らいだーぶらぁっ♪
「あっ! サイテンさんじゃないですか!」
休日。サイテンと二人で、ボクは買い物に出かけていた。時間が空いていたサイテンに、ボクから、スーパーへ行こうと誘った形だ。それで、スーパーマーケットで品物を選んでいるときに、男性がサイテンに話しかけてきたんだ。三十代半ばぐらいの男性で、垂れ下がった肩が疲労感を印象付けさせられるね。肩、凝ってそう。サイテンも知ってるみたいで、おっ、と目を丸くしていた。
知り合いいたんだー。当然だけど、なんか新鮮で驚き。
二人っきりなのは、姉さんも誘ったのだけれど、「休日って知ってる? 休む日って書くのよ」なんて言って、部屋でゴロゴロしながら彼氏さんと電話していたから。う~ん。怠惰ってやつだねー。どうせなら腹筋とかウォーキングとか、彼氏さんと一緒に身体を動かしてもいいと思うんだけどね。なんだろうね。
近頃、彼氏さんとの電話、よくするようになってきた。もしかして、ボクに遠慮してたのかな。だとしたら申し訳ないなぁ。遠慮なんかしなくてもいいのにね。ボクは、気にならないし。サイテンも大丈夫みたいだし。あぁ、大丈夫だから電話するようになったのか。納得。
「これはこれは。どうされたんですか?」
「久しぶりの休みができたんで、お酒でも飲もうかと。いやー。いつも助かってますよ」
「それはよかったです。あの後、健康状態はどうですか?」
「それはもう。仕事もはかどりまして、このように一日、休日を取れたんですよ。週七日出勤が、これですよ。夢のようです」
「それはそれは。お役に立ててよかったです」
「本当、お世話になってます。しかし、いや流石ですね。可愛らしい女性をお連れになられて」
男性が、ボクを見て言った。
やっぱり、女性に見えてるみたいだねー。別に女装なんてしてないけどね。誰も気にしないから言わなかったんだけど、初めて女装したときからずっと、髪型がショートボブなんだよねー。よく女性がしてるやつ。いつものような格好をしたって、自分でも鏡を見るとなんか女の人にみえるんだよねー。う~ん……。髪型マジック。一回変わっちゃうとねー。変えるのも面倒だし、あきらめたんだよ。だから女装したときのまんまの髪型。無理に変えたら痛みそうだしね。大地はつっこまなかったから、大丈夫と思ったんだけど。やっぱり女性に見えるみたい。
でも否定はしない。だって、説明、面倒だもん。
ちなみに。下着はボクサーパンツにしたよ。男性も女性も履くでしょ? これ、女性モノだし。だから、変に違和感あるものよりいいかなーって。サイテンに話してみたら、めっちゃ悔しがってたけど。めちゃくちゃ残念がってたけど。ものすごく落ち込んでたけど。いいじゃん。可愛いし。だよね? 可愛いよねぇ? 女の人のって、カラフルだし、いろんな種類があるし。ちょうどいいじゃん。
それもこれも、髪型のせいだ。最初は男性用のボクサーパンツを買おうとしたんだよ? でも、だいたい、こんな女性に見える姿で、男性用下着なんて買えるかってヤツだよ。買えないよ。買えなかったよ。なんか選んでると、おばさんたちに生暖かい目で見られるし。ボソボソと会話してて、「プレゼント?」「クリスマスの?」「そのままホテルへ直行とか?」「ならゴムも一緒に買わなきゃね」「うはっ。若いわねー」とかきゃーきゃー騒がれて、慌てて女性用のコーナーへ急いだよ。下着なんてべつに、姉さんのでも見慣れてるし、自分のものも見たし。ボクサーだし、フツーに買えたよ。店員さんも当たり前のように接してくれるし。ニヤニヤと生暖かく下世話な顔でおばさんたちが盛り上がるより、よっぽどストレスフリーだったよ。女の人って、アレだよね。エグイよね。
「こちら、カオルさんです」
サイテンが紹介してくれた。
「はじめまして。花形といいます」
「そして、こちらは南さんです」
「はじめまして。南光次郎です。サイテンさんにはお世話になりました。なにせ、いつでも寝れる才能をいただきましたからね。すごく、いつも助かっています」
「は、はぁ……」
なんていうか……。
たしか、青いネコ型ロボットといつも一緒にいるメガネくんも、同じ才能持ってたよね?
「サイテンさんはすごいですよぉ。なんせ、週七日出勤の連続で会社に寝泊りすることが続いて、私がストレスでおかしくなって夜中、デスクの上に立ち上がり、『俺は企業戦士ブラァック、RX!』とか叫んで昭和ライダー的な変身ポーズを決めていたら、まるでクライマックス帝国幹部のように唐突に現れまして、才能を与えるとか言うんですよ。当然、私も『おのれゴルゴルめっ!』とかノリに乗っていましたら……、って。女の子にはわからないネタでしたね。ライダーとか。すみません。本当に久しぶりの休日で、どうも躁状態みたいで」
「い、いえ……」
なんていうか……。
病院にいった方がいいよね……? たぶん。
「当時は睡眠時間がまともに取れなくて、おかしくなってたんですよ。そんなときに、サイテンさんに助けていただいたんです。ですから、毎日使わせていただいていますよ、この才能。いや本当、いつも助かってます、サイテンさん」
「お役に立ててなによりです。しがない天使ですが、これからもよろしくお願いします」
「それはこちらこそ! いやぁ。恩人に会えるなんて、今日はいい日だなぁ。では、また」
南さんは指を二本、おでこに指して、そこからボクに向けて振るという昭和臭の漂うナイスガイ的挨拶をして、去っていった。あー、そうそう、ウィンクもあったよ。……う、う~ん。強烈だなぁ。絶対に病院に行った方がいいよね。なんの病院かはわからないけど、とにかく行った方がいいよ。ちょっと普通じゃないというか、なんというか。サイテンも健康状態を気にしていたし、ちょっと、ねぇ。
「彼は南光次郎さんといって、別に肉体を悪の組織にいじられたわけではなく、普通の男性ですよ。たまたまの出会いですが、正気を失っていそうだったので、あのときは焦りましたよ」
「すごい人だねぇ」
「ははは。そうですねぇ。こちらとしては才能を毎日使ってくださるので、ポイントがたまっていくのは嬉しいことなんですけれど……。できれば、転職して欲しいですねぇ。あのままの勢いだと、少し、心配ですから」
「そ、そうだね……。ボクも、そう思うよ」
ちょっと怖いよね。
「でもさっ」
「どうしました?」
「サイテン、すごいねっ!」
「どうしてですか?」
「こうして喜ばれるってさっ。すごいことだと思うよ。尊敬しちゃうよっ」
「え、あ、……はい。ありがとうございます」
照れちゃって、うぷぷぷぷ。
真っ赤、真っ赤だよ。サイテンの顔。
でも本当、すごいねー。素直にそう思うよ。
人に喜ばれるって。なんだかボクも嬉しいよ。
「よーし。ボクも、なんちゃってラザニア、作っちゃうよー」
「た、楽しみにしています……」
「うんうん。楽しみにしといてー」
ボクも。
喜んでもらえるように、ね!




