表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
49/64

Another7 女神の世界3

「しかし、こうして改めてゆっくり話すといってもあまり話題がないですね~」


「そうだな、いつもなら前の世界の話をしたりしてるからな」


「この際ですから、何か他に私に聞きたいこととかないんですか?」


 と言われても10億回もこいつと雑談してたらほとんどの話題が出尽くした。


「じゃあスリーサイズは?」


「えっとー……上から83・55……って何言わせてんですかー!」


 スリーのうち、ツー言っちまってんじゃん。


「乙女に対する礼儀ってもんをわきまえなさい! セクハラで訴えますよー」


「悪かったって」


 「もう、プンプン」と古臭い怒り方をなさるお淑やかな女神様。もうノリ突込みの女神といっても過言ではない。


「なあ、お前って実際は何の女神なんだ?」


「なんの、といいますと?」


「ほら、勝利の女神とかじゃんけんの女神みたいにさ、お前にも異名があるのかと思って」


「あ~、逆に何だと思います?」

 

 これは女性に「おいくつですか?」「えー、何歳に見えます?」のくだりじゃん。めんどくさい。

 見当もつかないので、とりあえずパッと思いつく女神を言っておく。


「自由の女神とかか?」


「ぶぶー、残念!」


 胸の前でバツを作るめがみんにむかついた。


「わかんねーよ、答え教えてくれ」


「正解はー……CMのあと☆」


「どこがスポンサーしてくれんだよ」


「冗談ですよ、ペロ☆」


 下を突き出すめがみんにむかついた。


「私はですね……“死を見守る女神”なのです! キラーン☆」


「死を見守る?」


「そう! ずっとあなたを見守ってきたのですよ? これはもう女神さまからの愛情といって差し支えないですよ?」


「自分で言うな」


「照れちゃって~」


 言ってることはストーカーじみてるが、事実であることに間違いない。この女神は俺が何度死のうと嫌がりもせず、飽きもせず、俺に付き合ってくれた。感謝してもしきれないくらいの施しを受けてきたのだ。

 ノリで冷めた態度をとってきたが、なんだかんだこいつに気を許してしまっている。親しいからこそ、こうやって冗談が言い合える。なるほどこれがツンデレというやつか。別にめがみんのことなんて全然好きじゃないんだからね。





 徐々に辺りが明るくなり始めた。


「時間のようですね〜」


「もう時間? 意外と早いな」


「それだけ、私たちが語りつくしたということでしょう」


「まあ、たまにはいいな。こうやってゆっくり話すのも」


「そうですね」


「それにしても何事も起こらなかったな。神にしては珍しくハッピーな終わり方だな」


「……神様は私に甘いですからね。私と一緒にいたからバッドエンドは避けられたのでしょう。私に感謝してください」


「ああ、ありがとな。めがみん」


「…な、なんでこういうときだけ素直なんですか!」


「いや、いいだろ別に。9億9999万9999回記念だよ」


「……せめて……せめてあと一回後の、キリのいいところでやってくださいよ……」


 だんだん声が小さくなっていく。なんだか震えているようにも聞こえる。この光のせいなのか、あいつの声が小さいのか。



「今回の転生特典はお前だったのかもな」


 何気なく、そう言った。心からの一言だった。ちょっと感動のシーンにしよう、たまにはデレてやろう。そんなちょっとしたいたずら心だった。


「…うっ……うう……もうっ! なんでそうやって、こんなときだけ……!」


 今にも泣き出しそうな声だった。こんなめがみんは初めて見た。


「ありがとな、めがみん。お前がいなかったら俺はここまでやってこれなかった。お前が俺の女神でよかったよ」


「……ううっ、なんでっ、なんでっ、ずるいよっ!!」


 女神の頰に涙がつたう。光のせいか、とても澄んでいて輝いて見えた。


「泣くなよ、またそのうち来るんだからさ。次が10億回目になるな」


「……そうっ……ですね」


「ほら、いつも通り笑えよ、めがみん。お前は笑ったほうが似合う」


「……そういうこと言うからぁぁっっ!!!」


 ボロボロと大粒の涙を流して、顔をくしゃくしゃにして泣きじゃくる。そんなに泣かせるつもりはなかった。


「あぁー! もぉー! 泣かないって決めてたのにぃ!! どうしてくれんですかぁ!! この空気読め男っ!! 鈍感無自覚難聴主人公っ!! あなたって人はほんとにもうっ!! ほんとにもう……!!」


「わ、悪かったって。ほ、ほら、次はどんな世界なんだ?」


 女神は袖で涙を拭った。目は真っ赤に腫れている。

 そして咳払いして、いつもの質問に答えた。


「……ハア……グスン。それは…神のみぞ知る……」


 いつものセリフ。そこにいつもの元気はなかった。まあ、どこへ行くかはだいたい想像はつく。


 光が全身を覆い始めた。めがみんの顔はもう見えない。



「わ、私もあなたの担当で良かったと思っています。あなたに神のご加護があらんことを心から願っています。だから最後に一つだけ!」


「なんだよ?」


「命を……大事にしてください!!」


「なんだよ、今さら」


「絶対ですよ、その命で何ができるかちゃんと考えるんですよ!」


「ああ」



「…………!!」



 最後に女神が何か言っていたが、よく聞き取れなかった。まあ、次会った時に聞こう。


 それよりも、次の世界だ。神は俺の願いを叶えると言っていた。ならば地球に帰れると言うことだろう。

 地球に戻ったら何しよう。あれして、これして……


 期待に胸が膨らむ。妄想に胸が躍る。ああ、この時間が面白いのかもしれない。





 そして、意識は飛んで行った。









★★★★




 私はその光が消えるまで、彼に手を振り続けた。こんなの……こんなの辛すぎる。


 敬語を使うのもぎこちないし、思い出は蘇ってくるし、とにかく泣くのをこらえるのに必死だった。こんな時に限って彼はあんなことを言うから、もう耐えきれなかった。ほんとうに彼は主人公体質だなぁ。


 ああ、女神がこんなにつらいものとは思わなかった。

 

 神様は私に甘くなんてないんだよ。あーあ、なんでこのタイミングで戻しちゃうかなぁ。

 この世界の終幕は、彼にとってはハッピーエンドでも、私にとってはバッドエンドになっちゃうじゃん。


 それも仕方がないか。私は彼を応援し続けると決めたのだから。私は彼を見守り続けると決めたのだから。



 自然と涙が流れてきた。さっきのでもう涙は枯れたと思ったのに。


「もう……泣いていいんだもんね……?」


 もう彼は目の前にいない。

 そのはずなのに、いや、だからこそ、呼吸が荒くなっていく。

 そうだ、彼の前じゃないからもう強がらなくていいんだ。






「うわあぁぁぁぁぁああん!!!! うみかわしょうごのばかあぁぁぁぁ!!!!」


 






ここまでお読みいただきありがとうございます。


投稿再開後毎日投稿をしてきましたが、ここから変則的に更新します。

投稿予定日、予告は活動報告をご覧ください。


完結に近づいてまいりました。ここまで読んでくださった方に、楽しかったと言ってもらえるように精いっぱい書きます。これからもよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ