どの魔物も、彼より遅い。

 攻撃を一度も受けず、四つの魔法の袋がドロップアイテムでパンパンになるほど魔物を倒した。


「もしかすると冒険者パーティーを組んでいる時より効率が良くなっているかもしれない」


 素材をバルディアギルドの受付で換金すると、ルークス金貨一枚近く稼げた。


「僕一人で、こんなに稼げるなんて。これだけあれば、王都のどこで遊んでも破産しなさそうだ。……い、行ってみるか?」


 レオンは一人なのをいいことに、夜の西大通りに脚を運んだ。


「大人のお金の使い道と言ったらここだ。来たことはあっても、お店に入ったことはなかったな……」


 西大通りの風俗街。

 それは王都の端の方に作られた冒険者たちのオアシス。

 神々が住む楽園のような、紫色や淡いピンク色の光がちかちかと輝き、静かな夜を彩っている店が垣根を連ねる。

 どこもかしこも、男と女が毛糸のように絡まり合い、店の中に吸い込まれていく。


「いらっしゃいませにゃ~。ピチピチの若い良い子が一杯そろってるのにゃ~」

「皆さんの疲れを、ここで癒して行って~。今なら、朝までルークス大銀貨一枚ぽっきりよ~」


 酔っぱらった冒険者を狙う露出度が高い服装の猫人と牛人の女性呼子が、ダンジョンの中に仕掛けられた罠のように待ち構えていた。


 ――シーフとしての危機感が大音量で警告してくる。あれに近づいてはならない。


 レオンは目を合わせないように、歩いて抜けようとした。だが、風俗街の罠は素早い速度で移動する。


「ニャニャ~、今ぁ、私、お兄さんと目が合っちゃったにゃ~。これって絶対運命にゃ」

「もう~、今、私の方と目が合ったのよ。ねぇ、ぼく、お姉さんと楽しいことしない~」


 レオンは女性二名に両腕を掴まれ、胸を押し付けられた。その瞬間、咄嗟に退いだ。


 ――ゆ、油断も隙もありゃしない。


 目を点にしている呼子から、全力で逃げる。逃げて逃げて、迷った。


「ど、どうしよう、こっち側に初めて来たから道がわからない。適当に移動しても失敗するだけだ。光が強い方に行けば、何とかなるかな……」


 レオンは光に呼び寄せられるウミガメのように移動し、風俗ではない女の子と一緒にお酒を飲める店が多い通路に出た。

 ここまでくれば、後は王城が立つ中央まで歩いていくだけで大通りに出られる。


「よかった、遭難は避けられた」


 レオンは大きく息を吐き、胸をなでおろす。辺りを見渡すと虎人が接客してくれる店を見つけた。

 彼は生唾を大きく嚥下する。


 ――あの店に入ったら、ヴィミに甘えられた時と同じ感覚を味わえるかもしれない。逆に、あの時と同じ気持ちにならなかったら僕は彼女のことが……。


 レオンは鼻の下を伸ばさず、凛々しい顔のまま店に向かう。


「いらっしゃいませ……、って、ここは子どもが来るところじゃないんだが?」


 ヴィミと同じ虎人の嬢が、肉を断ち切るような鋭い目つきでレオンを睨む。


 ――虎人はさばさばしている人が多いのかな。一般人呼ばわりより子ども呼ばわりされる方が男としてちょっときつい。


 レオンは方足を引いていたが、前に踏み出す。


「僕は一七歳です」


 虎人の嬢は目を丸くし、鋭い視線が多少穏やかになった。


「こういうところ、初めて来たんですけど」

「初めてにしてはハードな店を選んだな……。よりによって虎人の店に入るとは」


 ソファーに腰かけるレオンの隣に、ドレスを纏った胸の大きい虎人の嬢がのっしりと座り込む。

 脂肪はほぼなく、女性なのに筋肉質。虎人の女というべき肉体美だ。

 周りにいる他の嬢も、ヴィミを大人にしたような雰囲気を放つ。皆、目つきが鋭い。


 ――僕、嫌われている? 人間の男が嫌いなのかな。


 レオンは体が硬直し、辺りの反応を見回す。

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