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インフィヌート ~ダンジョンで倒れた冒険者を救う者の物語~  作者: コヨコヨ


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未練たらたら

「デビルドッグ程度に手こずるなんて、動きが遅すぎるんじゃない?」

「ちょ、ヴィミ、なんでそんなに喧嘩腰なの。あ、あはは、皆、久しぶり。やっぱり、凄いね。このまま、冒険者の仕事を沢山頑張ってね。じゃあ」


 レオンはヴィミの手を取り、道を引き返す。

 その瞬間、リンは金髪が靡くほど勢いよく立ちはだかる。


「な、なんで、レオンが中層にいるの。あと……その子とどういう関係っ」


 しなやかな指先はヴィミに向けられた。


「リン、あまり大声を出すな。魔物に気づかれる」


 ノーリスはリンの口に手を当てる。そのまま、レオンを見つめる。


「レオン、中層にいるということはレベルがあがったのか?」

「そ、そうじゃないんだけど……、救助隊はLv.1でも中層に入れるらしくて」

「救助隊か、なるほど。足が速いレオンにうってつけの仕事かもしれないな」

「そ、そうなんだよ。冒険者より稼げちゃっているくらいなんだ。あはは……」


 レオンは後頭部を撫でながら、苦し紛れに笑う。


 ――きっと皆はもっと有名になっていくだろうな。それに引き換え、僕は人を助けるだけ。どこで、差がついてしまったんだろう。


「へぇ、この人がLv.1で逃げ出したシーフかぁ。ああ、初めまして、俺はLv.2のシーフ、名前はパックスだぁ」


 気配を消していた軽装備の男がレオンの前に現れた。

 パックスは橙色髪の前髪を右手でかき上げながら左手を差し出す。瞳に覇気がなく、中層にいるにも拘らず、肩から力が抜けていた。


 ――に、逃げたわけじゃない。Lv.2にあがっていれば、そこにいたのは僕なのに。


 レオンがLv.1なのは事実。

 彼は作り笑顔のまま、パックスと握手を交わした。

 その間、ヴィミの鋭い視線がレオンの横顔に突き刺さる。


「じゃ、じゃあ、僕たちの仕事は済んだから、皆も気を付けて」


 レオンはヴィミを引っ張りながら上層に向って逃げるように走る。


「なによ、冒険者に未練たらたらじゃない。あと、いつまで手を握っているつもり?」


 ヴィミは一二層のボス部屋に入り、魔物の脅威が去ってから口を開く。


「ご、ごめん。忘れてた」


 レオンは表情を曇らせたまま、咄嗟に右手を放した。彼女から視線を反らし、耳が少しずつ赤くなる。


「仕事中に私情を挟まないでくれる。あの冒険者パーティーとレオンがどういう関係か私は知ったことじゃない。レオンも仕事上関係ないから、冒険者とからむ必要はないわ」


 ――ヴィミの方から絡んでいたのに。でも、確かに仕事中に私情を挟むのは救助隊として失格だ。目の前の仕事に全力で取り組まなければ、ヴィミの命にも拘わる。


「ごめん。今の僕の仲間はヴィミだった。救助隊パーティーのシーフとして気を引き締めるよ」

「勝手に仲間呼ばわりしないでくれる。不愉快よ」


 ヴィミは腕を組んで踵を返した。

 尻尾がピンと上を向いている。耳がパタパタと動き、熱を逃がしていた。


「ま、まあ、一人で働くよりは効率がいいから、今のところは同業者として扱ってあげるわ」

「ありがとうって言えばいいのかな?」


 両者は『インフィヌート』からウルフィリアギルドに戻る。レオンはルークス銀板二枚をヴィミから受け取る。


 レオンは八日間、午前中だけ働いてルークス銀板二一枚稼いだ。

 ルークス金貨二枚近い金額。

 王都で働いている一般人の一〇ヶ月分近くの賃金だ。

 救助隊は冒険者のように武器を大きく消耗せず、ポーションも必要とせず、人を雇う必要もないため、お金の使いどころが比較的少ない。

 そのため、どんどん貯まっていく。


「あの、こんなに稼いでもいいんですか?」


 レオンは首をかしげながら、キアズに話しかけた。


「ここまで安定して稼げる奴はウルフィリアギルドの中でレオンとヴィミの組だけだ。失敗もなく、危険な中層での仕事も完璧にこなせている。驚いているのはこっちの方だぞ」


 キアズは眼鏡を掛け直した。


「問題児だが、成績が優秀だったヴィミもレオンと組んだ結果、仕事の安定感が何倍も増した。ウルフィリアギルドとしての利益も上場、感謝感激している。いい仕事するやつが儲けるのは当たり前だ。気にするな」


 彼は微笑みかけながらレオンの肩に手を置き、数回叩く。


「稼いだ金は好きなように使えばいい。ルークス銀板一枚あれば良い女が集まっている高級店に行ける。たまには気分を晴らすのも悪くない。まあ、レオンはそういうタイプに見えないが」

「まあ、興味はありますけど、ちょっと、まだ気持ちの整理が……」

「これだから男は。冒険者になりたがる男なんて全員ヤリチンなのよ。ほんと、死ねばいいのに」

「へ、偏見が酷い」


 ヴィミは捨て台詞を吐きながらウルフィリアギルドを出ていく。その後ろ姿は前より背筋が伸びていた。


「キアズはいるか?」


 シグマが息を荒げながらウルフィリアギルドに入って来た。


「どうした、シグマ。いつになく慌てているな」

「初心者を脱した冒険者たちの被害が最近多いと思ってな。中層の一三層、一四層でことごとく打倒されている。そんなすぐに躓くような奴らじゃないと思うんだが、妙だと思わないか?」

「中層は上層と難易度がまるっきり違う。今は冒険者に夢見て多くの若者が集まってくる時代だ。誰よりも先に強くなりたいと焦っていたのかもしれない。焦りは失敗を招くからな」

「ううむ、これ以上、中級冒険者の被害が続くのは避けたい」

「中級冒険者だけではなく、新人冒険者の被害も増えている。湧くように冒険者が集まるから指導を疎かにしているわけじゃないだろうな?」

「そんな訳ないだろうが。新人教育が必要ないお前には俺の苦労がわからないだろう」

「数が少ない中でやりくりする苦労に比べれば、新人教育なんてありがたいくらいだろうが」

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