Another7 女神の世界3
「しかし、こうして改めてゆっくり話すといってもあまり話題がないですね~」
「そうだな、いつもなら前の世界の話をしたりしてるからな」
「この際ですから、何か他に私に聞きたいこととかないんですか?」
と言われても10億回もこいつと雑談してたらほとんどの話題が出尽くした。
「じゃあスリーサイズは?」
「えっとー……上から83・55……って何言わせてんですかー!」
スリーのうち、ツー言っちまってんじゃん。
「乙女に対する礼儀ってもんをわきまえなさい! セクハラで訴えますよー」
「悪かったって」
「もう、プンプン」と古臭い怒り方をなさるお淑やかな女神様。もうノリ突込みの女神といっても過言ではない。
「なあ、お前って実際は何の女神なんだ?」
「なんの、といいますと?」
「ほら、勝利の女神とかじゃんけんの女神みたいにさ、お前にも異名があるのかと思って」
「あ~、逆に何だと思います?」
これは女性に「おいくつですか?」「えー、何歳に見えます?」のくだりじゃん。めんどくさい。
見当もつかないので、とりあえずパッと思いつく女神を言っておく。
「自由の女神とかか?」
「ぶぶー、残念!」
胸の前でバツを作るめがみんにむかついた。
「わかんねーよ、答え教えてくれ」
「正解はー……CMのあと☆」
「どこがスポンサーしてくれんだよ」
「冗談ですよ、ペロ☆」
下を突き出すめがみんにむかついた。
「私はですね……“死を見守る女神”なのです! キラーン☆」
「死を見守る?」
「そう! ずっとあなたを見守ってきたのですよ? これはもう女神さまからの愛情といって差し支えないですよ?」
「自分で言うな」
「照れちゃって~」
言ってることはストーカーじみてるが、事実であることに間違いない。この女神は俺が何度死のうと嫌がりもせず、飽きもせず、俺に付き合ってくれた。感謝してもしきれないくらいの施しを受けてきたのだ。
ノリで冷めた態度をとってきたが、なんだかんだこいつに気を許してしまっている。親しいからこそ、こうやって冗談が言い合える。なるほどこれがツンデレというやつか。別にめがみんのことなんて全然好きじゃないんだからね。
徐々に辺りが明るくなり始めた。
「時間のようですね〜」
「もう時間? 意外と早いな」
「それだけ、私たちが語りつくしたということでしょう」
「まあ、たまにはいいな。こうやってゆっくり話すのも」
「そうですね」
「それにしても何事も起こらなかったな。神にしては珍しくハッピーな終わり方だな」
「……神様は私に甘いですからね。私と一緒にいたからバッドエンドは避けられたのでしょう。私に感謝してください」
「ああ、ありがとな。めがみん」
「…な、なんでこういうときだけ素直なんですか!」
「いや、いいだろ別に。9億9999万9999回記念だよ」
「……せめて……せめてあと一回後の、キリのいいところでやってくださいよ……」
だんだん声が小さくなっていく。なんだか震えているようにも聞こえる。この光のせいなのか、あいつの声が小さいのか。
「今回の転生特典はお前だったのかもな」
何気なく、そう言った。心からの一言だった。ちょっと感動のシーンにしよう、たまにはデレてやろう。そんなちょっとしたいたずら心だった。
「…うっ……うう……もうっ! なんでそうやって、こんなときだけ……!」
今にも泣き出しそうな声だった。こんなめがみんは初めて見た。
「ありがとな、めがみん。お前がいなかったら俺はここまでやってこれなかった。お前が俺の女神でよかったよ」
「……ううっ、なんでっ、なんでっ、ずるいよっ!!」
女神の頰に涙がつたう。光のせいか、とても澄んでいて輝いて見えた。
「泣くなよ、またそのうち来るんだからさ。次が10億回目になるな」
「……そうっ……ですね」
「ほら、いつも通り笑えよ、めがみん。お前は笑ったほうが似合う」
「……そういうこと言うからぁぁっっ!!!」
ボロボロと大粒の涙を流して、顔をくしゃくしゃにして泣きじゃくる。そんなに泣かせるつもりはなかった。
「あぁー! もぉー! 泣かないって決めてたのにぃ!! どうしてくれんですかぁ!! この空気読め男っ!! 鈍感無自覚難聴主人公っ!! あなたって人はほんとにもうっ!! ほんとにもう……!!」
「わ、悪かったって。ほ、ほら、次はどんな世界なんだ?」
女神は袖で涙を拭った。目は真っ赤に腫れている。
そして咳払いして、いつもの質問に答えた。
「……ハア……グスン。それは…神のみぞ知る……」
いつものセリフ。そこにいつもの元気はなかった。まあ、どこへ行くかはだいたい想像はつく。
光が全身を覆い始めた。めがみんの顔はもう見えない。
「わ、私もあなたの担当で良かったと思っています。あなたに神のご加護があらんことを心から願っています。だから最後に一つだけ!」
「なんだよ?」
「命を……大事にしてください!!」
「なんだよ、今さら」
「絶対ですよ、その命で何ができるかちゃんと考えるんですよ!」
「ああ」
「…………!!」
最後に女神が何か言っていたが、よく聞き取れなかった。まあ、次会った時に聞こう。
それよりも、次の世界だ。神は俺の願いを叶えると言っていた。ならば地球に帰れると言うことだろう。
地球に戻ったら何しよう。あれして、これして……
期待に胸が膨らむ。妄想に胸が躍る。ああ、この時間が面白いのかもしれない。
そして、意識は飛んで行った。
★★★★
私はその光が消えるまで、彼に手を振り続けた。こんなの……こんなの辛すぎる。
敬語を使うのもぎこちないし、思い出は蘇ってくるし、とにかく泣くのをこらえるのに必死だった。こんな時に限って彼はあんなことを言うから、もう耐えきれなかった。ほんとうに彼は主人公体質だなぁ。
ああ、女神がこんなにつらいものとは思わなかった。
神様は私に甘くなんてないんだよ。あーあ、なんでこのタイミングで戻しちゃうかなぁ。
この世界の終幕は、彼にとってはハッピーエンドでも、私にとってはバッドエンドになっちゃうじゃん。
それも仕方がないか。私は彼を応援し続けると決めたのだから。私は彼を見守り続けると決めたのだから。
自然と涙が流れてきた。さっきのでもう涙は枯れたと思ったのに。
「もう……泣いていいんだもんね……?」
もう彼は目の前にいない。
そのはずなのに、いや、だからこそ、呼吸が荒くなっていく。
そうだ、彼の前じゃないからもう強がらなくていいんだ。
「うわあぁぁぁぁぁああん!!!! うみかわしょうごのばかあぁぁぁぁ!!!!」
ここまでお読みいただきありがとうございます。
投稿再開後毎日投稿をしてきましたが、ここから変則的に更新します。
投稿予定日、予告は活動報告をご覧ください。
完結に近づいてまいりました。ここまで読んでくださった方に、楽しかったと言ってもらえるように精いっぱい書きます。これからもよろしくお願いします。




