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少女は見た!異界からの来訪者

みなさんこんにちは。ネコミミ好き之助です。

この物語にはオリジナル忍術が多いです。歴史的、科学的な裏付けはありません。

「キャアアアアアアアアアアア!!」


 半蔵とミィが女性の叫び声を聞いたのは森の入り口辺りでのことだった。

声の様子からよほどの緊急事態であることが分かる。



二人は互いに小さく頷いたかと思うと、その場から消えた。



「消えた」というのはあくまでも比喩的な表現であるが、そう思わざるを得ないほどに彼らは速かった。


常人には到達しえないレベルの動体視力は周囲の地形を正確に掴み、またそれに応えうる脚力、腕力、握力は驚異的な推進力を生む。


森の間を飛翔する見たこともない鳥や動物たちを次々と追い越し進む。


 彼らの元居た現世で忍者の認識がおとぎ話の域を出なかった理由もここにあった。

移動中の忍者は速すぎて見えない。そして仮に忍者を認識してしまった者は掟により生きては帰せない。

忍者とそうでない者の間には絶対的な力の差があった。

驚異的な速度で時には地面を、時には木の枝を蹴りながら目的地へ向かう。


 本来なら任務外で一般人の前に姿をさらし交戦するようなことは避けるべきであるが、ここは異世界。忍者という存在を隠し通さなければならないという掟は存在しないし、この世界で初めての知的な種族とどうしても接触する必要があった。むしろこれは好都合である。


 

 距離にして300メートルほどを数秒で駆け抜け、ついに悲鳴があがった地点へ到達する。



炎魔法(ファイア)炎魔法(ファイア)炎魔法(ファイア)ァ!!」


そこには大型の獣のような生物と、その生物に火の玉のようなものを放ち続ける一人の少女がいた。


 金色のゆるいカールがかかった髪は激しい動きに乱れ、白く透き通る肌には玉のような汗を浮かばせる。

瞳には緑色の光が宿るが、呪文の詠唱に合わせてときおり赤く変色する。

 恰好はとてもじゃないが戦闘向きではなく、淡い色ながらも所々にフリルをあしらった、中世の村娘のようなものだった。すぐ隣には山菜やキノコでいっぱいのカゴのようなものが放り投げられている。


 対する謎の生物は、元の世界でいうところのイノシシを巨大にし、サイの角を生やしたようないでたち。高さにして2メートル、横の長さにして4メートルほど。

 顔の両脇についた目は真っ赤な光を放ち、周囲には黒い瘴気のようなものが漂う。

 移動中にいくつかの生物を目にしていたが、明らかに他と様子が違う。


「バルルルルルル・・・」


 独特の鳴き声で威嚇を始める巨大イノシシ。

少女の放つ火球が当たるたびに少しひるんだ様子を見せるが、あまりダメージが通っているようには思えない。定期的に動きを止めながらも少女との距離はジリジリ詰まっていく。それに少女の火球は無限に放ち続けられるものではないかもしれない。


「あまりのんびりはしていられなそうでござるな。いざッ!」


「あんなんワンパンなのニャ!ニャウッ!」


 バササッ


ミィと半蔵はそれまで身を隠していた木の茂みから飛び出し、二手に分かれる。


ミィはイノシシの右側面、半蔵はイノシシの左側面に降り立つ。

両者とイノシシの間には茂みがあり、まだこちらには感づいていない。


半蔵は片手でミィにGOサインを出す。


「目にもの見せるニャ!」


ミィは半蔵から借りた忍装束の中から一本の手裏剣を取り出し、片足を大きく上げて振りかぶる。


「忍法、”大リーグ●ール1号の術”ニャアアアア!!」


「それは絶対怒られるやつでござる!!」


半蔵のツッコミをよそにミィは超速度の手裏剣を放つ。

両サイドからの突然の大声にイノシシが警戒を始めるがもう遅い。



パアアァァァァァァァァン!!!



 手裏剣は破裂音とともにイノシシの頭部を木っ端微塵に弾き飛ばす。

瞬時にして絶命したことは言うまでもないだろう。


 先ほどまでイノシシと対峙していた少女は何が起こったか分からない様子で、炎魔法の詠唱のために大きく開けた口をそのままに固まってしまった。


 イノシシの頭部を通過して若干速度を緩めた手裏剣を、反対側に立った半蔵は深く腰を落として片手でキャッチする。

刃がこぼれないように人差し指と中指で挟むような形で受け止められ、手裏剣は完全に速度を失った。

素手で受け止めたが、空気との摩擦で焼けるような熱さである。


「お主は喋ったことがなかったので知る機会がなかったでござるが、そんな名前を付けてたでござるか。」


「今つけたにゃ。」


「・・・とにかくその名前を今後叫び続けるのは非常にリスキーなので没でござる。」


「ニャんと!?」


 人化して前より表情が分かりやすくなったミィは瞳に涙を浮かべ驚愕する。


 この術は苛烈化する戦場の中で武器が尽きそうなときに使われるものである。相手を挟むように位置し、片方が投げた手裏剣またはそのほかの投擲武器をもう片方がキャッチする。

 元の世界ではネコだったミィも、驚異的なアゴと首の筋力で投擲を行っていた。



 少女はようやく思考が戻り始め、頭部のないイノシシをはさんで漫才を繰り広げる怪しい二人を交互に見る。


 

あっ・・こっちに気づいた。



 こちらを振り返った怪しい二人組がニコニコしながら近づく。



「いやぁー、危なかったでござるな!ケガとか無いでござるか?」 


「間一髪なのニャ!ところでミィたち今ちょこーっと困っててとりあえず人を探して歩いてたんニャけど・・・」



 いい笑顔でずいずい近寄ってくる二人。正直先ほどのイノシシの接近以上に怖い。

なんせ自分の魔法ではまったく歯が立たなかった怪物を一瞬にして屠った素性の知れない二人組である。暗めの藍色で上下統一された服装も怪しすぎる。

 少女は何とか言葉を絞り出す。



「ヒッ・・あ・・・あのっ、助けてくれたことにはお礼を言いダボロロロロロロロロロロ・・・」



 ・・・いやもう仕方がないじゃないですか。



 突然に迫りくる猛獣、目の前で生き物の頭がはじけ飛ぶ光景、それを起こした張本人である怪しい二人組。

 

 

劇的な状況の連続と繰り返される恐怖に体がついていけなくなり、少女の意識は闇に落ちた。

読んでいただいた皆様本当にありがとうございます。

感想、評価、誤字脱字の指摘などいただけるとうれしいです。

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