↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7億円で、潰れかけのクラブを買いました ~数字しか見えない俺は、誰も数えない選手を集める~  作者: 猫の飼い主
第六章 順番 ―― 早すぎた

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
71/165

第71話 【疑問】うちのトレーナー、一番いい選手を使わせない【必要?】

【B.ONE】潮見ブルーホエールズ 応援スレ Part73


401 名無しの潮見サポ

首位戦、志水いないんだが

なんで?


402 名無しの潮見サポ

>>401 けがか?


403 名無しの潮見サポ

>>402 それが、けがじゃないらしい

ベンチにいる。普通に元気そう


404 名無しの潮見サポ

は?

一番調子いいのに、なんで出さないんだ

首位戦だぞ、去年20点取られた相手だぞ


405 名無しの潮見サポ

トレーナーが止めたって話

疲労がどうとか


406 名無しの潮見サポ

>>405 疲労で外すのかよ

プロは、みんな疲労してるだろ


407 名無しの他クラブサポ

おじゃま

うち、こないだ主力が疲労骨折で3ヶ月離脱したわ

無理させた結果な

……予防で外せるなら、それが正解だとは思うぞ


408 名無しの潮見サポ

>>407 いや、正論なのは分かる

でも痛くもないのに外して、その試合落としたら、意味なくない?


409 名無しの潮見サポ

つーか、うち金ないよな

その金で、トレーナー雇ってるわけだろ

なのに、一番いい選手を、使わせない

本末転倒じゃね?


410 名無しの潮見サポ

>>409 それな

補強に回せよ、その金

選手使わないトレーナーに、なんの意味があるんだ


411 名無しの潮見サポ

首位戦、結果は?


412 名無しの潮見サポ

>>411 負けた

7点差

志水いれば、勝てたかもな


413 名無しの潮見サポ

>>412 うわ

やっぱ出しとけばよかったんじゃ


414 名無しの解説役

横から

「出して勝てた」も「出して折れてた」も、証明できない

どっちも、起きなかったことだから


415 名無しの潮見サポ

>>414 屁理屈だろ

負けは、起きてるんだよ


416 名無しの解説役

>>415 ……そうだな

負けだけが、起きてる

だからこの話、俺には答えが出せん


417 名無しの潮見サポ

なんか、東みたいだな

数字に出ない仕事


418 名無しの潮見サポ

>>417 いや東は勝たせてたじゃん

これは、負けてるんだよ

一緒にすんな


419 名無しの潮見サポ

まあ、7点差の負けだからな

志水がいたら、って思っちゃうよ


420 名無しの古参

……俺は、様子見だな

折れなかったことの価値は、折れたやつが出るまで、分からん


421 名無しの潮見サポ

>>420 古参まで様子見かよ

今回ばかりは、擁護しにくいわ


422 名無しの潮見サポ

とりあえず、次は志水出せよ

勝てる試合、落とすなよ



その夜、Part73はめずらしく、要実に厳しかった。


金がないのにトレーナーを雇う。そのトレーナーが、いちばんいい選手を、使わせない。そして、勝てたかもしれない試合を落とした。


誰も、間違っていなかった。志水は元気だった。試合は七点差で負けた。外野の言うことは、その日の事実の上では、正しかった。要にも、それを覆す言葉は、無い。ただ、時間だけがいつか、答えを出す。



事務室で、浜口も、同じことを聞いた。


「宮里さんの、あの判断ですが」


浜口は帳簿を置いた。


「……正直、費用対効果が、見えません」


要は顔を上げた。


「彼女の給料は、毎月、出ていきます。その彼女が、いちばん客の入る試合で、いちばんいい選手を、下げた。試合は、負けた。……経理としては、何が良くなったのか、数字で、書けないんです」


「浜口さん」


「はい」


「宮里さんに、同じことを、聞いてみてください」


浜口は少し驚いた顔をした。



その日の夕方、浜口は、宮里に聞いた。


「あなたが来て、何が、良くなったんですか」


宮里は、少し考えてから、答えた。


「何も、良くなってません」


「……え」


「志水は、折れませんでした。それだけです。折れなかったことは、何も、起きてない。……だから、数字には、書けません」


宮里は静かに言った。


「浜口さんが、書けないのは、当然です。私の仕事は、書くものが、何も残らない仕事なので」


「……いつ、分かるんですか」


浜口は聞いた。


「私が正しかったかどうか、ですか」


宮里は言った。


「たぶん、何ヶ月も先です。それまでは、ただの、無駄な人件費に見えます。……我慢して、待ってもらうしか、ないんです」


浜口は、その言葉をしばらく噛んでいた。


数字で人を測ってきた男が、初めて数字にならないものの前に立っていた。書けない。証明できない。ただ、待つしかない。それは、要が去年から、ずっと立っている場所だった。浜口は、その場所に初めて、片足を踏み入れていた。

――最後まで読んでくださって、ありがとうございます。

続きが気になったら、ブックマークしていただけると嬉しいです。

ページ下の★評価も、続きを書く力になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。