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インフィヌート ~ダンジョンで倒れた冒険者を救う者の物語~  作者: コヨコヨ


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六層の様子

 早朝、ウルフィリアギルドの食堂でレオンとヴィミはレベル上げの効率化を図るため、互いの〈ステイタス〉を見せ合っていた。


〈ステイタス〉

《アビリティ》

Lv.2

力:A850 耐久:G230 器用:F308 俊敏:S910 魔力:E480

《魔法》

【獣拳】・拳が当たると追加ダメージが入る。・魔力が高いほど威力が増す。・任意発動。

《スキル》

【瞬歩】・視線の先に瞬間移動する。俊敏が高いほど距離が伸びる。・任意発動。

《レアスキル》

獣化(ビーストモード)】・力、俊敏のステイタスが一定期間二倍。・任意発動。・使用後、性欲が増す。


 ――ヴィミも《レアスキル》を持っているんだ。でも、使用後の性欲が増すって……、ど、どうなるんだろう。


 レオンはヴィミの《アビリティ》よりも《レアスキル》の方に目が止まる。だが、首を振り、考えないように無視する。


「『俊敏』がSSSって、Lv.1の《アビリティ》じゃないでしょ。この【鬼追いの神】っていう《レアスキル》のせい?」


 ヴィミは頬を引きつらせ、ぎこちなく笑っていた。


「うん……、冒険者になりたての頃、宝箱から運よくスキルカードが取れたんだよ。《スキル》って、悪い効果がないっていわれているから、ビギナーズラックだと思って喜んで使ったら《レアスキル》だった。運がいいのか悪いのか、それが原因でレベルが上がりづらくなってる。昨日、人を沢山助けて、一気に上がっちゃって、強い魔物と戦わないといけなくなった」


 レオンはテーブルにへたり込んだ。

 シャドウウルフと戦わなければならなくなった状況に、腹を下してしまったような顔になっている。


「そんなに落ち込まないの。私たちの仕事は強くなるんじゃなくて、人を助けるのが本懐なんだから」

「そ、そうだけど……、このままじゃ、ヴィミを守れない」


 レオンはサラダ油くらいサラっと呟いた。

 ヴィミの顔が、熱を帯びた炭のように赤らんでいく。


「ば、バッカじゃないの。レオンに守られるほど、私は弱くないわよっ。もう、話合いはおしまい、さっさと仕事に行くわよっ」


 ヴィミはレオンに四の五の言わせず、椅子から立ち上がった。

 大きな尻とビンビンに立っている尻尾をレオンに向け、ウルフィリアギルドの入口に足早に向かう。


 レベル上げを効率よくこなすための話合いのはずが、彼女が一方的に話合いを中断してしまい〈ステイタス〉を見せ合っただけで終わった。


 ――僕の《アビリティ》の合計値は2291。ヴィミの合計値は2778。これじゃあ、一緒にレベル上げをやろうとしても、彼女の《アビリティ》は上がりづらい。僕がもっと強くならないと。


 レオンは上半身を起こし、頬を軽く叩いてから立ち上がる。

 テーブルの上に置かれていた〈ステイタス〉を調べるための魔道具を受け付けに戻し、ヴィミの背中を追いかけた。


 今日の仕事は救助隊ギルドに一番多い内容の仕事だった。

 六層に落ちている救助カードの回収だ。

 中層よりも一枚当たりの値段は低いが、枚数が多いため仕事に慣れている救助隊員にとっては割のいい仕事だ。

 レオンはシャドウウルフに警戒し続けなければならないため、乗り気になれない。

 だが、両者は六層にいるにも拘らず、一度もシャドウウルフに出くわしていなかった。

 いつもなら、三〇分も歩けば一度は遭遇する。

 底の見えない海の中にいるような閑静が広がっている。


 ヴィミの鼻を頼りに六層を歩き、血だまりに救助カードが浮いているのを発見。

 レオンは救助カードを拾い、布で汚れを拭う。綺麗にしてから一番狭い魔法の袋の中に入れる。


「気持ち悪いくらいに静かね……」

「魔物がいないなら、それにこしたことはないんだけどね」


 冒険者は基本的に魔物に出来る限り出会わないよう行動する。

 宝部屋を探しながら潜っていき、目的の素材を落とす魔物とだけ戦うのが安全で効率がいい方法だ。

 出会った魔物全てと戦っていたら、身が持たない。だが、これほど静かだと冒険者たちも油断してしまう。

 肩に着いた抜け毛を摘まむ動作、背後をちょっと振り返る、ブーツの紐を結び直す、たったそれだけで魔物にとって絶好の攻撃機会となりえた。


 いつもと違うという感覚は、いうなれば危機感が働いているということ。どれだけ魔物の出現率が低くても、危機が付きまとうのだからいつも以上に警戒しなければならない。

 水分の少ないのっぺりとしたパンが喉に詰まったような息苦しい時間が続く。


「今、何枚の救助カードが集まった?」

「えっと、一二枚。あと、八枚かな。にしても、今日はいつにもなく多いね。低級の救助カードといえ、まあまあ高い品だから冒険者としての経験をちゃんと積んでいる人達だと思うんだけど……」

「新人冒険者殺しじゃなくて、冒険者殺しって異名に改名した方がいいんじゃないかしら」


 ヴィミは耳を立たせ、前後左右に万遍なく動かしながら聴覚と嗅覚、六感に意識を集中させていく。

 彼女が行く先にことごとく救助カードが落ちていた。

 順調に救助カードを回収していくが、緊張するほど視界が狭まっていき、周りが見えなくなる。

 六層に入ってから休みなくずっと移動しっぱなしだった。


 このまま歩き続けるのは精神上よろしくないと判断したレオンは、緊張が高まっているヴィミが驚かないよう、小さな声で話しかける。

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