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インフィヌート ~ダンジョンで倒れた冒険者を救う者の物語~  作者: コヨコヨ


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デビルドッグ

 レオンの目の前から四メートル近い壁が迫りくる。


 ――今、動けば、フレアリザードも攻撃箇所を変える。回避からのカウンターを喰らいかねない。ギリギリまで引き付けるんだ。


 レオンは奥歯をかみしめながら姿勢を低くし、距離が五メートル以内になった瞬間に一歩踏み出す。


「おっらああ」


 攻撃を紙一重で回避し、ワニのような顎にナイフの刃を滑らせる。

 フレアリザードの顎に傷はつかない。だが、攻撃を当て、回避するという目標は達成した。


 獲物を捕らえられなかったフレアリザードは鋭い爪が付いた前足を持ち上げ、レオンに振り下ろす。

 当たりどころが悪ければ即死する威力の攻撃がレオンに迫る。


「だ、大丈夫……、僕なら出来る」


 レオンは手足が氷水に浸かっているように震えた。それでも爪にナイフの刃を滑らせ、受け流すことに成功。

 連続の切り裂き攻撃にも対応し、尻尾の不意打ちは宙を舞って華麗に躱す。


「た、戦えている?」

「ダメージは全然入っていないけどね」


 ヴィミはフレアリザードの頭上に飛び、握り拳を光らせた。

 だが、フレアリザードは空中で無防備な彼女に長い尻尾の一撃を向けた。


「ギリギリ行けるかな。【瞬歩】」


 空中にいたヴィミは、口をぽっかり開けているフレアリザードの前に瞬間移動。


「【獣拳】」


 彼女はスキル名を発しながら右拳を顎下に打ち込み、全長一〇メートル以上の巨体を紙ぺらのように吹っ飛ばす。

 衝突の際に拳が音速を超えソニックブームが発生し、レオンも風圧で吹っ飛んだ。


 地面に背中から叩きつけられたフレアリザードは赤い鱗と爪のドロップアイテムに変わる。


「やっぱり、改めて見ても凄い威力。【瞬歩】も使い勝手がいい魔法だね」

「これくらいLv.2なら普通でしょ」


 ヴィミは無表情のまま赤い鱗と爪を回収。何食わぬ顔で開いた一三層に続く階段に向かう。


 尻餅をついていたレオンは立ち上がる。刃こぼれしていないナイフをホルスターにしまった。

 その後、一人でズンズンと進んでいくヴィミの肩甲骨が浮き出ている綺麗な背中を追う。


 両者は一三層を突っ切り、一四層に突入。


 レオンは中層に潜るだけで身が震えていた。

 フレアリザードと戦っていた時以上に喉が乾燥し、脈拍が早まっている。

 それでもシーフの仕事は怠らない。ヴィミの命に係わるため、魔物の気配察知と罠の解除に勤しむ。


 下の層に潜るほど捜査範囲が広くなるため、探し物を見つけるのは難しい。

 そのため、獣族の異様に当たる勘を持つヴィミは救助隊に向いていた。だが、一人では集中力に限りがある。罠の解除と索敵をレオンに任せるだけで、集中力が長続きした。レオンのおかげで安全が確保できているのが大きい。


「そろそろよ」


 ヴィミの数キロ先の地面に針が落ちる音も聞き洩らさない耳が動く。


「あれは……」


 レオンは物音を立てず、物陰に隠れた。天井が広がったダンジョン内で交戦中の冒険者を見つける。


「カリー、デビルドッグの『火炎放射』が止まったら、俺が前に出る。リンは魔法の準備、ダルシーは回復の準備。パックスは他の魔物がいないか警戒しておいてくれ」


 レオンはなつかしさすら覚える、ノーリスの頼もしい声を聞いた。


 仲間を守る大きな盾を持ったカリーは、魔物が放つ強烈な炎を受け止めていた。

 敵の数は三頭。黒黒とした皮膚が特徴的なデビルドッグという魔物だ。

 耐熱加工が施されているのか、盾が溶けることはなくデビルドッグの攻撃が納まる。

 その瞬間を見計らい、ノーリスが低い姿勢で飛び出した。一頭の首を切り裂くと流れるように二頭目も撃破。

 背後に位置する個体が首に噛みつこうと飛び掛かるも、後方で待機していたリンが光る杖先を前方に向ける。


「【サンダーアロウ】」


 黄色に光る魔法陣から稲妻のような速度の矢が射出された。

 電の矢がデビルドッグの体を射抜き、強烈な電撃を浴びせる。

 口から煙が噴き出し、肉体が牙のドロップアイテムに変わる。


 熱の影響でカリーの顔の皮膚は酷い火傷を負っていた。

 ダルシーは胸が激しく動くのもいとわず駆け寄り、「【癒しの光】」と耳を擽るような優しい声で呟く。小さな手の平が光り、火傷した皮膚が治っていく。


 レオンにとって、よく見慣れた光景だった。


「さすが中層、徘徊している魔物も上層と比べ物にならない強さだ」

「ドリミアさんが言っていた通り、盾に耐熱加工を施しておいて正解だったな。そうじゃなかったら、纏めて丸焦げだった」


 ノーリスとカリーは拳をぶつけ合い、微笑みあう。


「ここにレオンがいたら、さすがに厳しかった」

「ああ、レオンの判断は正しかったのかもな」


 レオンは久しぶりに再会した元仲間が危機を乗り越える姿を見て、詰まっていた息を大きく吐き出す。


 ――僕が抜けて意味があったみたいだ。


 彼はいつの間にか硬い拳を作っていた。


「なに呆けているの。さっさと救助カードを回収するわよ」


 ヴィミはレオンの尻を叩き『聖者の騎士』の奥に見える救助カードを指さした。


 一三層から現れるデビルドッグの被害もまた、シャドウウルフと同じくらい出ている。

 上層の魔物は近距離攻撃しかしてこない。

 だが、中層に入ると魔法攻撃に似た遠距離攻撃を放ってくる魔物が一気に増える。

 その中でもデビルドッグは冒険者パーティーにとって脅威だった。

 不意を突かれる、又は対策を怠っていれば、一頭が相手でも容易く壊滅させられてしまう。

『聖者の騎士』はデビルドッグに勝てている時点で中級冒険者としても優秀といえる。


 レオンはヴィミの後姿を見ながら口を開くが言葉は出ない。近寄り、離れを繰り返す。

 その間にヴィミは通路に落ちていた四枚の救助カードを拾い上げた。

 所持品は消し炭になっている。

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