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7億円で、潰れかけのクラブを買いました ~数字しか見えない俺は、誰も数えない選手を集める~  作者: 猫の飼い主
第六章 順番 ―― 早すぎた

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第76話 【地元】一ノ瀬、やっぱり難あり?【育成】

【B.ONE】潮見ブルーホエールズ 応援スレ Part74


201 名無しの潮見サポ

一ノ瀬、デビューしたけど

……うーん


202 名無しの潮見サポ

>>201 見に行った

最初のブロックは、すごかった

あの跳躍は本物だわ


203 名無しの潮見サポ

>>202 でも、そのあとな

一人で仕掛けて、囲まれて、取られて、の繰り返し

味方、完全に置いてけぼり


204 名無しの潮見サポ

高校のとき、40点取って味方怒鳴ったやつだろ

やっぱ、そういう性格なんじゃね


205 名無しの潮見サポ

去年、スカウトに「頭とメンタルD」「チーム壊すタイプ」って書かれてたって話、あったよな

……当たってたのかも


206 名無しの潮見サポ

つーか、なんで勝負どころで育成枠出したんだ

接戦だったんだぞ

あそこは、経験ある選手だろ普通


207 名無しの他クラブサポ

おじゃま

育成の若手を、競った第4Qで五分も使うのは、ちょっと無い

負けを覚悟した消化試合ならまだ分かるけど


208 名無しの潮見サポ

>>207 だよな

起用が、そもそもおかしい


209 名無しの潮見サポ

これ、郷田さんの采配か?

らしくないな

郷田って、育成をこんな雑に使う人じゃないだろ


210 名無しの潮見サポ

>>209 聞いた話だけど

オーナーが、一ノ瀬使えって言ったらしいぞ


211 名無しの潮見サポ

>>210 は?

宝くじの兄ちゃん、現場に口出しし始めたのか


212 名無しの潮見サポ

>>210 それ本当なら、まずくないか

今まで、選手のことは現場に任せてたから、うまくいってたんだろ


213 名無しの古参

初期から見てる古参だけどな

……今回は、擁護できねえ


214 名無しの潮見サポ

>>213 古参まで

めずらしいな


215 名無しの古参

数字で選手拾うのは、当たってきた

東も、リー・ジュノも、当たった

でも、それは「いるようにする」までの話だ

「いつ出すか」まで数字でやったら、そりゃ壊れる


216 名無しの潮見サポ

一ノ瀬、かわいそうだったわ

最後、誰もパス出さなくなってた

コートで一人ぼっちだった


217 名無しの潮見サポ

就職蹴って来たんだろ、あの子

それで、これか

……見てられん


218 名無しの潮見サポ

まあ、育成だから

長い目で、とは思うけど

昨日のは、さすがに、早すぎた



その夜、Part74は、要実にはっきりと厳しかった。


宝くじの兄ちゃんが、現場に口を出した。育成の若手を勝負どころで潰した。一ノ瀬は、やっぱり、難ありだったのかもしれない。


外野は短期的に正しく見えた。


そして、その通りだった。要は口を出した。一ノ瀬は乱れた。試合は負けた。何ひとつ、間違っていなかった。外野を責めることはできなかった。今回ばかりはあちらのほうが要より正しかった。



同じ夜、一ノ瀬樹は、誰もいない練習場にいた。


一人で、ゴールに向かって、跳んでいた。高校のときと同じだった。誰もいない体育館で独りで打つ。それしか、やり方を知らなかった。


昨日、コートで味方が止まったのが、分かっていた。自分がボールを持つと、四人が動かなくなる。東が走っているのも、黒木が空けているのも、目の端に見えていた。それでも、放せなかった。放したら、外される。外されたら、負ける。体がそう覚えていた。


(……また、だ)


高校のあの三十秒を思い出していた。四十分走って、四十点取って、最後に味方を怒鳴った。あのとき詰め寄った相手は、三年間七人で一緒に走った仲間の一人だった。あれから、その仲間とはうまく口をきけないまま、卒業した。謝る機会もなかった。


子どもには待てた。かけっこで、走れない子の隣で、いくらでも待てた。名前を呼んで、転んでも待って、何回でも付き合えた。あのときの自分と、コートの自分が、どうしても同じ人間だと思えなかった。


なのに、コートに立つと、待てなくなる。


同じ自分なのに、なぜ、違うのか。一ノ瀬は、その答えが分からなかった。ボールを、また壁に投げた。跳ね返りが、暗い体育館に、乾いた音を立てた。


高校の三年間も、こうだった。誰もいない体育館で、独りで、壁に投げていた。あのころと、何も変わっていない気がした。就職を蹴ってここまで来て、それでも、コートではまた一人ぼっちだった。強くなったのは、体だけだ。中身は、あの高校生のままだった。


一ノ瀬は、壁の前に座り込んだ。汗が、床に、落ちた。誰も、拾いに来なかった。まだ、この夜は。

――最後まで読んでくださって、ありがとうございます。

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