第45話 窮地の底力
────────────!!!!
絶叫。
マナ流動の濃い前脚を断たれた、魔獣の慟哭だ。
手刀でその鋸の左手を圧し斬ったロザリアは、即座に背後に飛び間合いを取る。
そのままの足でお互い近づき、クリスティナ達への道を塞ぐようにしてロザリアと2人で奴に相対した。
レプティの甲高い鳴き声が止み、血走った目で俺やロザリアを睨んでいた。
その左手からはどくどくと血が流れ続けている。
「ふん、闘うのは結構……後は私たちでお前がバテるのを待つだけだ」
ロザリアの言う通りだ。
あんなに流血して、そのまま動き回って回復するわけがない。
レプティが例え暴れ続けたところで、俺たちの勝ちはもう決まったようなものだった。
だとすれば、あと俺たちがやるべきことは被害をこれ以上受けないようにすることだけ。
深追いはせず、慎重に────────
「ん?」
レプティが、動かない。
だがその目はぎょろぎょろと動き……俺たちを見ていない?
直後、殺気が飛んだ。
「「ッ!?」」
奇襲を考え、視野を広く持つ。
ロザリアも、俺に前方を任せてクリスティナたちへ振り向いた。
だが、何もいない。
目の前にいる手負いの獣だけだ。
そして、レプティの身体に変化が起こる。
眼が、奴の肉体がぼんやりと白く光っている。
気付けばチェーンブレードの轟音は息を潜め、パチリ、パチリと光が弾ける音だけが木々の隙間に吸い込まれた。
「っ、なんだか知らんが企みは先に潰す!」
ロザリアが駆けようとする。
「待てロザリア!
コイツで……十分だッ!」
ロザリアを引っ張って止めながら俺は手に持った槍を投げた。
雷槍が背骨をなぞるように放つ。
だが、それは悪手だった。
雷が、白い光に溶けるように消える。
「! あれは────────」
ひとりでに消えたんじゃあない。
あれは……吸収された!?
「おい、まさか……」
ロザリアが一言溢す。
レプティの瞳に映ったのは、何かの"紋様"。
それだけで、俺たちの背筋は凍った。
ガクガクと身体を震わせ、レプティの周囲を包む白光が大きく弾けていく。
俺の魔法を吸い込む、と言うことは、雷属性の魔法を吸収したってこと。
白い光が、軈てその四肢に集中し……大きく爆ぜた。
その"魔法"は、よく見たことがある。
当然だ、だってそれは"セツナを助けた時も、フェンリル種とやり合った時も俺自身が使っていたのだから。
間違いない。
奴は────────"加速魔法"を行使している────────!!!!




