異世界に築く!忍者の家。
カクレンジャーのオープニングが熱いです。
「家、建てるでござる。」
「家、建てるニャ。」
・・・・・
「家、建てるんですか・・・。」
あたたかな木漏れ日が差し込む森の中、繰り返される状況の変化にティナは幾度も置いて行かれそうになる。「やっぱりこの人たちは別次元に生きてるんだな・・・。」などと心中でつぶやいてみたところでハッっと我に返る。
「ダメです!この大陸内のすべての土地はアルス帝国が支配してるんです!勝手に家なんて建てたら厳罰に処されちゃいますよぅ!」
彼女はあせあせと早口に告げる。彼女の言うように、この大陸の土地はすべてアルス帝国の所有物であり、建物の建設や農地の開拓などを行う場合は正式な手続きを済ませた上で一定の金品を収めなければならない。加えて土地に関する法に限らず、帝国ではあらゆる違反に対しての罰則が厳しい。軽犯罪で極刑に至るケースも多く、これは彼女なりに半蔵たちを心配しての反対であった。
だがしかし忍者二人組は折れない。
「うむ、では仕方あるまい。今晩は寝袋を使って野宿でござるよ。一枚しかないけど。」
「ニャウ。そういうことなら仕方ないニャ。一枚しかないけど。」
息ピッタリに眉をハの字にして困り顔をティナに向ける二人。
「うっ・・・いや、そんなこと私に言われても・・・。」
(なんだろう。自分は全く悪くないはずなのになんだか良心が・・・。)
忍者の猛攻は止まらない。
「うーむ、ミィがネコだったときは余裕で入ったでござるが・・・。」
「ニャウ。なるだけくっついて寝るのニャ。」
(ッ・・!?しかもこのお二人一緒に入るつもりですか!?)
「今夜は熱帯夜でござる。」(キリッ
「寝かさないニャよ?」(キリッ
(えっ・・・ええっ・・・ちょちょちょっとおお!?!?)
忍者二人の精神攻撃が功を奏し、とうとうティナが折れた。
「不健全です!!まだ年端もいかないあなたたちがそんなに密着して一晩中その・・・熱帯夜を過ごすなんて!!分かりましたよ!帝国の人達がめったに通らなそうなところに案内してあげますよ!!」
ぜぇはぁと息を荒くしてまくしたてるティナ。ちょっと意地悪が過ぎたかなと今度は忍者二人組がいたたまれなくなり目をそらす。
「その代わり、帝国兵に見つかっても私は責任負いませんからね!あと私の名前も絶対に出さないでくださいよ!」
「うむ、かたじけない。」
「あなたのそのチョロいところ好きですニャ。」
(このネコ・・・。)
ティナの心に修羅が宿る。
「っていうかこれから建築だなんて、どっちにしろ一晩はかかるんじゃないですか?」
最もな意見である。もう既に日は高く上っており、2人での作業となると、たとえただのプレハブ建築でも日没までに間に合うとは到底思えない。
だがしかし一般人の常識に囚われないのがこの二人。
「そこは、ホラ。」
「うぬ。」
「「忍者だから。」」
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ズッドドドドドドドッドドドドドドドド!ッブアアアアアアアアアアアアアアアアアァァン!ガキンッガキンッガンガンガンガン!!
「・・・・。」
澄んだ川のほとりでは木々が風に揺れそれに合わせるように足元に降り注ぐ光もせわしなく形を変える。そんな穏やかな情景とは場違いな騒音を聞きながらティナは目の前で次々と起こる超常現象を眺めていた。
見えない・・・。作業中の二人が見えない・・・。かろうじて黒い線みたいなのがちょいちょい見えるが。何が起こってるのか分からない。
帝国騎士のエリートが肉体強化の魔法を使ってもここまでの速度は出ない。
ましてその速度で建築工事だなんて・・・。
「日が暮れる前に終わらすでござるーーーー!!!!」ゾバババババババッ
「ツーバイフォーなのニャーーー!!!!」ズバババババババッ
「ツーバイフォーは今回違うでござるーーー!!!」ガインガインガイン!
「そもそもツーバイフォーってなんニャーーーーー!!!」ヴィイイイイイイイイン!
時折わけのわからないことを口にしながら高速で動く黒点Aと黒点B。
ティナが二人を連れてきたこの場所は、先ほどまでいた川からしばらく上流までさかのぼった地点。
先ほどよりは大きな岩が多くなり工事には不向きかと思われたが、帝国兵はあまり森の深部までは入ってこない。少しの不便と目の前の二人の首を天秤にかけた結果のこの判断だった。
だが前述した工事上の不便はこの二人には関係なかった。
「掘ってくぅ!でござるぅぅぅぅ!!!」ズガガガガガガ!!
半蔵は小石や岩などが頻繁に埋まる地面を高速回転する両腕でゴリゴリ削りながら長方形の溝を掘っていく。
「砕いてくぅ!なのニャアアア!!!」ガガガガガガ!
ミィはその辺の岩を目にもとまらぬ速さで細かく砕いて半蔵が掘った溝を砂利で埋める。
「あんまり無理してケガしないでくださいよーっ!」
二人が工事を行う周辺は砂利や小石が飛び交い戦場もかくやというような状況なので、ティナはちょっと離れたところから現場に呼び掛ける。
「承知でござるー!」
「心配性なあなたが大好きニャー!」
作業の手を一瞬止めて元気に手を振る二人。
(・・・なんだか心配するのがバカらしいですね。)
もうあの二人はケガの心配とかいう次元にいないような気がする。
それから5分とかからず忍者二人の力技によって基礎工事は終わりを迎えようとしていた。
「お次は柱をぶっ立てていくでござる!」
「手早く組んでいくニャ!」
「ハァッ!」
ダンッ!
彼の身長を優に超える材木をいくつか持った半蔵が地を蹴る。それなりの質量をもつ物体が飛び立つことによって、少し離れたティナのところまで振動が伝わってくる。
「ヌゥンッ!!」
今度は空中で柱を投げたかと思うと、けたたましい音とともにまるで機械のように規則正しく木材が地面に突き刺さる。
「縦横に組んで強固なつくりにしていくニャ!」
ミィは残りの木材の一部を柱をもとにして組み立てる。
ちなみにこの木材は半蔵が森からいくつか選んで伐採し、ミィの「マイクロウェーブの術」なるトンデモ忍法で乾燥させたものである。
組んだ後にバラバラにならないように、接合部には特殊な凹凸の加工を施してある。
金属加工はさすがに出来ないので、釘を使わず木を組みながら建てる。日本に古くから伝わる在来工法での建築になる。
「木材はあらかじめ加工してあるのであとは基本的に組んでいくだけでござる。」
実際はそんなに簡単な話ではないのだが、忍者二人に常識は通じない。
ほどなくして家の大まかな骨組みが完成する。
「見たことのない作りの家ですね!このままでもすでに一晩明かせそうですけどまだ続くんですか?」
「壁を作るのニャ。」
「今から土を塗っていくでござる。」
まだ家の四方を囲む壁は竹を組んだ網のような状態である。ここに特殊な土を塗って乾燥させることで、湿気に強く断熱効果も抜群な土壁が出来上がる。
ジャリジャリジャリジャリ・・・。
「なんだか先ほどよりゆっくりですね。」
ティナが言うように二人の動きは先ほどの人外めいたものでは無くなっていた。
「この作業は急げばいいってものではないのニャ。」
「しかしこの作業は土が乾ききるまでにすべて終わらせなければいけないでござるよ。慎重ながらテキパキ終わらすでござる。」
土が完全に乾いてから隣の壁を塗り始めると建物の強度が落ちると考えられている。しかしあまり急ぎすぎて先ほどのペースで作業をすると、素材が柔らかいのでどんなに注意しても壁に荒い波が立つ。急ぎつつかつ慎重に作業を進めなければならない。
ペタペタジョリジョリと二人は先ほどまでのテンションがウソのように黙って壁を塗り続ける。
(この二人があんなに真面目そうな顔でチマチマ作業しているのを見るとなんだか違和感が・・・。いや、さっき会ったばかりなんだけれども。)
ちょっぴり失礼なことを考えながら待つこと1時間。ようやく壁塗りが終わったようだ。
壁を塗り終わった後は簡単なつくりの扉を取り付け、天井に板を張り、廊下やその他各部屋の木くずや端材を片付けて・・・。
「完成ニャー!!」
「完成でござるー!!お疲れでござるよ。」
とうとうこれからの拠点である家が完成した。二人で住むことを考えて作られているので少し小さめではあるが、外観は和を基調とした庵のような形にまとまっている。背後のうっそうと茂った木々や小川ともマッチして、何とも言えない情景を作り出す。
互いの労をねぎらうミィと半蔵のもとに、先ほどとは一変して目をキラキラさせたティナが駆けよってくる。
「お疲れ様です!今日一日で建てるなんて言うからどんなほったて小屋ができるかと思ってたんですが、素敵なお家ですね!なんだかこれまでに感じたことのないような趣きを感じます!!」
ティナは日本のことなんて何も知らないので、「和の趣き」なんて当然分からないが、始めて見る者でも感じるところがあったのだろう。ピョンピョン跳ねながら家の感想を述べる。
興奮を隠さない少女のリアクションに忍者二人もちょっぴり得意顔である。
「ティナ殿、お世話になったでござるよ。もし迷惑でなければこれからもここら辺のことをいろいろ教えてくれると助かるでござる。」
「ふふっ、迷惑は今更ですよ。それにお二人には危ないところを助けてもらいましたし。私でよければ力になります!度々ここにも遊びに来たいですしね。」
ティナがなかまになった!!
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ティナに最初に出会ってからそれなりに時間が立ち、太陽が山影と重なり始める。
心なしか森もすこしずつ静かになってきた。
「今日はもう遅いから送ってくのニャ。街はここから近いのニャ?」
「いいんですか?ええと、そうですね。街まではだいたい徒歩で2時間くらいです。」
「ニャァー、そんな距離を歩いてきたんニャ?じゃあ帰りは快速ニンジャタクシーで帰るニャ!!」
ミィはティナの目の前でおんぶの姿勢になる。
「ええ?そんなの悪いですよ!」
「でも今からだと暗い森の中を一人で歩くニャよ?それに昼みたいに危ない動物とかいるかもなのニャ。」
「拙者達なら10分で着くでござる。」
恐るべし忍者の脚力。普通の人間にこんなことを言われたら相手の頭の健康を心配してしまうが、さっきから起こる軌跡を続けて見ているティナはすんなり受け入れられるようになっていた。
「じゃあすみませんが、お願いします。」
そう言ってミィの背中におぶさるティナ。
「お、重くないですか?」
「ヤワくていい匂いニャ。」
「そんなことは聞いてないです!!」
異界の森に百合の花を咲かせながらミィ、半蔵、ティナの3人はいざ森を出んと踏み出す。
と、そこに
「あ、人がいた!助かったぁ~。貴様ら、すまないが私を街まで案内してくれないか。偵察中に迷ってしまってなぁ~はっはっはっは・・・あれ、何この家。」
鎧を身にまとった男性らしい人物が唐突に声をかけてきた。
ミィが不意を突かれてキョトンとしている中、隣にいた半蔵は見た。
ティナの顔から変な汗が吹き出し顔面がどんどん青くなっていくのを。
最期まで読んでくださった方、ありがとうございました。




