新しいスキル
「六層がこの状況になった原因の手がかりが掴めたかもしれない」
「え……、そうなの?」
ヴィミはアントナイフに血が付いていた状況をレオンに伝えた。
「確かに、誰かが裏で糸を引いていた可能性はあるかも。でも、何のために?」
「そこまではわからないけれど、速く戻ってキアズに報告しましょう。じゃあ、次はレオンの番」
「ブラッドウルフの素材で武器を作ってもいいかな?」
「最後に倒したのはレオンなんだから、気にせずに使えばいいじゃない」
ブラッドウルフのドロップアイテムなら、ルークス金貨数十枚の価値がある。
レオンは目を丸くし、口が空きっぱなしになった。
「ありがとう。さっき、助けてもらったお礼がしたいんだけど、何がいい?」
「じゃあ、お言葉に甘えて食べ放題じゃない、高級な肉でも奢ってもらいましょうかね」
――ヴィミが高級な肉を好きなだけ食べ進めたら、総額でいくらになってしまんだろうか。
レオンは金額を軽く計算し、顔が青くなる。だが、腹をくくった。
「わかった。好きなだけ食べていいよ」
「言ったわねー。本当に好きなだけ食べちゃうからっ」
レオンとヴィミは六層から抜け出し、地上に戻る。
素材集めに時間がかかり、外は昼前の時間帯になっていた。
日の光は、六層を照らす光コケより何倍も明るいため、目を細めて光量を調節しなければ視界が真っ白に飛んでしまう。
レオンは隣にいるヴィミの姿に視線を向けた。
彼女の体に日の光に当たり、艶やかな肌や銀色の髪が絹より輝いていた。
――こんな美少女がさっきまで、またたびのにおいを嗅いだ猫のように蕩けていたのか。
レオンはヴィミと目が合った瞬間にすぐに視線を逸らした。
レオンの姿を見ていたヴィミも、咄嗟に視線を逸らす。
「い、いやぁ、外って眩しいなぁ……」
「ほ、ほんとね。目がちかちかしちゃうわ」
レオンとヴィミは『落とし豚』から東大通りにあるウルフィリアギルドまで走る。
建物内に入ると、トイレを我慢しているように動いているキアズが受付の近くにいた。
「ただいま戻りました」
レオンはキアズに何事もなかったかのように話しかける。
「おお、二人共無事だったか。調査と偽宝部屋に向かうだけにしては長いと思っていたが、無事でよかった」
ギルドマスターとして部下の安全が確認できたキアズは肩から力を抜いた。
「偽宝部屋に救助カードが落ちていました。あと、ブラッドウルフもいました」
「……ん、聞き間違いかな。今、レオンの口からブラッドウルフと聞こえたんだが。六層に行ったんだから、シャドウウルフじゃないか?」
レオンはキアズにブラッドウルフの爪と魔石を見せる。
「んんんっ、最近、歳のせいか、視界がぼやけるんだ。どうも、レオンが持っているシャドウウルフの爪がブラッドウルフの爪に見えてしまう。見かけただけならまだしも、倒したとかありえない。やはり、それは超大型のシャドウウルフの爪だろう?」
キアズは眼鏡を何度も掛けなおし、ブラッドウルフのドロップアイテムを凝視する。
Lv.1とLv.2しかいない救助隊員がLv.3を集めた冒険者パーティーでも苦戦するブラッドウルフを倒した話など、普通は誰も信じない。
だが、倒した証拠はレオンが持っている。
レオンはブラッドウルフの素材を売らないため、魔法の袋にしまう。
別の魔法の袋に入れていたシャドウウルフのドロップアイテムと魔石を受付に出す。
素材の換金は報酬二倍に含まれていないため、キアズは命拾いした。
ヴィミは四枚の救助カードをキアズに手渡した。
キアズは平然としているレオンとヴィミの姿を見まわし、背中に汗をかく。
「六層の異変ですけど、ブラッドウルフが原因だと思います。倒したので、元に戻るはずです。ただ、どうして六層で現れないブラッドウルフがいたのか、その点は調査してもらわないといけません」
「あ、あぁ、そうだな……。シグマに話を通しておく」
キアズは頬を引きつらせ、小さく頷く。
換金の途中、レオンは成長を知るため、受付に置かれている〈ステイタス〉を調べるの魔道具に手の平を乗せる。
〈ステイタス〉
《アビリティ》
Lv.1
力:I93→H133 耐久:I68 器用:SS1005→6S1405 俊敏:SSS1185→7S1585 魔力:I40
《魔法》
【】
《スキル》
【血狼の牙】・攻撃判定時、敵の体力の三パーセント固定ダメージ。・敵の耐久や《魔法》《スキル》《レアスキル》の効果を無視する。・任意発動。
《レアスキル》
【鬼追いの神】・力、耐久、魔力の成長率大幅低下。・器用、速度の成長率大幅向上。・常時発動。
「『器用』と『俊敏』が引くくらい伸びているのは置いておいて。《スキル》が増えている……。《スキル》に悪い効果はないっていうけど、実際は苦労しているからな」
レオンは苦笑いしながら《スキル》の内容を確認する。




