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帝国兵は知る!忍の脅威

創作物の中での「滅多にない」は「絶対ある」。


 (ま、まままままずいですミィさん!)


 顔面蒼白のティナが彼女をおぶっているミィに小声でささやく。


 (どうしたニャ?ただの武装したおっさんなのニャ。)

 (フン、戦闘力たったの5でござるか、ゴミめ。でござる。)


 (半蔵さんさすがに語尾苦しくないですか。・・・じゃなくて!!ああ、ごめんなさい二人とも!せっかく私のことを信用してこの場所を選んだのに!)


 だんだんティナの言わんとするところを理解し始めた2人。


 (まさか・・・。)


 ミィも額に汗して尋ねる。


 (そのまさかです。この人アルス帝国兵ですよ!!)

 

 「「なんと!?」」


 半蔵とミィにも軽く予想はできていたが、ティナの口から改めて事実を伝えられ驚愕をあらわにする。

 最悪の状況である。めったに通らないはずの帝国兵がよりにもよってこのタイミングで森の中からこんにちは。ティナの顔色もどんどん悪くなり、もうほとんど土色である。

 対する鎧のおっさんは徐々に気づいてはいけない部分まで意識を巡らせつつあった。


 「これは見たことのない建築様式の家であるが、貴様らはここの主か?」


 まずい。非常にまずい。返答次第では3人の首が飛びかねない。忍者二人組はどうとでも対処できるが、ティナはそういうわけにもいかない。このタイミングでバレなければミィ達との関係性なんて誰も予想しえないが、今回はまさに現行犯である。


 「おい、どうなんだ。」


 返事がない3人を怪訝に思ってか帝国兵の男が再度尋ねる。


 (どっどどどどどどどうしましょう!?)


 ティナはもうこの世の終わりに立ち会ったかのような表情で忍者二人に助けを求める。

 事実この状況は普通の民であれば生と死の分かれ道である。幸いこの帝国兵は1人なので、命が惜しくば持ちうるすべての財産を賄賂(わいろ)として見逃してもらうか、素直に白状して少しでも減刑を図るしかない。

 ティナがなけなしのお金を探るべく、荷物を確認しようとしたその時、


 (大丈夫ニャ。)

 (拙者たちにお任せでござる。)


 忍者二人組がこちらに対して視線で語りかけてきた。

 正直不安で仕方がないが、この二人を先ほどから見ていたティナの心には一筋の期待の光が差していた。

 今度はどんな奇跡でこの場を切り抜けるんだろう。と。


 「おい!」


 痺れを切らした帝国兵がついに腰の剣に手をかけたその時、ミィが動いた!!


 

 


「ニャァーッ!?あんなところにでっかいドラゴンがー!?」


 

 


 「ッ!?」

 「ええええええええ!?」


 突然のミィの行動に帝国兵とティナは別の意味で驚愕する。


 (ミィさん!?さすがにそれは子供騙しすぎませんか!?一国の守護を任される帝国兵にそんな・・・)


 ティナはもはや声も出ず、心の中でミィのあまりに意外な行動にツッコミを入れる。

 そもそも家から一瞬意識をそらしたところで何の解決にもならないことなど明白である。



 だがしかしそれは普通の人間の話。

 この二人は忍者である。



 (半蔵!!)

 (承知ッ!)


 ミィが指さした方向に帝国兵の意識が一時的に逸らされる。

 その隙にミィと半蔵は互いにアイコンタクトをとり、今度は半蔵が動いた。


 (土遁の術(どとんのじゅつ)でござる!!)


 両手を胸元に高速で印を結ぶ半蔵。

 次の瞬間、帝国兵より一瞬早く家の方に意識を戻したティナは信じられない物を目にする。


 なんと先ほど建てたばかりの家をどこからともなく現れた大量の土が覆い始めたのだ。

 一瞬で家は屋根のてっぺんまで覆われ、ただの巨大な土塊と化した。


 すべての変化が終わった後で、少しフラストレーションの溜まった帝国兵が再び家に意識を向けようとする。


 「なんだ貴様ら、そんな姑息な手でごまかそうなどフアァッ!?」


 少し遅れて先ほどまで家があった場所に目を向けた帝国兵は、少し間抜けな声で驚愕をあらわにする。


 「なッ!?確かにさっきまでここに家が・・・。」

 「はて、なんのことやら?」

 「通りすがりのキツネか陰陽師にでも化かされたのニャ。」


 ここぞとばかりにシラを切る二人の忍者。

 普通ならこんな手は通用しないが、さっきまであったはずの絶対的な物的証拠がなくなった今、帝国兵は混乱の極みに陥れられた。


 「それより道に迷っていたんでござろう?」

 「ミィ達はこれから街にこの娘を送ってくのニャ。おじさんも一緒に行くのニャ。」


 さらなる忍者二人組の連撃。

 実際道に迷って困り果てていたこの帝国兵の男は、今から街に向かうという3人組についていくしかなかい。それに今までの時間ずっと森をさ迷い歩いていたため、これ以上この問題について追及する余力もない。もしかしたら本当に目の錯覚だったんじゃないかと、思考が徐々に都合のいいほうに流れ始める。


 帝国兵の男は大きく咳払いして半蔵たちの方に向き直る。

 

「ゴホンッ・・・すまなかったな貴様ら。私の見間違いだったようだ。さて、日も暮れそうなので早く街の方に案内してくれ。」


 (やったでござる。)

 (チョロいもんだニャ。)


 半蔵とミィは小さく親指を立ててティナを見やる。

 先ほどまで繰り返される驚愕や恐怖に疲れてうつむいていたティナだが、ふっと微笑んで顔を上げると小さく呟いた。


 「もう、なんでもアリなんですねあなたたちは・・・。」


 呆れたように言いながらも、先ほどから目の前で起こる奇跡の数々に、少しだけ心を躍らせ始める異界の少女ティナであった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




某日、アルス帝国城内。



ここは帝国軍幹部の執務室。

所々に高価な調度品が並べられており、部屋の隅から隅まで小綺麗に掃除されていてホコリひとつ見当たらない。

机の上には白で統一された美しいティーセット、端を綺麗に揃えて山積みにされている書類、種類ごとにキッチリ整理された各種のペン等、機械的なほどに整った部屋である。


「それで?お前はそのままノコノコ戻ってきたというわけか。」

 

そして、部屋の主である長身の帝国幹部は不快そうに眉を釣り上げて目の前の鎧の男に問う。


「…申し訳ございませんドリス様。ですが私も見たことのないような現象の連続で対応しきれず…。それに証拠となる家も目の前で消えてしまいましたし…。」


対する鎧の男は頭を下げたままで弁明する。


「証拠なんて些細な問題でしかないんだよ。我々は何の罪もない無垢な国民でさえ大罪人として監獄にブチ込めるんだ。そして現場にいたお前にはそれが出来たはずだ。違うか?」


モゴモゴと言い訳を続ける鎧の男に、ドリスという帝国兵幹部は先ほどより圧をかけて問いかける。


「それが…。私の手に余る相手でして…。」

「なんだと?」


先ほどまでとは違い少し驚いた顔で問いかける。


「お前は帝国兵団の分隊長を任される程度の腕は持っていたはずだな?少し鍛えた程度のチンピラが敵うとは思えないんだが。」


「はぁ。しかし、奴らは恐らくかなりの魔法の使い手。目の前にあったはずの家を瞬時に消してしまった事にも驚きましたが、あの森からここまでの帰り道、肉体強化の魔法をかけた私が何度も引き離されそうになりました。私も魔力量には自信がある方でしたがあれにはとても…。スピードのみならドリス様にも匹敵するやもしれません。」


ドリスは驚きとともに、少しだけ口角を釣り上げる。


「ほう、この僕と…。そこまでの使い手を我が帝国がまだ把握していなかったとは。いいことを聞いた。お前、現場の位置は覚えているな?」


「ハッ!城から南に10キロ程。川の上流付近です。ドリス様まさか・・・。」


これからの展開に大方の予想がついた帝国兵は一応確認をする。

 ドリスは少し意地の悪い笑みを浮かべて答える。


「案内しろ。それで今回の件は不問にしてやる。」


いい笑顔で言い放つ。

 予測はしていたが胃痛が止まない帝国兵の男であった。



最後まで読んでくだすった皆様。ありがとうございます。


感想、ご指摘などございましたらお願い致します。

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