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インフィヌート ~ダンジョンで倒れた冒険者を救う者の物語~  作者: コヨコヨ


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大金

 今回手に入れた素材をすべて売り出したわけではないため、レオンとヴィミは買取金額に引いた。


 ロックアントは冒険者でも真面に戦わない危険な魔物のため、素材が枯渇していた。

 その影響で買い取り額がつり上がっていた。

 二二名を救出した報酬と合わせると、合計ルークス金貨一〇枚とルークス銀板一〇枚。


 キアズに怒られていた時と同じくらい、レオンとヴィミは泣きそうになりながら震えていた。

 半分にしても、ルークス王国の一般人の年収を軽く超えてしまっている。

 今回の仕事は危険だった分、実入りが良かった。


「これを手もとで控えておくのは勇気がいるな」

「さ、さすがにこのお金を一日で使い切るのは無理ね。お腹が破裂しちゃう」


 ヴィミはすでに稼いだお金を使い、肉を食べる気満々だった。


 ――このままだと、ヴィミの人生が破滅してしまいそうだ。


 レオンはヴィミを連れて南大通りに本店を構えるルークス銀行に向かう。


「ちょっと、お金を落とすわけないんだから、銀行にわざわざ預けなくても、いいじゃない」

「もし、ダンジョンでヴィミが低級の救助カードに入ってしまったら、財布を盗まれるかもしれないんだよ。それでもいいの?」


 身に覚えがありすぎるヴィミは表情を曇らせながら、渋々承諾した。


 大金を手に入れたレオンだったが、欲しかった魔法の袋は拾った品で代用できるため、お金の使い道がなくなった。


 危険を回避する職業柄か、お金を失い路頭に迷う可能性も迅速に潰しておく。

 ともに仕事しているヴィミが裏路地で男達に安い値段で身売りしている女性たちのような未来を送らないよう、今から対策を施す。

 パーティーメンバーの危険を回避するのがシーフの主な仕事。

 ダンジョン以外の場所でも、その本質は変わらない。


 レオンはもともと銀行口座を持っていたが、ヴィミは銀行に来たのが初めてというので銀行口座を作らせる。


 ルークス銀行にお金を預け終わったレオンとヴィミは南大通りを歩く。

 役所や裁判所など、公共施設が多く立ち並んでおり冒険者以外の者が多く見受けられる。仕事盛りな若い男達が我先にと闊歩している。

 冒険者ギルドや居酒屋が多い西大通りと違い、清潔感が漂う通りだった。


「ね、ねえ、いつまで手を握っているつもり? 逃げないって……」

「よく知らない所に来たら迷子になるかもしれないでしょ。一応だよ、一応」


 レオンはヴィミの手を握りながら、彼女をエスコートする。


 ヴィミは、無性に回りの視線を気にしていた。振り払うのは簡単だが、放そうとしない。


 そのままの流れでレオンとヴィミは東大通りにある、彼女の行きつけの焼き肉屋に入った。


 牛人の店長が目を丸くする。


「ヴィミにも春が来たのか。そうか、そうか~」

「そ、そういうのじゃないからっ」


 ヴィミは琥珀色の瞳を三白眼にしながら叫ぶ。

 昼間から肉を食べている客たちの肴にされたのか、おおいに笑われていた。


 ここは食べ放題の店で、混雑牛や豚、鶏など、バリエーション豊かだった。

 炭火でしっかりと火を通し、店長お手製のソースでいただく。

 昼間だと夜よりお手頃価格で楽しめるため、ヴィミも通い詰めている。


「はぁ、もう、知らない……。お腹減った。好きなだけ食べる」


 ヴィミは周りの声を無視し、テーブルに並ぶ肉に集中する。


 両者は飲食店特有の喧噪の中、牛や豚の脂身が炭火で弾ける音を聞き、溢れる唾液を飲み込む。

 各自、好きな焼き加減で食べ始めた。


「焼肉を食べると昼間からエールを注文したくなるね」

「エールを飲むと腹が膨れて肉が沢山食べられなくなるから私は水しか飲まないわ」


 レオンは昼間にヴィミと食事するのが初めてだった。

 肉を食べている時の彼女は顔の周りに花畑が舞いそうなほど笑顔だった。

 肉を頬張る姿を見ているだけで、血が沸き立ち胸が高鳴り、心が躍る。

 彼女の露出度が高い服も相まって、鼻息が少し荒くなる。


 ――み、見すぎたらだめだ。手が止まってしまう。


 視線に気を付けながら、食事に集中した。食べて体力を付ける。


 レオンは九〇分間、肉を食べ続けた。だが、ヴィミに圧倒的な差で負けた。男の沽券をまた一つ失う。

 皿の枚数が倍ほど違うと、食べる量に男女の違いなど関係ないとわかる。


「ヴィミはこの後、何をするの?」

「いつもなら別の食べ放題をはしごするけど……」


 ヴィミは頬杖をつき、視線を反らせながら呟く。


「レオンはこの後、レベル上げに行くんでしょ。まぁ、今日は私も、ついて行ってあげてもいいけど」


 彼女は妙にしおらしく、囁くような小さな声で提案した。


「ありがとう、ヴィミ。一人で『耐久』の値を上げるのは心細かったんだよ」


 攻撃せずに、敵の攻撃に当たり続けるのは危険だ。

 仲間がいればいざという時に助けてもらえる。安全を考えるなら、仲間がいた方が確実だった。


「か、勘違いしないでよね。別にレオンが心配なわけじゃないから。今日の出来事で私も未熟だとわかったし、レベルを上げておいた方が今後の活動に生かせると思っただけだから」


 ヴィミは頬を赤らめ、腕を組みながら、人が変わったように強い口調で喋る。

 彼女がどう思っていようと、レオンはヴィミについてきてもらえるとわかっただけで、表情が和らぐ。

 そのため、勘違いもくそもなかった。

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